第41話:限界突破の《真理の濾過・神性昇華》〜アッシュの突入〜
「アッシュさん、行かないでくださいまし! あんな怪物の体内に飛び込むなんて、生きて戻れる保証がありませんわ!」
迎賓館から駆け寄ってきたエレナが、涙声でアッシュの作業着の袖を掴んだ。
ガンツやグスタフ元帥、そして各国の首脳たちも、息を呑んでアッシュを取り囲む。
怪物の体内は、数万気圧の魔毒汚泥が煮えたぎる死の深淵。どんな強固な魔導結界であっても、数秒と持たずに融解するであろう。
しかし――アッシュは優しくエレナの手を解くと、穏やかに微笑んだ。
「大丈夫だよ、エレナ。……あいつは、殺すべき敵じゃない」
「え……?」
「あいつは、人類が何万年もの間、便利さの裏で大地に垂れ流し続けてきたゴミと、それを受け止めきれなくなった星の悲鳴だ。……誰かが汚したなら、掃除屋が綺麗に洗い流してやるのが筋ってもんだろう?」
アッシュの言葉に、周囲の王侯貴族たちは言葉を失った。
自分たちが繁栄の陰で目を背け続けてきた『汚れ』を、この青年はただ一人で、職人の誇りだけで引き受けようとしているのだ。
「サファイア! 水流のトンネルを作れ! 中心核まで一気に突っ込むぞ!」
「キュルルルルッ!!」
サファイアが咆哮し、水球の中に一本の透き通る水流の回廊を穿った。
アッシュはオリハルコン製の大栓を握りしめ、その水流のトンネルへと身を投げ出した!
ドッシャアアアアアンッ!!
怪物の体内に突入した瞬間、視界はドロドロとした暗黒に包まれた。
四方八方から押し寄せる、何万年分の怨嗟と強酸の汚泥。
耐熱耐酸の作業着がジリジリと悲鳴を上げる。
だが――アッシュの魂の炎は、決して消えなかった。
暗黒の渦の最深部。そこに鎮座していたのは、紫黒色の光を脈打たせる、巨大な心臓――【澱みの神核】であった。
「……長い間、苦しかったな。もう休んでいいぞ」
アッシュは核の表面へと辿り着き、両の掌を、そのドロドロと煮えたぎる心臓へと力強く押し当てた。
そして――魂の底から、限界を超えた魔力を解放した。
「――《真理の濾過・神性昇華》!!!!」
カアァァァァァァァァァッッッ!!!!
アッシュの掌から放たれたのは、青でも白でもない――世界を優しく包み込む、透明な純粋光であった。
アッシュの能力は、ついに究極の領域へと覚醒した。
物質から毒を分離するだけではない。
人類が大地に刻み込んだ『怨嗟』と『穢れ』の概念そのものを、原子レベルで整流し、世界を育む最も根源的な『純粋マナ』へと強制昇華させる奇跡の権能!
キィィィィィィィィィンッッッ……!!
澄み渡るハープの調べのような高周波が、怪物の体内から鳴り響き、やがて大陸全土へと広がっていった。




