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第69話:ウォータージェット泥流返し!〜裁判官神、汚水プールにドボンで完全失脚〜

「ガンツ、さっき浚渫した第二セクターの地下排水系統図をプロジェクションしろ」

「へいよ旦那! 悪徳官僚神の裏帳簿ならぬ、裏排水口の暴露ショーの開幕だぜぇっ!」


 ガンツが魔導映写機のスイッチを叩くと、ラダマンテュス裁判所の地下配管構造が、虚空に鮮明な三次元ホログラムとして浮かび上がった。

 配管の継ぎ目、バルブの位置、そして隠しルートに至るまで、寸分の狂いもなく描き出されている。


「な、なっ……!? な、なぜ貴様が我が裁判所の地下機密配管図を……!?」


 ラダマンテュスが狼狽して後退る。

 アッシュはレンチの先端で、図面の一角――裁判所の地下深くからステュクス川へと極太の管で伸びる、一本の隠されたバイパス配管をコツンと叩いた。


「プロの配管工を舐めるなよ。川底のヘドロを分析すれば、どこの施設からどんな成分が流れ込んできたかなんて一発で逆算できるんだよ」


 アッシュは淡々と、だが決定的な事実を突きつけた。


「ラダマンテュス裁判所が裏で密かに運営している、魂の闇換金工房……。死者の遺品から貴金属を溶かし出し、魂の残留思念を違法にエーテル燃料へ精製している裏工場だな。そこで出た超高濃度の硫酸、廃重油、そして魂の燃えカス重金属スラッジを、お前らは正規の浄化設備を通さず、この隠しバイパスからステュクス川へ何万トンも不法投棄してただろ。ステュクス川が急激にタール化して固まった最大の原因は……天界の余波だけじゃない。お前らの違法投棄ヘドロが核になって、急速に高分子重合を起こしたからだ」


 静寂の後――。

 川岸を埋め尽くしていた数百万の死者たちと死神たちから、怒りの大爆発が巻き起こった。


『何だとぉぉぉっ!? 川が詰まった本当の元凶は、あの裁判官神の不法投棄だったのか!?』

『ふざけるな! 俺たちの遺品を横領して裏金を作り、そのゴミを川に垂れ流してただと!?』

『罪人を裁く神が、一番の犯罪者じゃねえか! 泥棒神! ペテン野郎!!』


 死者たちの怒号と罵声が雷鳴のように響き渡る。

 完全に悪事を白日の下に晒されたラダマンテュスは、顔を真っ赤にして逆上した。


「デ、デタラメだぁぁっ! そんな妄言、信じるに値せん! 衛兵、その不敬者を今すぐ八つ裂きにしろぉぉっ!!」


 ラダマンテュスが黄金の天秤を振り上げて狂乱する。

 だが――アッシュはすでに、浚渫ポンプのメインバイパス切替レバーに手をかけていた。


「デタラメかどうか、お前の身体で直接確かめてみな」


 カチリ。

 アッシュが、浚渫ポンプの流路切替バルブを――【逆洗モード(バックウォッシュ・フルパワー)】へと一気に切り替えた!


「お前らが川底に不法投棄したヘドロだ。……元あったお前の神殿へ、全部きれいに『返品』してやるよ!」


 ゴオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!

 ドズドズドズドズドズッッッ!!!!


「な、なんじゃぁぁぁぁぁっ!?」


 川底から一時タンクへと吸い上げられていた数千トンに及ぶ濃厚ヘドロが、吐出圧百メガパスカルの超高圧ウォータージェットによって、ラダマンテュス裁判所の隠しバイパス管へ向けて猛烈な逆圧で逆流噴射されたのだ!

 配管内を逆走するヘドロ津波は、裁判所の配管系統を瞬時に逆流し――。

 そして次の瞬間。

 ラダマンテュスの黄金馬車の真下に位置していた、裁判所の巨大な汚水マンホールが、限界を超えた内圧に耐えきれず、大爆発を起こして天井まで吹き飛んだ!


 ドッガアアアアアアアアアアンッッッ!!!!


「ギョエバァァァァァァァァッッッ!?!?!?」


 吹き上がったのは、何十万トンもの漆黒の腐敗ヘドロと汚水の間欠泉!

 黄金の馬車は一瞬にして木っ端微塵に粉砕され、ラダマンテュス本人は空高く放り出されると――。

 裁判所の前庭に設置されていた、最も汚くドロドロに煮えたぎる【不法投棄汚水沈殿ピット(特大肥溜めプール)】のど真ん中へと、頭から真っ逆さまにダイブした!


 ボッチャアアアアアアアアアンッッッ!!!!


「ゴボババババッ……!? オエェェッ! ゲホッ、ゲホッ! く、臭い! 息が……! 我が荘厳なる黄金の法服が、うんこ泥まみれにぃぃぃぃぃっ!?」


 肥溜めプールから這い上がってきたラダマンテュスは、全身から猛烈な湯気と悪臭を放つ泥ダルマと化していた。

 自慢の金髪はドブ泥でカチカチに固まり、黄金の天秤の皿には、腐った魂の燃えカスヘドロが無残にてんこ盛りになっている。


『いい気味だ!』『肥溜め神万歳!』『二度と偉そうな口を利くな、汚職官僚め!』


 死者たちやタナトスから、容赦ない嘲笑と生ゴミが雨あられと投げつけられる。

 傲慢なプライドを粉々に叩き折られ、全身を耐え難い悪臭に蝕まれたラダマンテュスは、その場にペタリとへたり込み、泡を吹いて失禁土下座した。


「も、申し訳ございませぬぅぅぅっ……! アッシュ様、どうか、どうかこの泥を洗い流してくださいましぃぃぃっ……!!」


 傲慢なる冥府の最高裁判官神の完全失脚。

 下界の配管工の正義の鉄槌が、冥界の法廷をも完全に粉砕し、痛快無比なカタルシスが三途の川に満ち溢れた瞬間であった。

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