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エピローグⅠ


 仄暗い夜。

 月が蒼白い光で世界をやんわりと照らす。

 

 ここは? 


 車窓から差し込む月の光に頬が照らされる。

 座席が温まっていた。

 さっきまで、眠っていたみたいだ。

 旅をしたような疲労感があった。

 なのに、目覚めはよかった。


 まだ夢の続きなのではないかと思えるほどに静かで、不思議な景色が広がっていた。


 月に溺れた大都市が車窓を流れる。

 明かりの一つすら灯っておらず、建物は皆、花のように色とりどりだった。

 

 都市の中心部には、巨大な塔のようなものが暗雲の頭上まで影を落としている。

 都市近辺や、石畳の隙間からは老樹が器用に根を生やしていた。


 汽車は、塔の目の前で停車した。


「わすれもの、しないようにしないと……」


 汽車に置いてあった人形を手に取り、外へ出た。


 雲の上まで続く塔へ入った。


 螺旋階段が記憶の糸のように続いていた。

 旅路を辿りながら登っていると、気が付いたころには頂上だった。


 そこは、何もない広場だった。

 地上と空が見渡せる丸い空間だった。

 月がすぐ目の前まで迫り、地上は、雲から透けて見える。

 

 人形と向き合った。


「ねえ、レイン。私たち。また、一緒に、旅……できるね」


「……」


 ただ、人形は、風に靡くだけだった。


 それは、ぼろぼろの猫で、車掌の帽子をかぶっていた。


 風が心地いい。


 やがて、後ろから足音が聞こえてきた。

 

「待たせたか?」


 レインの人形を抱えたまま、振り向いた。


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