第75話:全宇宙規模【三界同期・超次元流体グリッド】発動!
「通信魔導鏡、全回線オープン! 天上界・オリンポス、地上アクア・ヘヴン、同時に接続完了よ!」
エレナが魔導キーボードを叩き込むと、虚空に二つの巨大な通信ホログラムスクリーンが展開された。
右の画面に映し出されたのは、天上界から通信を繋ぐ、美の女神アフロディアと軍神バルドル!
左の画面には、地上帝都から駆けつけたアレクサンダー皇帝と、五万人のガルド工兵部隊!
『アッシュ殿! 天界の全魔導ブースターポンプ、ならびに神聖ゼオライト予備水槽、いつでも全開噴射可能ですぞ!』
バルドルが包帯の巻かれた拳を突き上げて叫ぶ。
『地上帝国全土のパイプライン網、持ち場にスタンバイ完了! 我が帝国の全水力エネルギー、アッシュ殿へ捧げます!』
アレクサンダー皇帝が力強く号令を下す。
天界、地上、そして冥界。
かつて反目し合い、分断されていた全宇宙の三大勢力が、今、たった一人の配管工の号令の下に、一つの命脈として結集したのだ!
「よし、全員よく聞け!」
アッシュが中央コンソールのマイクを握り、宇宙全域へと指示を飛ばした。
「相手は数キロメートルに及ぶ超巨大ヘドロ生命体だ。一箇所の濾過器で受け止めれば、確実にパンクして全員が呑み込まれる。……だから、全宇宙を【一本の巨大な循環水利回路】にする!」
「「「全宇宙を一本の回路に……!?」」」
「そうだ!
第一フェーズ:天上界から、一万メートルの超高揚程落差エネルギーを利用して、毎秒十万トンの【神聖純水ウォーターキャノン】を冥界へ向けて垂直逆噴射!
第二フェーズ:地上の世界樹ユグドラシル・アクアを【多段式中継濾過フィルター】としてフル稼働させ、怪物の魔力を吸い尽くして無力化!
第三フェーズ:冥界のステュクス川に怪物を誘き寄せ、五大神獣の結界で囲い込み、俺の《真理の濾過》で心臓核を一撃で撃ち抜く!!」
あまりにも壮大で、あまりにも緻密な、全宇宙規模の流体力学メガ・オペレーション!
「ガンツ、超伝導メインバルブのロックを解除しろ!」
「おうよ旦那! 全宇宙の元栓、全開だぁぁぁぁぁぁっ!!」
カチリ、ズズズズズズズズズッ!!
世界樹を貫く数十万キロのオリハルコン製天空パイプラインが、宇宙の果てまで届く青白いサファイアの燐光を爆発させた。
天界から地上へ、地上から冥界へ――。
何百万トンもの光り輝く神聖流体が、脈打つ星の血潮となって、破滅の怪物カオス・スラッジめがけて解き放たれたのであった!




