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第94話:砂漠の真ん中に開通! 【超巨大砂風呂&薬湯スチームサウナ】

熱暴走の危機を完全に脱し、奇跡のダイヤモンド・レインによる大歓喜から一夜が明けたスチーム・シティ。

 都市の東門の外、かつては死の砂嵐が吹き荒れていた砂丘の一角に、アッシュとガンツの手によって一夜にして組み上げられた前代未聞の保養インフラ――それは、砂漠の地質特性を極限まで活かした【超巨大天然砂風呂&真鍮スチームサウナ】であった!


「な……なんじゃ、この温もりは……!? 砂が、まるで生きているように心地よい熱を帯びているぞ……!」


 集まってきた機械工たちや市民たちが、濛々と湯気を立ち上らせる砂のテラスを見上げて目を丸くした。

 アッシュの設計したインフラは、流体力学と自然が融合した極上の職人技だった。

 地底三万二千メートルから汲み上げた超高熱神聖水を、砂丘の地下に張り巡らせた耐熱チタン配管を通じて循環させ、砂漠特有の多孔質ミネラル砂を【摂氏四十三度】の絶妙な温度で均一に加熱。

 配管にはアッシュの摩擦ゼロコーティングが施され、砂丘全体の熱ムラが一切ない完璧な床暖房構造となっている。

 さらに、ギガ・ボイラーから排出される清純な神聖蒸気を、アッシュ特製のヒノキ香る真鍮ドームへと引き込み、湿度百パーセントの極上スチームサウナを創出したのだ!


「さあ、油と錆でガチガチになった身体を、この温かい砂の中に埋めてみな!」


 アッシュが笑いながらスコップを振るう。

 市民たちやコレットが、おっかなびっくり麻の浴衣を纏って砂の上に横たわり、首までホカホカの温砂に埋められた。

 女湯エリアでは、エレナがコレットの隣に並び、優しく砂をかけてやった。

「コレット、熱くはありませんこと?」

「ううん……全然熱くない……! すごく温かくて、気持ちいいです……!」

 コレットの義肢と生身の皮膚の接合部にも、温かい砂が心地よい重みで密着する。


 ズッシリ……じんわり……。


「…………っっっっっっっっっっっっっっっ!!!!」


 砂に包まれた瞬間、全員の口から魂の抜けたような昇天の溜め息が漏れた。

 適度な砂の重みが全身の血流を強力にポンプのように押し流し、毛穴の奥深くに詰まっていた数十年分の重油タールと鉄粉が、汗とともにドバドバと噴き出してくる!

 機械の義肢との接合部を苛んでいた慢性の関節痛が、薬効ミネラルを含んだ砂の熱によって、まるで氷が解けるようにサラサラと消え去っていくのだ。


「あぁぁぁぁぁ……っ!! 痛くない……! 関節の痛みが……消えていく……!!」

「肩が、腰が……羽が生えたみたいに軽いぞ……!」

「サウナも最高だぁぁっ! 息が苦しくない! 肺の奥の煤が全部洗い流されていくぞぉぉっ!!」


 真鍮ドームのスチームサウナでは、ヒノキの香りをたっぷり含んだ濃厚な神聖水蒸気が充満していた。

 重油のスモッグで喉や肺を痛めていた機械工たちが、深呼吸をするたびに「生き返る……!」と涙を流している。

 そして――サウナで限界まで温まった身体を冷やすため、彼らはドームの外に設置された特大の水風呂へと飛び込んだ!

 海竜サファイアが神聖水魔力で冷却した、水温【摂氏九度】の極上シングル水風呂!


 ザブゥゥゥゥゥンッ!


「ひゃあああああっっっ!? つ、冷たぁぁぁぁいッッ!!」

「だが、痛くない……! 水が柔らかい! 羽衣を纏ったみたいに、肌に吸い付いてくるぅぅっ!!」


 火照った肌がキュッと引き締まり、末梢血管がギュッと収縮。

 そして三十秒後、水風呂から上がって砂丘の上の木製デッキチェアに体を預けた瞬間――。


 スウウウウウウウ……ッ。


「「「と、整ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」」」


 青空の下、砂漠を吹き抜ける爽やかな風に吹かれながら、市民たち全員が白目を剥いて完全な脱力状態に突入していた。

 脳内を駆け巡るエンドルフィン。心臓の鼓動がドクン、ドクンと心地よく響き、世界と自分が完全に一体化するような至高のトランス状態。

 砂風呂の砂山からは、天狼コハクとケルベロス・クロが顔だけ出して「ふひゅ〜ん♪」「わふぅ〜♪」と極楽顔を晒していた。

 クロの三つの頭は仲良く砂から並んで顔を出し、それぞれの頭の上に小さな手ぬぐいを乗せてもらって目を細めている。

 そしてシロガネは、砂の上で九本の尻尾を器用にパタパタと振って自らの身体に砂をかけ、全身の精密ギアを気持ちよさそうにアイドリングさせていた。

「きゅるるる〜ん♪」

 不死鳥ルビーと紫電鹿ライカも日向ぼっこをしながら蹄を休め、過酷だった砂漠世界に、前代未聞の平和で極楽な休日の時間が流れていた。

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