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第096話 勇者召喚

 ヘンデニル公国の直轄地デニルより離れた伯爵領でそれは行われていた。

何人もの魔法使い。

何人もの警備兵。

伯爵と子爵と男爵が数人。

奴隷の血肉を使い、呪いを籠めて描かれる魔法陣。


「……足りるか?」

「魔素を造るだけの犠牲は払いました」

「もう13度目だからな……」


その光景を見守る。

 魔法使いが魔力を注ぎ、呪文を唱えると、魔法陣が怪しく光る……。

 光の中から何かが現れる……。


「……成功したぞ!!」

「まだ、まだだ、もっと籠めろ!!」

「これ以上籠めてどうする?」

「能力が低かったら意味がない。強さだ、圧倒的な強さが無ければ困る」

「なら、お前が死ね」


 魔力を注いでいた魔法使いの喉元に刃物を突き刺す。

 血飛沫が舞った。

 新たな魔法使いが呪いの言葉を続ける……。

 輝きは増したのに、どす黒い。

 その何かの姿が闇の光に包まれて姿を現した。


「うぐっ……明日は朝から選挙の演説だというのに、照明が壊れたのか……?」


 眩しい所為で、目を細めて周囲を見渡すと、異様な光景が広がる。


「よくぞ来てくれた、勇者殿」

「……は?」


 スーツ姿にネクタイを緩める男。

 真っ暗になったと思ったら、レンガの壁に囲まれた不気味な部屋の真ん中に立っている。何が起きたのか、理解が出来ない。

 そんな状態なのに話し掛けてくる、誰なのか分からない。

 

「崩壊に向かう世界、救世の勇者として戦って欲しい」

「……ココは何処だ?」


 足元で怪しく輝く模様。

 まるでゲームの世界にある魔法陣のようだ。

 黒魔術なんて冗談だろう?

 しかも、気味の悪いおとk……こいつ、血を流して死んでいる。

 なのに、周りの奴らはなんとも思っていないのか?


「何処……とは、地名を答えればよいのか?」

「質問に答えろ、ココは何処だ?」


 不気味な男は戸惑っているようで答えず、隣に立つ男にボソボソと何かを言っているがよく聞こえない。

 ココは全てが気味が悪い。

 こんな所からはさっさと出て、明日に備えなければならないというのに。


「ココはアナタの住む世界とは別の世界」


 腕時計を見るとちゃんと動いている。

 時間は先ほど確認した時より5分も経過していない。


「冗談はイラナイ。3時間しか寝る余裕が……いや、今なんて言った?」

「貴方は我々とは違う世界より召喚された。救世の勇者として……」

「異世界だと?そんな子供しか喜ばないような話を誰が信じr……」


 だが、周りは見た事もない者達ばかり。

 数分前までは自分一人しかいないホテルの一室だったはずだ。

 妙な頭痛がする。

 イタイ。

 くそっ、片頭痛なんてあったか?


「おい、魔法を掛けてやれ」

「はっ……」


 スーツの男にほんのりとした温かい光が包む。

 スゥーっと、痛みが消えた。


「なんか視界がクリアになったぞ……」


 目の前に自分の名前が浮ていて見える。

 そこにはゲームでしか見ないような事が文字も見える。


「VRのゲームか何かか?」


 自分を見詰める者達を無視して、宙に浮かぶ文字列を確認する。



名前 班目聖人 性別 男 年齢 31 種族 普人

職業 闇の勇者 Lv 1 筋力 98 魔力 255 敏捷 25 魅力 255

HP 999 MP 999

所持 なし

特殊技能 超回復 闇の紋章 鑑定Lv2 格闘Lv1 剣道Lv1 



 子供の頃にやったゲームと比べると強いか弱いかは分からない。

 だが、確かに感じるモノがある。

 それが魔法だと気が付くのに時間は掛からなかった。

 何故、そんな事が自分に出来るのか。

 この不気味な男達の言う事が本当なら問題がある。


「元の世界に帰れるのか?」

「心配いらない。だが、喚び出したのはこちらだ。可能な限り望みの物が有れば……」

「用意するという訳か。帰れると言うのなら完全な時間軸で元の状態になるという事で良いな?」


 聞き慣れない言葉も有ったが、本当の事を言うつもりもない。


「……問題ない」


 召喚された男は諦めるように胡坐をかいて座った。

 大きく息を吐き出すと、この不気味な光景が気に入らない。

 何しろ、もっと綺麗な場所で、綺麗な女性な囲まれながら、美味い飯と酒を楽しむ予定も延期になったのだ。

 芸能界で成功し、経営者としても成功し、世間からは羨望の眼差しを集め、これからは政界に進出する。その目前でキャンセルされたのだから、良い気分な筈もない。

 だから、今まで手に入れられなかった無理であろう事を言ってみる。

 それが、彼なりのこの世界に対する手探りの確認方法だと思ったのだ。


「では幾つか望みを叶えてもらおう」

「幾つも有るのか?」

「金も無い、服も無い、生活する基盤も無い。幾つも有って当然だろ」

「そ、それもそうか」


 態度に余裕を見せてきた異世界の男にたじろいでしまった。

 これを上手く扱えば自分の望みが達成されるのだから、態度ぐらいで負けてはいられない。


「何が望みだ?」

「俺は欲しいモノはだいたい手に入れたつもりだが、それでも俺の世界では許されなかった」

「な、なんだ……?」


 不気味な男達を怯ませるような歪んだ笑顔を見せる。


「小柄な女で子供に見えるような童顔、そして巨乳だ」

「は?」

「当然だが美少女でなければ許さん。そんな女が存在する訳がないだr」

「そんなので良いのか?」

「いるのか、そんな奴」

「処女でなければ」

「……まぁ、それは勘弁してやろう」


 周囲からは不気味さが消え、可愛そうな生物を見る視線を感じる。


「少し待て」


 数分間、視線を浴びているだけでは暇なので、妙な感覚を覚えた魔法を使ってみようと試みるが、使い方が分からない。

 確かに感じるのだが……。


「連れて来たぞ」


 そこに現れたのは手と腕で身を隠す少女。

 それも、間違いなく美少女だ。

 涙を流しながら恥ずかしがっている。


「名前を言え」

「は、はぃ……ニールとお呼びください……」


 驚いた。

 頭に耳がある。

 兎のような……?

 普通の耳も有るが、耳が長い。

 本当にファンタジーの世界に迷い込んだのか。

 何か確かめる方法はないのか。

 目利きのような鑑定方法が……。


 ふわっと目の前に浮かぶ文字。

 それは先ほどの自分の時と同じだ。

 なるほど。

 キーワードは鑑定か。



名前 フェミニール・メイ・アロロニア 性別 女 

年齢 78 種族 兎獣人とエルフのハーフ

職業 奴隷 Lv 3 筋力 5 魔力 10 敏捷 5 魅力 97

HP 580 MP 800

所持 隷属の首輪

特殊技能 料理Lv1 回復魔法Lv1



 78歳?

 どう見ても子供なのだが……。


「どうです、勇者殿」


 自信満々の顔が気に食わないが、俺は知ってしまった。

 自分がロリコンだという事を……!

 いや、違う。

 そっちじゃない。


「もう用は無いな。帰る方法を教えろ」

「え、戦うという話では……」

「なんで見ず知らずの奴の為に戦わないとならないんだ。お前はある日突然知らない奴に喚び出されて、俺の都合の為に死ぬ気で戦えと言われて従うのか?」


 答えなかったのではなく、答えられなかった。

 当事者であったのなら答えはもちろん……。

 本当の事など言えない。


「本当に困っているのなら考える事も有るのではないか?」

「無いな。先ず、赤の他人に、それも異世界から頼らなければならないほど窮地に追い込まれているのなら助ける以前の問題だ。どうせ滅亡する」

「……」

「もう一つ、お前達はかなり余裕がある生活をしているな。どういうつもりか知らんが、嘘を言うならもっとマシな嘘を付け」


 目の前の男に耳打ちをするようにヒソヒソ話始めた。


「ニールだな、こっち来い」


 怯えながらも寄ってくる。

 可愛いぞ。


「ヒィッ……」


 手を掴んだら丸見えになってまた泣いた。

 しかし、本当に異世界なら犯罪にはならない。

 そう、俺は犯罪者じゃない。

 コイツ等を見ると良く分かる。

 人が死んでいるのに誰もなんとも思っていない。

 しかし柔らかい手だな、まるで子供……堪能するのは後だ。


「ニールは魔法が使えるか?」

「つ、使えますけど……」

「なんでも良い、簡単な攻撃魔法を一つ教えろ」

「えっ、えっと、手のひらを前にかざして、魔力を集中させます」

「ほうほう」


 言われた通りにやる。

 魔力の集中というのは先ほど感じたものだ。

 解かる。

 物凄い量の何かが手のひらに集まってくる……頭が痛い。


「燃えるイメージを頭の中で描きながら唱えます」


 俺は唱えた。


「インフェルノファイヤっ!!」


 瞬間的に何かが見えた。

 魔法陣と思うが良く分からない。

 直後、手のひらから小さな火の玉が飛び出し、目の前の男に接触すると爆発した。

 ……ただの爆発じゃない。

 爆風と轟音。

 それが周囲の全てを吹き飛ばす。

 俺もニールも吹き飛ばされ、壁に激突した。

 

「ぐふっ、なんだこれは……」


 内臓をやられたかもしれない。

 口から血がこぼれる。


「ひんひん……」


 今度は恐怖で泣いている。

 抱き寄せて頭を撫でるともっと大声で泣きだした。

 本当に78歳か?

 痛かったハズの俺の身体はもうなんともない。

 骨の一本ぐらいは折れていると思ったのだが。


「ゆ、勇者様……」

「お前は大丈夫か?」

「だ、大丈夫です……回復魔法が使えますので」


 青白い光が発生すると、ニールの傷が消えた。

 本当に異世界なんだな、ココは。

 そうか。

 なら、やりたい放題させてもらうか。

 コイツ等の言う事なんてやってやる理由も無いしな。


「だ、大丈夫ですかー!!」


 兵士らしき姿をした男達が続々と集まってくる。

 俺とニール以外で生きている者は数名。

 適当に言ってみるか。


「魔法の暴走で爆発した、助けに来てくれ」

「了解しました、直ぐに!!」


 声が届いたらしい。

 ……返事の仕方が何か変だな。

 それより人を引き付けて逃げる準備もしないとな。

 ……裸は拙いな。


「おい、これを着ろ」

「変わった服ですね?」

「スーツを知らんか。まぁ良い。お前にはいろいろと教えてもらわねばならんからな。いいか、それを着たら俺の背に掴まれ。絶対に離れないようにしっかりと、だ」


 言われた通りしてくれたので、目の前の男の着ているローブを引き裂き、ひも状にしてニールと俺を纏めて縛る。

 丁度良い、マントも貰っておこう。

 何か杖も有るから貰っておこう。

 丸い石も有るが持ちきれないから諦めよう。


「よし、逃げるぞ」

「えっ、えっ?!」


 杖で壁を叩くと簡単に崩れる。

 魔法のイメージか……。

 少し威力を下げないと危ないな。


「ファイヤーボール!!」


 壁が吹き飛んだ。

 良い威力だ。


「す、凄い……」

「凄いのか、これ」

「凄いです。本当に勇者様なんですね……」

「知らんぞ、そんな話」

「伯爵様がおっしゃられてました。勇者様に仕える事を光栄に思えと」


 ニールを背負ったまま吹き飛んだ壁から外に出ると、見た事も無い景色が広がる。

 思わず立ちすくんだ。

 身体が震える。

 こんな恐ろしい事は無い。

 少し前まではコンクリートジャングルに囲まれて、普通に生きてきたはずだ。

 悪い事は何も……していない事も無いが、今までの人生が無駄かと思うぐらいの衝撃だ。


「どこか痛むんですか?」


 献身的にも、背負われたまま俺に回復魔法を掛けてくれたようだ。

 身体が温かい。

 体温も高いなコイツ。


「これからやる事は多い。イイ女も手に入れたし、あとは金と飯……服も欲しいか」

「イイ女って……」

「お前の事だ」

「大丈夫ですよ、隷属の首輪が有るので勇者様から離れられません」

「そーゆ―ことも含めて何でも教えて貰うからな」


 ニールは不思議に思った。

 しかし、毎日知らない男に玩具にされるより何倍も良い。

 諦めていた人生が再び明るく照らされる気がする。


「走るぞ」

「はひぃー」


 目を閉じてしっかり抱き付いた。

 全力で。

 二人はそのまま行方を晦ますことに成功した。

 それが今後の大事件となった事は知るコトも無く……。





※おまけ



「なによ、このおまけって……

「魔王様なんですから、我慢してください

「わかってるわよ。もう仕方がないんだから

「おまけのスープだ、貰って来たぞ

「ありがと、メルス

「ふー、美味しい……



 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-**-*-

 

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宜しくお願いしますm(_"_)m

 

 

 

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