第76話:五大神獣の総力結集と、アッシュの究極濾過〜星の全ヘドロ大浄化〜
「オオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!」
冥府の空間そのものを飲み込まんばかりの、地獄の怨嗟と腐敗の咆哮が全三界へと轟き渡った。
奈落タルタロスの古代大封印を突き破り、深淵から這い上がってきた【混沌の汚濁神カオス・スラッジ】。
全長数キロメートルに及ぶ、黒紫色の不定形ヘドロの超巨大津波。
その巨躯の表面には、数億年もの間、全宇宙の知的生命体や神々が無意識に捨て続けてきた怨念、欲望、腐敗、そして絶望の顔が無数に泡立っては消え、触れるものすべての物理法則をドロドロに溶かしながら、世界樹の太根へと猛烈な勢いで迫り来る!
だが――その全宇宙を呑み込まんとする破滅の津波の前に、堂々と立ちはだかった存在がいた。
天上界、地上、そして冥界の理を守護する、宇宙最強の【五大守護神獣】であった!
「グルアアアアアアッッッ!!」
先陣を切ったのは、白銀の天狼コハクであった!
瞬時に体長二十メートルを超える神話級の巨獣へと完全解放したコハクは、虚空を前足で踏みしめると、惑星規模の【超重力場・アンチグラビティ・ウォール】を展開!
ズズズズズズズズズッ!!
迫り来る数億トンの泥の津波が持つ凄まじい運動エネルギーを力づくで相殺し、その前進を大地へガッチリと縫い止める!
「ピィィィィィィィィッッッ!!」
続いて天空から超音速で急降下したのは、緋色の不死鳥ルビー!
天界の太陽フレアに匹敵する超高熱神聖火炎の熱波を翼から一気に放射し、カオス・スラッジの表面をジュワァァァッ!とガラス質に焼き固め、泥の飛散と拡散を完璧に阻止する!
「キュオオオオオオオオオッッッ!!」
碧海の海竜サファイアが、ステュクス川の神聖純水を巻き上げて巨大な水龍へと昇華!
マイナス百五十度の絶対零度の水流壁を展開し、怪物の周囲に幾重もの神聖氷結包囲網を瞬時に構築した!
「ブルルルルッ!!」
紫電の神鹿ライカが、優美にして巨大な紫水晶の枝角を天へと掲げ、数十億ボルトの生体プラズマ超高圧雷撃を放射!
バチチチチチチチッ!!
神聖雷撃が怪物の体内を駆け巡り、ヘドロの奥底で結びついていた怨念の高分子鎖を、電光石火の勢いで引き裂いていく!
そして――止めを刺すべく、冥界の守護神が咆哮を上げた!
「「「ガアアアアアアアアアッッッ!!!!」」」
地獄の番犬ケルベロス――黒き三頭の巨獣へと威容を戻したクロが、三つの巨大な顎をガバッと限界まで開いた!
アッシュの神聖水で満たされた喉奥から、黒紫の闇を焼き払う【三重神聖浄化ブレス】を、怪物の胸元へと零距離で撃ち込んだのだ!
ドズドズドズドズッッッ!!
ドッガアアアアアアンッッッ!!
分厚い黒泥の装甲が吹き飛び、怪物の体内最深部――ドス黒く脈打つ心臓核【宇宙原初ゴミの核】が、白日の下に露わになった!
「今だ、アッシュ殿ぉぉぉぉぉぉっ!!」
ガンツの絶叫が響く。
アッシュは五大神獣が切り開いた光の道を、オリハルコン製安全ブーツで疾走していた。
コハクの背を駆け上がり、ライカの角を飛び越え、クロの頭上を蹴って、怪物の胸の奥深く――ドス黒く煮えたぎるコアへと単身ダイブする!
「何億年、何十億年……人間も神々も、見たくないものに蓋をして、この底なしの闇にゴミを捨て続けてきたんだ」
超高濃度の悪意と毒素の嵐の中、アッシュは両手を胸のコアへと力強く押し当てた。
その瞳に宿るのは、破壊の怒りではない。
すべてを洗い清め、循環を取り戻す配管工としての、深く静かな慈愛であった。
「全部、俺が引き受けてやる。……もう誰も、汚水に怯える必要はない!」
アッシュの魂の奥底で、固有スキルが究極の最終進化を遂げた。
「――《真理の濾過・三界次元超昇華》!!!!」
キィィィィィィィィィィィィィィンッッッ!!!!
全宇宙の隅々まで染み渡るような、どこまでも澄み切ったクリスタルの超高周波が鳴り響いた。
アッシュの掌から放たれたのは、青でも白でもない、森羅万象のすべての光を内包した【奇跡の透明な光】。
その光の波紋が触れた瞬間――。
数キロメートルに及ぶカオス・スラッジの巨体が、頭の先から、足の先まで、サラサラとした純白の星屑の粒子へとほどけていったのだ。
毒素は消滅し、怨念は優しく浄化され、数億年分のゴミは――新しい銀河や星々を生み出すための、至高のエネルギー結晶【創世のマナ・クリスタル】へと完全に昇華された。
冥府の暗黒の空に、無数の星屑がキラキラと降り注ぐ。
宇宙開闢以来のすべてのヘドロが、たった一人の配管工の手によって、完全に洗い清められた奇跡の瞬間であった。




