第3話『傭兵の屋敷なんてこんなものだ』 (脳内:逃げ出されたら潔く腹を切って自害しよう)
アリシアを屋敷に案内することにした。
これでも、俺はそれなりに強い傭兵だ。
金だって、そこら辺の貴族に負けじと持っている方である。
(だから安心してねマイエンジェル!! 質素で汚い傭兵の溜まり場とかじゃないからね!? むしろ君のために全力を尽くした最高のお城を用意してあるからねぇぇぇ!!)
「──ここがお前の屋敷だ。せいぜい、くつろぐがいい」
(なんだこの言葉選びィィ!!まるでここで監禁させるみたいに受け取られるだろォォォォ!!)
アリシアは、とても不服そうだった。
目のハイライトも失われて、絶望しているのがひしひしと伝わってくる。
魔獣の住む、魔王の拠点だとでも解釈しているのかもしれない。
大丈夫だよ、此処には魔獣も出なければ魔王だっていないからね。
それもこれも、きっと俺が怖すぎるのがいけないんだ。
ごめんよ、天使ちゃん。
何不自由ない生活をさせる自信だけはあるんだ。
「──これが……屋敷……ですか?」
(うそ、うそ……! 王都の貴族街にあるような、まるで絵本に出てくるお城みたい……っ! 私、こんなに豪華なところに住んじゃうの……? あ、もしかして、私を『お姫様』扱いするために……きゃあ、そんなの恥ずかしいけど嬉しいっ……!)
──違う、これは……哀れられている!?
貴族どもの屋敷なんてそういえば、よく知らないでいた。
あまりの規模の小ささで落胆されてしまったんだ。
俺が恥をかくならばそれで良い。
しかし、アリシアに恥をかかせるのは、深刻な問題である。
フォローするしかない。
ここは、俺の強さでアピールするべきだ。
「──傭兵の屋敷なんてこんなものだ。派手すぎても仕事に支障が出るからな」
(安心してね、お姫様ァァァァ!!そこら辺の貴族の屋敷より安全が保証されてますぅぅ!!天使ちゃんには……誰にも触れさせませぇ〜ん!!)
貴族の屋敷じゃ、命の保障なんてしてくれないだろ。
俺さえいれば、24時間の監視付きでアリシアのそばにいれるから、何が来ようと安心だ。
生活に必要な部屋や施設を一通り把握してもらう。
一つ一つ、丁寧に聖女は見て回っているが、気に入ってくれているのだろうか。
大浴場を確認した時は、固まって身動き一つしていなかった。
キッチンや大広間に至っては、怒りのあまり手で口を塞いでいる。
アリシア専属の女性メイドを紹介したけれど、警戒心を剥き出しに、物陰に隠れてしまったのである。
(ごめェェェェん!!やっぱりこんな屋敷気にくわないよねぇ!?メイド無愛想だし、キッチンなんて狭かったかなぁー!?でも、物陰に隠れるお姫様も素敵だぜ、マイプリンセス!!)
めちゃくちゃ睨まれてるんだが……。
どうすんのよこれ。
俺に出来る精一杯がこれなのだ。
見栄を張りたいのは、やまやまだが、この程度が現実なのである。
「──これからここで生活をしてもらう。精々、従者と仲良くするがいい」
「──ひぃっ!?はい……分かりました……っ」
(やめろォォォォ!!奴隷を飼った魔王どもの遊びみたいな言い方じゃないかぁ!!違うからねぇ!?アリシアの生活を守るためだからァァァァ!!)
たびたび、怖がらせてしまったようだ。
言葉と気持ちがなぜ噛み合わないものか……。
もし『もう耐えられない』と逃げ出されたらどうしよう。
……その時は潔く責任を取って腹を切り自害しよう。
「──これから……よろしくお願いします……っ」
(うそよ、うそなんだわ!高級レストランに出てくるような厨房なんて誰が使うの!?どこまでも続く広い温泉はなに!?専属のメイドなんて……どう扱ったらいいのよ!?こんなに幸せな空間なんて……まるでお姫様になったみたいじゃない……っ!?キュンキュンが止まらないよぉ……!!)
気分が落ち着いたのか、あまりの不甲斐なさに落胆しているようにも見える。
こんなはずじゃなかったんだ。
目をキラキラしながら、喜んでくれると思ってたんだよ。
ならば、次は何でアリシアの気を引こうものか。
衣食住で大切なことを探していくうち、重要視しなければならない物。
(食事に決まってんだろォォォォ!!あらゆる手を使ってボクのマイエンジェルを笑顔にしてみせるからねぇ!!嫌いなものはあるのかな!?全て納得のいく料理を提供するからねぇ!!)
「──このあとは、食事にする。無理矢理にでも食べてもらうから覚悟しておけよ」
(無理矢理ってなんだよォォォォ!!脅迫めいてるじゃないか!?違うからね!?美味しいものをいっぱい食べて欲しいだけなんだァァァァ!!)
「──ひぃっ!?──」
(うそっ……うそだわ!この一流シェフの愛用のようなキッチンで調理するって言うの!?傭兵さんは……私にどれだけ甘やかすつもりなのよ!?こんなに愛されていいのかしら……またキュンキュンしちゃうよぉ……!!)
ちっとも機嫌が良くなりませんでした。
自業自得なのは、分かっているつもりだ。
それでも、俺は絶対にアリシアを喜ばせたい。
作戦を練りに練り上げ、難攻不落の聖女様に『美味しい』
の一言を言わせてやる!
ていうか……お願いします!!
美味しいと言ってくれェェェェ!!
お読みいただきありがとうございました!
本気のプレゼントが裏目に出て絶望する傭兵と、溺愛にパニックを起こす聖女……二人の勘違いはまだまだ加速していきます!
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