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第092話 復興した街

 翌日に目を覚ましたパーティリーダーの女は勝手に全てを自白し、捕まえないで欲しいと懇願してきたので、ご飯を与えて話を訊く事にした。

 もちろん、こいつらの事なんかどうでもいいから街の様子だ。

 ちなみに、外の男達は縛ってあるから動けないので、メルスが動物にエサを与えているかのように、パンを口にあてがって食わせている。


「あの街の様子って、普通に街だけど、なんて言えば良いのさっ……」


 そして、ちらちらとアイシャを見ている。


「あによ?」

「私が魔王様と呼んだ事を気にしているのだと思いますよ」


 ビックリしてはいるが、猜疑心もある。

 こんな子供が魔王だなんて信じられない。


「あのトレインが魔王様は必ず帰ってくると言っていたけどさ、帰って来るってそういう意味だったのね」

「まぁ、確かに帰って来たけど、必ず魔王に成るとは限らなかったし。そんな事より街はどうなってるのよっ」

「え、あぁ……」


 街の大半は建て直されている事と、ギルドの準備室が出来ている事、そして既に冒険者が入り込んで周辺の魔物の退治をしているらしい。


「ただ、食糧問題が酷くてね。魔物の肉が高騰してるのさ。だから、うちらみたいなのでも入り込んで商売ができていた訳だけど……」

「何やって捕まりそうになったの?」

「……食糧の横流しだよ。とは言っても他の奴から奪って別の奴に売るだけだけどね」

「ふーん」


 魔王様が私を見ました。

 食糧ならたっぷりあります。

 ただ、数百人で食べるとなれば一日持ちません。


「ギルドの準備室が設置されてるって言いましたよね?」

「ん、あぁ。そのうちボールドのギルドから誰か来るんじゃないかな。そいつらが来るときには食料も持ち込んでくるだろうから、それまでに荒稼ぎしようとして失敗したんだよ」


 悪びれる様子もなく、淡々と自分達の事を話す。

 外では仲間の四人が縛られているのだが。


「なら、セイビアが数日以内、いえ、明日には来るかもしれませn……来ましたね」


 マリアの察知能力が働いていて、港の方から人が多く来るのが判る。


「100人以上いますし、ココで見逃しても捕まりますね」

「そう、じゃー仕方が無いわね。忙しい理由も分かったし」

「えぇ、仕方が有りません」

「ちょ、ちょっと、見逃してくれるんじゃないのっ?!」

「見逃してあげるけど、逃げれるかどうかまで保証しないわ。そもそも、石化して死ぬ寸前だったんでしょ」

「うぐっ……」

「ただ確認したかっただけだから、後の事はどうでも良いのよ」

「くそっ、所詮魔族か……」


 そばかすの盗賊おねーさんが唇を噛むように悔しがる。

 人物鑑定では犯罪者かどうかまでは分からないのでどうしようもない。


「運が良ければ逃げれるんじゃない?」

「ふん、あんた達みたいに才能と金が有って生まれてきた訳じゃないのさ。血反吐吐くような汚い仕事だってしてた」


 アイシャが飽きれるように溜息を吐いた。


「私は親を殺されて、復讐の為に血が沸騰して耳から煙が出るくらいの努力はしたつもりだけど?」


 そこまではしていません。

 メルスが信じるからやめてください。


「努力なんてね、暇が有る奴がするのさっ。生きるので精一杯の人生なんて知らないでしょ」

「私はこれから、母親が病死して、父親が殺されたお城に帰るつもりだけど、もしかして自分が世界で一番不幸だと思ってるの?」


 魔王様がガッカリした溜息を吐いています。

 不幸自慢なんて横で聞いているこちらからしたら、虚しいだけですけどね。

 メルスなんて腕を組んで瞼を閉じています。


「サッサとどっか行きなさい。勝手に生きて勝手に不幸を押し付けていけば?」

「フンッ、そうさせてもらうさ」


 そばかすの女性盗賊が、ドスドスと足音を鳴らしながら家を出る。

 外には縄で縛られた男どもが居て、折れたナイフでその縄を切って、そのまま森の中へ消えて行った。

 折角助けた相手があんなつまらない人だったのは、誰にとっても不幸かもしれない。

 盗賊がいなくなったのを確認し、外へ出ると、先生が家を魔法袋に入れる。


「なんか、凄い無駄な時間を過ごした気分だわ」

「同感ね」

「それより、セイビアが来ると思いますが、待ちますか?」

「今のトコロ用は無いから町に行きましょ」


 アイシャ達は町に向かって歩き出す。

 淀んだ森の中の空気の所為もあって、足取りは重いが、向かうべき方向へ向かっている事を自覚し、少しずつ軽くなっていく。

 森を抜ければスグに町は見える。

 見える……ケド……。

 何あれ?


「壁が出来てますけど、半分くらいですね……」

「あのそばかす、なんの役にも立たなかったわね」


 実際、壁は建設途中で、門は有るが閉める扉は無い。


「門番が居るぞ」


 だからといってコソコソする理由は無いので、堂々と歩みを進める。

 ただの囲いにもなっていない門にいる兵はアイシャ達を見ても何も言わない。

 視線を送ってきたが、すぐに逸らした。


「うわ、すっごぉ……」


 メルスは何が凄いのか理解できず、不思議そうにアイシャを見る。


「ココを発ってから2年経ちます……」

「2年。もう、そんなに……」


 瓦礫に沈んだ町だったが、綺麗な街並みが広がっていて、メインストリートの左右には小さな店がいくつも並んでいる。少し高い建物は宿屋。キョロキョロとして気分はおのぼりさんである。その宿屋に向かって行こうとすると、横から声を掛けられた。


「お、お嬢様ですか?!」


 声で分かる。

 声の方を向いて笑顔をみせる。


「ただいまっ」

「お帰りなさいませ」

「凄いわ、こんなに変わっちゃって」


 綺麗に連なる建物、並ぶ店と、立ち寄る人々。

 空腹で困ってる人なのは見れば判る。

 腹を撫でながら俯いているからだ。

 それでも、魔物の肉が入荷すると他人が群がってくる。

 トレインが心配そうに見詰めるアイシャを見ている。

 何故かメルスがトレインを見てぼーっとしている。


「少し問題は有りましたが、ギルドに要請を出して復興を手伝って貰ったんです。人員は増えたのですが、その所為で食糧問題が酷くて……」

「……泥棒も居るみたいね」

「え、えぇ……詳しいですね?」

「まぁ、ちょっとね」


 改めて周囲を見る。

 トレインが立ち止まってメインストリートの真ん中で話し込んでいるのが不思議なのだろう。立ち止まってこちらを見る人が意外にも多い。


「それにしても綺麗な街になったわね」

「せっかく建て直すのですから配置も手を加えたんです。住宅街と商店街を分けて、農地と墓地に分けて、今は対魔物用に城壁を建設しております」

「流石トレインですね」

「ありがとうございます、先生……あれ、先生?」

「そうですけど、この姿は初めて見ますよね?」

「まるで魔女みたいです」

「ふふっ、そうですよ」


 何も隠さずに話すマリアは、トレインを信用しているからである。

 まだ、ぼーっと見つめてるメルスは頬が赤い。


「そちらの女性は?」

「こっちは私の部下でメルス。シルバーカラーよ」


 流石に吃驚しているようで、その姿を見ている方よりも、見られた方がそっぽを向いた。


「ちゃんと挨拶」

「あ、あぁ……メルスよ、ヨロシク……」


 トレインが不思議そうに見ていたのは彼女の服装で、マリア直伝の鱗を服っぽく見せる魔法だ。毎日少しずつ変化しているのは知っているが、判り難い日もある。

 もちろん、トレインは知らない。


「この三人で旅をしたんですか?」

「メルスはアルファディルで拾ったの。事件は伝わってるでしょ?」


 路傍の小石みたいに言われている事を抗議したいが、顔を向けられない。


「勿論です。ただ、勝手にギルド準備室を設置してしまいましたが……」


 準備室が有ったから、ギルド経由で情報が回ってくる。

 そうでなければ旅をする冒険者がもたらす噂話くらいで、正しい情報を得るにはギルドを利用するのが確実なのだ。

 今までは魔王国内で終わらせていた事も、これからは外の情報も欲しくなる。

 はっきり言うと、魔王国は鎖国していたのに近い状態だ。


「良いのよ、私も欲しかったから、ギルド」

「それでしたらギルド長が来る予定ですので、明日には正式に申請しておきます」

「うん、よろしくね」

「明日には間に合うと思いますけど、上陸はしているので、セイビアが一人で来る可能性も有ると思いますよ」

「あれ、ギルド長とお知り合いでしたか」

「ギルド長と知り合ったつもりは無かったんですけどね」


 知合った後でギルド長になっていたのだから、マリアの言う事が正しい。


「先生らしいです」


 メルスはやっと慣れたのか、今度は観察するように見ている。

 あの化物と普通に会話をしているトレインを。


「隊長!」


 ビックリしているメルスには目もくれず、アイシャ達に駆け寄ってきたのはトレインの部下で、賊を取り逃がしたコトを報告した。

 男を引き連れたそばかす顔の女性との事で、魔物に襲われて見失ったらしい。


「そうか、石化する魔物に襲われてたら助からんだろう……あの森には未調査の植物系魔物も多いからな。ご苦労、戻って良いぞ」


 仕事をしているトレインはキリっとして格好良く、アイシャでも見惚れる。

 それは、自分が目指すべき魔王の姿にも近いからだ。

 報告した部下を見送ると眼付が鋭くなり、視線を落とした後、改めて二人を見る。


「……お嬢様と先生に報告すべき情報が有るのですが」

「重要、ですね」

「はい。ココで立ち話も出来ませんので、建設中のギルドですが防音室は完成していますのでそちらで」

「そんなに重要なの?」

「はい。ギルド経由では掴めなかった情報です」


 メルスをちらっと見ただけで直ぐに視線を先生に向ける。


「大量にドラゴンが現れたでしょう?」

「えぇ、とんでもない数でしたね」

「その理由です」

「解りました。魔王様、行きましょう」


 トレインがビックリしました。

 ああ、教えてませんでしたね。

 まぁ、後でお話しておきます。







※おまけ



「ヘンデニル公国の街か……

「あ、ししょー

「ししょーは止めろ、なんの用?

「デニルまでもう少しっス

「いや、そこに道案内の看板があっただろ

「街の案内もしますよっ

「いや、しなくていい。通りかかって助けただけでそんなんされてたらウザくて困る

「そんなこと言わないでくださいよ、ししょー

「はぁ……面倒な女の子助けちゃったなあ……


 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-**-*-

 

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