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婚約破棄された聖女様に次の婚約者として選ばれたのは世界最強の傭兵でした〜怖がられてると思ったが俺の溺愛がダダ漏れだった〜  作者: 久方久米


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第2話『名も無き傭兵だ。聞かなくていい』(脳内:『傭兵様』いただきましたァァ!デステニー!!)


 ──俺に婚約者が出来た。


 今頃、どこぞのバカ王子は、聖女を捨てたことで泡食ってるに違いない。ざまぁみろだ。


 (……って言ってみたものの!! え、マジで俺の婚約者になっちゃったの!? 夢じゃないよね!? 馬車の隣に座ってる聖女様が天使すぎて直視できないんですけどぉぉぉ!!)


 聖女とは、まだろくに会話が出来ていない。


 俺の拠点まで、どう話しを続ければいいんだ。


 そもそも、話しかけられたくないのかな。


 半ば、強引に連れ出しただけだし、聖女としてもこの結末は不本意だったのかもしれない。


 ──仕方ない。


 怖がられてはいるが、緊張もほぐしてあげたいし、気を使われるなんてあっちゃいけない。


 (アカァン!!この沈黙にも耐えられん!!何か言うことは……そうだ、泣き疲れてたんだった!!)


 「いつまでもそんなツラするな。おしぼりでも使っておけ」


 「──ひぃ!?──」


 (どうしてそんな言葉しか出てこないだ俺はァァァァ!?更に怖がらせちゃったじゃないか!!ごめんね、マイエンジェル丁重に扱うからね!?)


 差し出された温かいおしぼりを、聖女様は小さく震える手で受け取った。


 「あ……ありがとうございます……っ」


 (うそ……私のために、温かいおしぼりを用意してくださっていたの……? 乱暴なお言葉なのに、目元や手元を気遣ってくださるなんて……! やっぱりこのお方、不器用なだけで本当にお優しいんだわ……キュンキュンしちゃう……!!)


 目元をそっとおしぼりで拭いながら、聖女様は上目遣いに俺を見つめ、耳まで真っ赤に染めていた。


 ──これは、マズい!?


 ──怒っている!?


 やっぱり、火に油を注いでしまったらしい。


 聖女からしたら、これから奴隷のような生活が待っていると思っているんだろ。


 警戒心が尋常ではない。


 (は!?奴隷!? とんでもねえ!! これからの人生はお姫様以上の扱いをしてやるよ!!)


 「──おい、腹減ってるだろ。食え」


 (キョドって声が怖くなっちゃった!!威圧してないからね!?ボクは君の婚約者、酷いことしないよ!?)


 携帯食のお菓子と温かい紅茶を差し出した。


 傭兵にとって必需品だ。


 お気に召すだろうか……また睨まれしたら俺のガラスのハートが砕け散りそうだ。


 「──うぐっ……。ありがとうございます」


 (せっかく泣き止んだのに私のバカぁ!傭兵さんの優しさでまた涙がでちゃう!ここまで温かいと私の心も溶けちゃうー!)


 「早く食べてしまえよ。じきに俺の屋敷に着く」


 (なんでまた泣くのォォォォ!?何も悪いことしてないよ!?でも泣き顔の聖女様も可愛い!これはこれでありなのか?いや、あかーん!?)


 少しぐずりながら、今度はアリシアが話しかけてきた。


 喋る余裕が出来たことは、何よりも嬉しい。


 多少の心のゆとりが出来たのだろう。


 「あなたのお名前は……?」


 (しまったァァァァ!!俺を選べとか言って粋がってたくせに名乗りすらしてなかった!!)


 怯えながら喋るアリシアに申し訳なさと不甲斐なさで胸がいっぱいになってしまった。


 だけど、どうしたらよいか。


 名乗る名が無いのである。


 傭兵として生きてきた人生だ。


 名前なんて気にしていなかった。


 持っているのは、物騒な異名だけ。


 誰だよ、俺を『戦場の死神』なんて呼んだやつはよ。


 「──名も無き傭兵だ。いちいち聞かなくていい」


 (──まあ! ご自分の功績や名を誇ることもなく、ただ一人の傭兵として私を守ってくださるなんて……! なんて謙虚で思慮深いお方なのかしら……っ! じゃあ、私だけの特別な『傭兵様』ってお呼びしてもいいかしら……!?)


 アリシアは、俯いて何も言ってくれなかった。


 これはやらかしてしまったらしい。


 下手をしたら、この一瞬だけで関係が破綻したのかも……。


 隠し事ではあるからな。


 誠実さが無くて呆れていたのかもしれない。


 少しの静寂の中、小さな声がした。


 「……はい、傭兵様」


 (呼んでくれたァァァァァ!!『傭兵様』いただきましたァァァ!! 今日が俺のデステニー!!昇天でございます!!本当にありがとうございました!!)


 アリシアが俺を呼ぶ声に危うく成仏しかけたが、それなりにお互いのことは知れただろう。


 あとは如何に、アリシアに俺のことを受け入れて貰えるかだが……きっと程遠いはずだ。


 そろそろ、俺の屋敷に着く頃だ。


 これから先の生活も、アリシアと共に頑張っていかなくてはならないなと、気合いを入れておこう。


 ガタリと馬車が揺れ、ゆっくりと停車した。


 「……着いたぞ」


 俺は席を立ち、馬車の扉を開けた。


 (うおおお頼むから俺の屋敷、気に食わないとか言わないでね!? 名も無いし無愛想な俺だけど、ここが君のお城だからね!! 絶対に幸せにしてみせるからァァァ!!)


 不器用に手を差し出しながら、俺は心の中で静かに、だが熱く誓っていた。

 

ここまでお読みいただきありがとうございます!

殺気漂うエスコート(※中身は緊張でガチガチなだけ)に、アリシアのキュンキュンも止まりません。


「面白くなってきた」「二人のすれ違いをもっと読みたい!」と思ってくださった方は、

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