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第66話:五大神獣の誕生!?〜神聖胃洗浄と、三頭ポメラニアンのモフモフ化〜

「苦しいだろうが、ちょっとだけ我慢しろよ相棒! ……腹の中に溜まった毒ゴミ、一気に全部洗い流してやるからな!!」


 アッシュは身軽にケルベロスの前足の凍結した毛並みを駆け上がり、身動きの取れない中央の頭の巨大な下顎へと飛び移った。

 開かれた口の奥からは、鼻を突く猛烈なタールと硫黄の腐敗臭が漂ってくる。

 食道と第一胃の入り口は、黒く炭化した硬化ヘドロによって完全に塞がれ、今にも内臓組織が壊死して焼け爛れそうになっていた。


「ガンツ、神聖水ブースターポンプ、全開圧送開始!」

「おうよ旦那! 吐出圧百メガパスカル、毎秒五トンで送り込むぜぇぇっ!!」


 ガンツが潜水艇の外付け高圧ポンプのメインレバーを一気に押し倒した。

 世界樹直通の超高濃度神聖純水が、オリハルコン製ホースの内部を唸りを上げて駆け抜けていく。

 アッシュはノズルの先端に、逆止弁付きの特殊三叉カテーテルを装着すると、ケルベロスの喉奥深く――硬化したヘドロ塊の芯へと正確に突き刺した。

 そして、両手を巨大な喉元へピタリと密着させ、全身の魔力回路を極限まで励起させた。


「――《真理の濾過・高圧神聖洗浄(ガストリック・フラッシュ)》!!!!」


 キィィィィィィィィィンッッッ!!!!


 澄み渡るクリスタルの共鳴音が、冥府の暗黒の空間をどこまでも突き抜けて響き渡った。

 アッシュの掌から放たれた幾何学模様のサファイアブルーの魔法陣が、高圧で噴射された神聖水のエーテルと完全に同期。

 分子結合を瞬時に切断する微細振動を帯びた神聖水が、ケルベロスの巨大な胃袋の中へと津波のように雪崩れ込んでいった!


 ジュワァァァァァァァァァッッッ!!


 猛烈な蒸気音とともに、胃壁にこびりついていた数千トンの猛毒タールが、分子レベルで急速に解体・中和されていく。

 魂の執着と結びついていた重金属イオンは結合手を奪われて無害なサラサラの白い珪砂へと変わり、滞留していた硫化水素ガスは清涼な酸素と水蒸気へと置換される。

 そして――。


「ゲボオオオオオオオオオッッッ!!」


 ケルベロスの三つの口から、信じられないほどの量の真っ白な水蒸気と、無害化された透明な水が一気に噴き上がった!

 何万年もの間、その胃袋を焼き焦がし、神経を狂わせていた数千トンの悪夢が、完全に取り除かれた瞬間であった。


「ハァッ……ハァッ……ハァッ……」


 拘束を解かれたケルベロスが、ドスンと河原に横たわった。

 だが、その三つの頭の瞳からは、狂乱と苦痛の赤黒い光は完全に消え去っていた。

 深く澄んだ、どこか穏やかな琥珀色の輝きが宿っている。

 中央の頭、右の頭、左の頭が揃ってアッシュを見上げ、命を救われた感謝を込めて「くふぅ〜ん……」と情けない甘えた声で喉を鳴らした。

 そして。


 ポフンッ! ポフンッ! ポフンッ!


 心地よい三連発の空気音とともに、真っ白で清らかな湯気が立ち上った。

 二十メートルの山のような巨体が、みるみるうちに縮小していき――煙が晴れた後に現れたのは。


「……きゃああああっ!? な、何これぇぇぇぇっ!?」


 エレナが思わず黄色い悲鳴を上げて両手で頬を押さえ、その場にしゃがみ込んだ。

 そこにちょこんと座っていたのは――体長わずか三十センチ。

 漆黒のフワフワ・モコモコの毛並みに包まれた、**【頭が三つある愛くるしすぎる黒ポメラニアン】**であった!


「わふっ♪」「きゃるるん♪」「くぅ〜ん♪」


 右の頭は元気いっぱいに舌を出し、左の頭はおっとりと首をかしげ、中央の頭はキラキラとした瞳でアッシュを見つめている。

 短い尻尾は、まるで小型プロペラのように猛烈な勢いで回転し、お尻ごとフリフリと揺れていた。

 そして、命の恩人であるアッシュを見つけるや否や、短い手足をパタパタと弾ませて駆け寄り、アッシュの膝の上へと飛び乗ってきたのだ!


 右の頭がアッシュの右頬をペロペロ。

 左の頭がアッシュの左頬をペロペロ。

 中央の頭がアッシュの鼻の頭を甘噛みして「ふひゃ〜♪」と喉をゴロゴロ鳴らす。


「はははっ! おい、くすぐったいって! やめろって!」


 アッシュが笑いながら三つの小さな頭をまとめてワシャワシャと撫でてやると、子犬は全身を震わせて喜びを爆発させた。


「わふんっ!?」


 そこへ、我に返ったコハクが「僕のアッシュの膝だぞ!」とばかりに猛ダッシュで割り込んできた。

 コハクが前足でポメラニアンをポスッと押さえると、ポメラニアンの三つの頭が「わふ!」「きゃる!」「ふん!」とコハクの大きな肉球にじゃれつき、コハクのフカフカの白い毛並みに顔を埋めてスリスリと甘え始めた。

 あまりの愛らしさにコハクも毒気を抜かれ、「……わふぅ」と観念して背中を貸してやる。

 その背中に、ルビーがパタパタと降り立ち、サファイアが水玉を作って頭上に浮かべ、ライカが鼻先を寄せてクンクンと匂いを嗅いだ。


 白銀の天狼コハク。

 緋色の不死鳥ルビー。

 碧海の海竜サファイア。

 紫電の神鹿ライカ。

 そして――冥府の守護犬ケルベロス。


「黒くてモフモフで、頭が三つあって可愛さも三倍だから……お前の名前は『クロ』だ」

「「「わふんっっっ♪」」」


 三つの頭が同時に嬉しそうに吠えた。

 四大神獣に新たな仲間が加わり、宇宙史上最強にして最愛の【五大神獣モフモフ戦隊】が、ここに奇跡の結成を果たした瞬間であった。

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