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第095話 リッカーと女の子


本来のアイシャ達の時間より、少し未来の話です……




 ヘンデニル公国は大小幾つもの領地を持つ貴族が集まってできた連合国家である。

 国王であり、領主でもあるヘンデニル公爵は選挙によって選ばれたこの国の代表者なのだが、優れた人物だったから選ばれたのではなく、誰からも憎まれず、誰からも頼られず、誰に対しても公平で、領民を大事にする人物だったから、体裁によって貴族達から選出されている。

 もちろん、国民も、領民もこの事実は知らない。

 知っているのは本人とその一部身内、選んだ各貴族達である。


 そんな事とは関係もなく、デニルの街は平和で、たまに出現する魔物を冒険者や領地兵が討伐するし、安全度が高いから商人も多く、農地も広い。

 だからこそ暗躍する者達の隠れ蓑にも使われていて、冒険者ギルドでは裏ギルドに通じる者も存在していた。

 食堂が併設されているのは何処の街のギルドでも同じで、ココのギルドに無いのは宿屋だった。何も手続する用事が無いから、そのまま食堂で料理を注文する。

 ちなみに、冒険者になって金に困ったことは無い。


「やっとまともな飯が食えるな」

「ししょー、私も食べていいっスか」

「あー、食え食え。食わなきゃ強くなれない」

「やっぱりししょーは優しいっス」


 目の前で女の子が魔物に殺されそうになっていれば助けるのが普通だろう。

 リッカーはそれだけの実力が備わっているし、事実、魔物はあっさり倒した。

 周囲には戦って殺された人、殺した魔物、双方が転がっていて、唯一の生き残りが彼女だ。ただ、この子供には問題がある。


「いいか、私に付いてくるなら盗賊は足を洗え。身体も売るな。約束できないなら奴隷落ちさせるからな」

「はい、ししょー」モグモグ


 そんな楽しい食事は直ぐに邪魔される。

 見かけない女が二人、それも高く売れそうな美人がこんなギルドの食堂に居ると狙われるのは、昔は良く経験した。

 しかし、今は誰も声を掛けてこない。

 それが自分の事を良く知ってるギルドであれば、の話だ。


「よー、ねーちゃん。いーもん食ってんなぁ。俺にもくr……んべっ」


 いきなり男が顔から床に向かって転んだ。

 顔は分からない。


(これ、凄い便利だわ、覚えて良かったー……)


「なんでいきなり転んだんでスかね」

「疲れてるんでしょ、それより食べなさい」


 周りに男が増えた。

 転がっている男を見て笑っている。


「おい、なにやってんだ、サッサと口説けよ」


(口説くというより脅すつもりにしか見えないけど)


「こ、これからだ」


 立ち上がって、また私を見る。

 にやけた顔がきもっ!

 私達を囲むと、他の冒険者達が食事の途中でも逃げて行く。

 ギルド員は遠くから見ているだけ。

 私と目が合ったら逸らしやがった。

 アイツはお仕置き決定ね。


「見かけねぇと思ったが、こいつはフランソワじゃねーか」

「あら、あんた達知り合いなの?」

「そいつと一緒って事は、おめーもこっち側か?」


 フランソワは知らんぷりして必死に食べている。

 気が付いていないのではなく、無視しているのだ。

 こんなに美味しい料理を食べるのが久しぶりだったのは彼女しか知らない事だ。


「その娘は魔物に襲われてたから助けただけよ」

「魔物に……あぁ、あの全滅した……ククッ」


 気持ち悪い笑い方に腹が立つ。


「なに、なんかあるの?」

「そいつは商隊を襲ったメンバーの一人で、初陣だったんだが、生きてるとは思わなかったな」


 フランソワの動きがピタリと止まった。


「キニシナイで食べていいのよ」

「………っス」

「何をしたか知らんが、身体を売るのが嫌だから働くと自分から言ったんだぞ」

「それで?」

「おめーもこっち側だろ、何人殺して来たんだ?」

「………さぁ、100人は殺してるんじゃないかしら」


 フランソワが口の中の食べ物を噴き出した。

 それが全部男の顔にかかった。

 汚ったな。


「てめー、何しやがるっ!!」


 ついに手が出たが、その手はフランソワに届く前にリッカーによって叩き落される。


「あ、邪魔するのか?」

「そもそも、あんた達の存在が邪魔なのよ。失せな」


 囲んでいる男達は6人。

 フランソワが怖くて身体を震わせたのは、啖呵を切ったリッカーに対してであった。

 リッカーの事を詳しく知っているワケでは無いが、魔物を倒した時の強さが尋常ではなかったのだ。


「が、ががが、ガンダさん、やめといた方が良いっスよ……」

「あぁ?なにいってやがr……むべっ」


 ガンダと呼ばれた男はもう一度転んだ。

 それも後頭部から床へ。


「ふふっ、これ気持ちよくて癖になりそう……」

「えっ、ししょーがやったんスか?!」

「んー、そう見える?」

「見えないっス」


 リッカーがリンゴジュースを飲み干すと、席を立った。

 周りには男達とフランソワ以外、食堂の外から野次馬達がこちらを見る目が多い。

 いや、ちょっと多過ぎない?


「俺達を殺戮の盗賊団と知ってて手を出したのか?」

「は?何そのカッコ悪い名前」


 男達の顔に筋がビシッと入る。

 名前を聞けばこの街で恐怖に震えない者はいない。

 それがビビるどころか、なんとも思っていないどころか、冷たい目で見られたのだ。


「少し痛い目にあわせr……ヒィィ?!」


 リッカーは片足を高く上げ、踵をその男の頭に叩き付けた。

 床が壊れ、頭がめり込む。


「この程度で死なないわよね、私に喧嘩を売ったんだから……」

「お、おい、コイツ、なんか強くないか……」

「あー、思い出した、こいつ、リッカーだ」

「え、聖地でカラーを斬り刻んだ化物か?!」


 どう伝わってるの……。


「し、ししょーって、そんなに凄い人だったんでスか」

「そういう日もあったわね」


 リッカーは不思議に思う。

 この街は広い公国の中でも主要都市のハズ。

 それが、こんな悪党がノサバッテいるし、堂々と名乗りまで上げている。

 治安は良い筈なのに、どうなっているのか……。


「あんた達が札付きの悪党なら見逃さないけど?」

「あくと―なのは間違いないっス」


 リッカーは足元のリュックを見る。

 愛用の武器はリュックに縛り付けてあって直ぐに取り出せない。

 こんな平和な街で武器を使う事になるとは思っていなかったという油断も有ったが、この街に来たのは戦うのが目的ではないのだ。


「ちょっと、そこの受付っ!!」


 目を逸らしていたギルド員がリッカーを見る。


「悪党ならギルドにも依頼が出てるわよね?」

「はひっ、ありますありますっ」


 カウンターから出てこない上に、身を隠してから、頭だけ出して応じる。

 なんとも情けない。


「……カラー相手に単独で勝つ奴だぞ、どうする?」

「逃げるに決まってんだろ」


 勿論、逃がしはしない。

 その場から鋭い回し蹴りで一人が吹き飛ばされ、外に向かって逃げ出した男はその場でひっくり返って背中から床に落ちた。

 残った4人はギルド員よりも情けなく震えている。


「強いっスね……」

「こいつらが弱すぎるだけよ。ほら、捕まえて」


 ギルド員が何処からか呼んできた警備兵が現れ、男達を縛って連行していく。

 あっさりと終わったのは良いのだが、腑に落ちない点がある。

 受付が駆け寄ってきて一礼した。


「ありがとうございます、殺戮の盗賊団には困っていたのです」

「堂々とギルドに現れるなんて変過ぎるけど、理由は教えて貰える?」

「ええっと、それは……」


 長すぎる言い訳交じりの説明を要約すると、元々は普通の冒険者の団体だったのだが、2年ほど前から冒険者に対する理由不明の逮捕事件が多く発生していて、捕まるとその約半数が帰ってこないという曰く付きであった。


「2年くらい前って言うと、勇者が魔王を倒した時ぐらい?」

「えーっと、その少し前くらいからです」


 男どもが居なくなり、綺麗に片付けた食堂は賑わいが少しずつ戻り、野次馬達がリッカーを少し離れた場所から眺めている。

 そして、フランソワの方も見られている。


「その冒険者が盗賊団になった上に、子供に身体を売らせている理由は何?」

「売春の方は知りませんが……」


 売春は男どもの趣味ってことね。

 まー、奴隷落ちするよりはマシかな。


「彼らが襲う商隊は公国御用達の商人で、主に奴隷や奴隷にする予定の人を運んでいます。他にも高級品が多いですが、公国に対する嫌がらせが目的ですので、他には全く手を出しません」

「じゃあ、魔物に襲われて全滅したのは偶然ってことだったのね」

「だと思います。生き残ったのが少女一人では意味がありませんから」

「関わると面倒そうな話ね。ギルドでは手が出しにくいって言うと、あなた達ギルドは冒険者側の立場ってことが理由なのよね」

「そのギルド長が替わってしまって……」

「貴族の息が掛かった人物ってこと……って、私を襲った理由が解からないのだけど」

「あー、アレは多分ですけど偽物です。名前だけを騙っているのですが、そもそも所属している人が多過ぎてギルドでも把握できないのです」

「……良く平和に過ごせたわね」

「過ごせてませんよ。特に最近は……」


 聖地に集められていたドラゴンの一部が群れを外れて行動し、公国内でも暴れ、多くの冒険者や領地兵が殺されているし、連れて行かれた冒険者は何かの実験に使われているとも言われている。


「そういえば、公国の兵士が魔王国に攻め込んだのって本当なの?」

「えぇ、他の国には伝わっていませんが、事実ですね」


 あっさりと答えた事に違和感を持つ。

 本当なら機密情報とも思えるからだ。


「……詳しいわね、貴女」


 凄く暗い表情になって、重い口調で答えた。


「元、ギルド長です……」


 ギルド長が受付けって、降格ってレベルではない。


「……まさか暗躍の手引きをしていたのって、貴女なの?」


 目を逸らした。

 だからそういう事なのだろう。

 フランソワがリッカーの袖を引っ張った。


「ししょー、ココだと話し難い事も有るっス……」

「本当はこんな事をする為に来た訳じゃないけど、良いわ、ちょっとだけ関わってあげるから、知ってる事を全部話してもらうわよ」

「は、はひっ」


 なんで怖がるのよ。

 だが、リッカーはその話をする事が出来なかった。

 ギルドに入った情報は多くの者を驚愕させるに足りたからだ。

 ギルド員が、慌てて持ってきて紙を手渡す相手は元ギルド長である。

 そこに書かれている事に絶句して唾を飲み込む。


「……公国にて勇者が召喚されました」







※追加情報



名前 フランソワ・ソシエル 性別 女 年齢 14 種族 狐獣人

職業 盗賊 Lv 3 筋力 11 魔力 12 敏捷 6 魅力 88

HP 34 MP 5

所持 エッチな下着

特殊技能 天使の血筋



 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-**-*-

 

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宜しくお願いしますm(_"_)m

 

 

 

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