第26話:神鋼オリハルコン軍団の出陣〜ドワーフと獣人が無双する補給戦〜
ズドドドドドドドッ!!
死の荒野の赤茶色の砂塵を巻き上げ、ガルド軍事帝国の砂漠機甲重装強襲連隊五千騎が、猛烈なスピードで突進していた。
先頭を走るのは、黒鉄のキャタピラで大地を削る魔導突撃戦車二十両。
その背後を、砂漠用サンド・バギーに乗った魔導歩兵部隊が完璧な楔形陣形で追従している。
「フハハ! 見えたぞ、あれが【地下パイプライン第三中継ステーション】か!」
先頭車両のハッチから身を乗り出したグスタフ元帥が、双眼鏡越しに砂漠の真ん中に聳える石造りの要塞風施設を捉えた。
帝都とオアシスを結ぶ送水パイプの中継ハブ。ここを制圧して元栓を爆破すれば、帝都は即日干上がり、オアシス都市は孤立無援となる。
「全車両、突撃! 中継ステーションを包囲し、配管に魔導爆弾を仕掛けろ!」
グスタフ元帥の号令に、戦車隊が一斉にフルスロットルで加速した。
目標まであと五百メートル。
その時――ステーションの屋上に立つ、作業着姿の青年――アッシュが、腰の工具入れから一本の銀色のバルブレンチを抜き取った。
「……位置、速度、地盤の砂密度……よし、射程内だな」
アッシュは足元のオリハルコン製コンソールへレンチを差し込み、力強く九十度回転させた。
「――《真理の濾過・地脈水圧開放》!!」
カチリ、とバルブが開かれた瞬間。
突撃していたガルド軍の戦車隊の足元で、異変が起きた。
シュバババババッ!! ゴボボボボボッ!!
「な、なんだ!? 地面が……地面が揺れているぞ!?」
砂漠の砂の粒子の隙間に、地下パイプラインから高圧の神聖水が一気に浸透したのだ。
水分を含んだ砂は、固い地盤としての支持力を一瞬で喪失し――ドロドロの液体のように激しく波打ち始めた。
土木工学における悪夢の現象――【液状化現象】!
「うわああああっ!? 戦車が沈む! キャタピラが空回りして脱出できない!!」
何十トンもある重装甲魔導戦車が、まるで底なし沼に呑み込まれるように、次々と砂の中へと車体半分を沈没させていく!
突撃の勢いは完全に停止し、後続のサンド・バギーも泥濘に足を取られて玉突き衝突を起こした。
「慌てるな! 全兵員、車両を捨てて徒歩で突撃せよ!」
グスタフ元帥が叫び、兵士たちが銃や槍を構えて砂の上へと飛び降りた。
しかし――待ち構えていたのは、オアシス都市の職人たちによる、精密極まりない『技術の迎撃』であった。
「さあさあ、ガルドの野郎ども! うちの旦那特製の【高圧水流カッター(ウォータージェット)】の切れ味を味わいな!」
ステーションの防壁から姿を現したのは、最高純度の神鋼オリハルコンアーマーを纏ったガンツ率いるドワーフ部隊であった。
彼らが構えていたのは、銃でも大砲でもない。
神聖水を直径一ミリの極細ノズルから、毎秒数千気圧の超超高圧で噴射する工業用高圧放水銃!
ヒュィィィィィィィンッッッ!!
目に見えぬほどの超高速水流が、空気を切り裂いてガルド軍の武器へと奔流した。
シュパッ! カキンッ!
「な、何だ!? 俺の魔導銃が……真っ二つに切断された!?」
「戦車の装甲板が、紙のようにスライスされたぞ!?」
人体には一筋の傷も負わせず、ただ敵の武器と装甲だけを精密に両断していく神業の放水。
五千の精鋭部隊は、わずか数分にして、すべての重火器と車両を完全に解体されてしまったのである!




