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第097話 新勢力

 先生の用意した大量の干し肉をトレインが集めてきた炊出隊と一緒に調理する。

私は見てるだけー。

無料で配ると言ったら人が集まる集まる。

数え切れないわ。

 素早く逃げ出し、メルスにおまけのスープも貰ってきてもらい、やっと落ち着いて食べられる。

 スープにはなけなしの野菜も入ってた。

 なけなし科という野菜じゃないわよ。


「あら、意外と美味しい……」


 先生はセイビアと話をしている。

 勇者が現れるのは大事件だ。

 ギルドが無かった頃はこんな情報は手に入らなかったから、早速役に立っているという事だ。


「勇者が召喚されたって、いつの話ですか?」

「えっと……三ヶ月くらい前ですね」

「という事は、隠していましたね」

「公国が緘口令を……」


 ギルドの悲しい規則だ。


「今も緘口令が発令されているのでは?」

「えーっと、内緒です」

「ギルド準備室の正式な手続きが終わってギルド長になれば問題ありませんね」

「そういう回避方法も有ります」

「なに、先生がギルド長になるの?」

「最初だけです。必要な情報を得たら次の人を指名します」


 そんなにコロコロギルド長が替わるのってありなのかな?

 セイビアの顔が引きつってるからダメでしょうね。

 まぁ、私には関係ないけど。


「ただ、その緘口令はもうすぐ解除されると思います」


 セイビアの話だと、私達が船出した次の日にいろいろと情報が入ったらしい。

 勇者の件は置いておくにしても、もしかして私達って急がなかったらもっと楽できたんじゃないのかな……?


「あと、明日ぐらいに到着予定の補給物資ですけど、代金の支払いって誰がしてくれるんでしょうか?」


 先生の青筋が一本。

 あれ、消えた。

 すっごい笑顔だ。


「……これで足りますね」

「古代金貨……ですか……」

「た・り・ま・す・ねっ」

「は、はい……」


 先生の一本勝ち。

 むしろお釣りを請求できそうだけど。

 先生の笑顔が素敵過ぎて何も言えないっ。

 先生はさらっと話題を変える。


「それにしても新勢力ですか……」

「あ、はい。その召喚された勇者が中心となって次々と街の綺麗な女性を捕まえてハーレムにしているようです」


 は?


「は?」


 思っている言葉がそのまま口から飛び出した。


「魔王国が目標ではないのですか?」

「明後日の方向に進んでいます。その所為も有って情報にズレが生じていまして、リッカーが向かっている筈ですが、公国内だと今も緘口令が敷かれていると思います」

「Sランクでも教えて貰えないの?」

「事情が重なればSランクですし、協力要請は有るかもしれません。ですが、リッカーほどの人物なら自らSランクを名乗ることは無いと思います」

「聖地の事件で顔は売れたと思いますので、直ぐにバレるんじゃないですかね?」

「あぁ、そーでしたね……」


 リッカーが全てを知るのは今より一ヶ月ぐらい後の事である。

 そして、モノの見事に巻き込まれていく……。

 たぶん。


「おっと、教育しておかないとならない子も増えたので、忙しくなりそうですね」


 先生の目がキラキラしている。

 絶対何か悪い事……じゃない、楽しい事を考えてる顔だわ。

 セイビアもメルスも怯えてるけど、私じゃないし関係ないもーん。


「暫くこの街に留まる事になりますが、勇者の情報も欲しいですし、ギルドの申請をお願いします」

「承知いたしました」

「あと、冒険者登録の権限を下さい」

「えっ、あれって権限が必要なの?」

「必要というか、ギルド長でも持っていません。専用の道具が必要になります」

「権限さえあればいつでも偽造できますから」


 セイビアが泣いている。

 声は出してないけど泣いている。


「偽造前提を言われたら泣きたくもなります……」

「ギルドとは長く付き合いがありませんでしたので、必要が無かったのですよ」

「先生って何でも出来ちゃうね」

「魔王様なら直ぐにSランクに出来ますよ」

「お願いだからやめてくださいね……」

「安心してください、偽造は必要な時にしか致しませんので」


 それが心配なんですよおぉぉぉぉ。

 もうやだ。

 でも先生だからっ。

 悔しいっ。


「何か言いたそうですね?」

「………なんでもありませんこともありません」


 セイビアの僅かながらの抵抗である。


「私はどうしたら良いの?」

「魔王様は……折角ですし、城に帰る前に国内の勉強をしますか」

「えっ、帰れないの?」

「……選択ですね。城に帰って魔王の継承について調べる。もう一つは、国内を巡って現在の経済状況と各地の立て直しをする。どちらにしますか?」


 確かに今のアイシャは何も知らな過ぎる。

 トレインのような優秀な部下は居ても、戦士として有能なのであって経済活動は不得手である。

 それを考えると経済学は必須なのだ。


「魔法の勉強が良いなー」

「魔王様の本気の魔法の威力は城塞都市が一日で壊滅しますけど……」

「え、わたし、そんなに強かったかな……」

「威力だけ言えば、Sランクの冒険者は単独で国を亡ぼせますよ」


 軽く言われてしまった。

 確かにメルスも一人で出来るぐらい強いし、ギデオンなんか幾つも潰してるって言ってたもんなー。


「ただし、侵略目的で行えば他のSランクから狙われる事になりますし、天敵の勇者も現れる事になります」

「ふむ。灰燼の魔王か……」


 メルス、それ、なんかカッコイイかも。


「まあ、同程度の防御魔法も有りますので。相手が聖女ならまず無理でしょう」

「えーっ、そんなに強いの?」

「ハニエルは強さで言えばSランクでは勝てません。ですが、勝つ事も出来ません。最強の矛と盾が戦えば、双方とも倒れるだけです」

「先生ならどっちも出来る?」

「正直、勇者が現れたら私個人で勝てるかどうかわかりません。そのくらい理不尽な存在ですので」

「そーよね、ギデオンってそういう意味では理性は有ったのかも……」


 魔王様の考え方が良い方向に向かっているようで安心しますね。


「世界最強の力って存在しないのですよ……」


 先生が言うと実感がある。

 多くの人が世界最強を目指すような時代であっても、先生は一人で生き残る。

 それは、勝てない事を知っているからだ。


「うーん……」


 どうしようか悩んではいるが、どう見ても城に帰れる雰囲気はない。

 今まで帰らなかった事も有って、先生と一緒に居るのが当たり前になってしまっているのだ。


「お城に行くって言ったら先生はどうするの?」


 先生は目を閉じて静かに答えた。


「残念ですが……」


 そもそも先生にソコまでの権限はない。

 今だって先生は私の教育係なのに、それ以上に現在のこの国の状況は見過ごせないという事だ。それにしても先生は国内だと知らない他人の方が少ないのかな?

 まだ12歳だから分かんないや。


「……先生って私が生まれる前は何をしてたの?」

「えーっと、いつ頃でしょうか?」


 何年前の話になるのよ。


「じゃあ、やってた仕事でもいいよ」

「仕事ですか……?魔王様の仕事の補佐をさせられていましたね」

「宰相だったって事?」

「そうですね、宰相は何回かやらされました。その所為で魔王様にお伺いを立てる時に私のトコロへ手土産を持って来る輩がやたら多くて面倒でした」


 何処から話を聞いていたのか、トレインが笑いながら近寄ってきて、会話に割り込んでくる。


「先生が居なかったらこの国は何度大飢饉に襲われていたか分からないです」

「何度言っても作り易い作物一辺倒になるんですよ……」


 先生がトレインに向けた視線は少し冷えている。

 トレインは背筋に冷たい何かを感じて身震いした。


「い、芋と麦とモロコシを作っていたんですけど、先生が良く分からない作物をどんどん追加しまして……農民が混乱したというか……」

「お父さんに言われたことが有るわ、先生が育てる果物は美味しいとか」

「リンゴを栽培するようになったのは私がヤリマシタ」


 え、しゃがむのですか?

 魔王様がにっこりして私の頭を撫でました……。

 きっと魔王国の特産はリンゴになるでしょう。


「果樹園を造ろうって発想以前に、あんな面倒な事を一人で始めた事には、感心すると言ってたなあ……」

「クルミやクリとか木の実は育ててたというより群生しているところを利用しただけでしたしね。基本は狩猟なんですよ。まあ数千年前の話ですけど」


 魔王様が考え込みました。


「セイビアが運んできた食糧って何日分なの……?」

「あ、えーっと、100人で30日分ですね」

「全然足りないじゃない」

「植物の育成を促進させる魔法が有るのですが」

「それって、あの世界樹様の独自の魔法ってやつですか?」

「そうなんですけど、すっごく難しいんですよ……やり過ぎると枯れてしまうので」

「先生が難しいって、どんだけなのよ」

「普通の人の場合ですと、雑草が育って終わるくらいでMPが枯渇します」

「試す価値は有るのかしら?」

「期待して頂けないのでしたら……」


 先生が控え目に言うなんて珍しいかも。


「枯れ難くて大丈夫な植物でやればいいんじゃない。さっき言ってたクリやクルミならどうなの?」


 先生の目から何か落ちた。

 鱗じゃないよね?


「綿花やヒマワリのように枯れても問題が無いのも有りましたね。食べ物以外での発想でしたが、なるほど、クルミやクリですか。豆関係も一部ならイケますね……ふむふむ。堅果(ナッツ)類も。考えてみると意外と多いです。」


 先生が不思議な言葉を使っている。


「それが可能でしたら世界の食糧事情と言いますか、飢えて死ぬ人が激減しますよ」


 セイビアは理解しているようだけど、トレインとメルスは私側のようだ。

 よかった、仲間だねっ。


「……そんな面倒な事をするのなら私を使えばいい」

「良いのですか?」

「あぁ、アイシャも早く帰りたいだろ?」

「そうだけど、何をするの?」

「私が先生を乗せて、飛んで食糧を買いに行く」


 今度はアイシャの目から何か落ちたようだった。

 なんでセイビアがガッカリしているのかしらね?







※おまけ



「治安がめちゃくちゃで、平気で奴隷を殺して、子供が身体を売ってるような国で、公爵様は何をしているのよ?

「多分、知らされていないと思います

「国王なのに?

「国王だからこそです。かなり以前から内乱の噂は有ったのですが、魔王国のおかげで抑えられてきました

「魔王国のおかげって……ああ、そういう事ね

「どういう事っスか?

「共通の敵がいるから味方同士で争う暇が無いってことよ

「……そういう意味では、これから共通の敵が勇者になるって事になると……

「国王様が味方に成ってくれる可能性があります……!!

「(先生かアイシャと連絡が取れたらいいのだけど……)



 

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