第080話 ギルドの勢力
ボールドから派遣されたギルド長のセイビアからの要請が有ってから、聖地アルファディルの冒険者ギルドは大騒ぎになった。
アルファディルの冒険者ギルドにもギルド長は居るのだが、とにかく影が薄い。しかもB+ランクでしかなかったので、この街のギルドがどれだけゾンザイに扱われていたかが解かる。
そもそも必要のない組織だった所為もあって、形式だけ残っていたのだ。
過去にはもっと低ランクでもギルド長になっていたくらいで、仕事も依頼も殆ど無かった。
それがこの事態である。
「代理でギルド長に就任したのがセイビアさんなら安心だな」
その声が広がり、ギルド長は引退してしまったのだった。
そして、偉そうにしているのがあの男だ。
「ついに俺の出番だな!」
セイビアの表情が曇っている。
って言うか、涙のように雨が降っている。
「みんな、名を上げたくて来てるんだ。逃げ出す奴なんて皆無だろうよ」
この街は聖地であるし、聖職者がどの街よりも圧倒的に多い。
回復魔法が使えるのは普通で、治癒魔法が使える者もいるのだ。
利用する気満々である。
むしろ、街を守る為に戦うのだから、助けてくれて当然だという考えまで浸透したのは、だいたいコイツの所為である。
「一応正式な依頼は出してあるし、協力もしてくれるとの確約は貰ってるけど、一度に何人もやられたら助けられる人数にも限界が有るのよ、その事は理解して頂戴」
「そんな簡単に俺がやられるわけないだろ」
「貴方の心配じゃないのよ、むしろ貴方に付いて行く可哀想な連中の方を、ね」
コール・マーカーに付き従う冒険者の殆どがBランク以下で、少数のDランクも混ざっている。イエロー、ブルー、グリーンは何とかなっても、レッドが混ざった瞬間に総崩れも有り得る。
Aランクのパーティは自信が有って戦いに参加するつもりだから、他に頼るつもりは無い。とても清々しいくらいにチームワークというモノがない。
聖地の聖騎士は警備程度しか出来ず、戦える者が少ないから、彼らのような冒険者に頼るしかないのが辛い。
「とりあえず、全員に通達しておくけど、明日の朝には現れるつもりで準備して」
もしかしたら人化して紛れ込んでいるなどと言う情報は与えない。
余計な混乱を招くだけだ。
教えて藪蛇になっても困る。
冒険者達は返事だけは良かったが、景気付けに酒盛りをする馬鹿連中を抑える事は出来なかった。
これが今のギルドで集められる最大戦力だなんて、先生達が居なかったらどうなっていたか。
はぁ、頭痛が痛い……。
夜明けは迎えられなかった。
まだまだ空は星空が輝いていて、僅かに見える赤い光が太陽が昇る前であるのを示していて、暗闇に紛れた雲がその一部を隠している。
その空に突如として現れたのはブルーとイエロー。
報告はドラゴンのみであって、その数は正確に近かったのだが、それ以外にも飛行生物が現れている。
ロックバード、グリフォンは、まだ予想できるが、それ以外にフェルニール、ガルダー等は他の土地に棲んでいる。
強さはDランク以上Bランク以下で何とかなるが、とにかく数が多い。
そして、雑魚狩りに本領を発揮するのはあの男であった。
「おー、流石Sランクだ、鳥がバッタバッタ落ちて行く・・・・・・」
ドラゴンが降ってくるまではもう少し時間がある。
臨時とはいえ、この街のギルド長としてはギリギリまで様子を確認しておきたい。
セイビアは屋根の上から魔物が飛び回る空を睨む。鳥目と言われる飛行生物が夜明け前に攻めてくることが不思議だったからである。
「アイツの体力だけはSランクなのよね……」
同時刻のアイシャは子供達に囲まれて寝ていた。
そこは孤児院で、ベッドの数が足りていない。
ハニエルに頼まれて子供達を避難させていて、アイシャは子供達を説得するのには良いお姉さん的役割になっていた。
今寝ているのはその時の疲れから来るもので、マリアは怒る事なく優しく起こす。
「う……ん……あっ、先生……」
「他の子を起こさないように、慌てなくて良いですから準備してください」
「……リッカーは?」
「外で待ってます」
外から悲鳴が聞こえる。
誰かが苦痛の声を響かせる。
魔物の咆哮が響くと、何人かの子供は目を覚ました。
横に居るハズのお姉ちゃんの姿が無く、周囲を見渡せば、暗闇で動く影が見えた。
「おねぇちゃん、いかないでよ……」
声では応じず、ただその子の頭を撫でる。
周囲から手が伸びて、袖、スカート、腕、足、あらゆるところを掴まれた。
「皆を守らないといけないの、分かって」
もちろんもそんな理屈が子供に通じる訳がなく、掴む力が強くなる。
しかし、一人が手を離すと、その力が弱っていき、アイシャは動けるようになったが、今度は嗚咽が漏れる。
孤児である子供の中には親を目の前で殺されているのを見ている経験があり、それはトラウマとなって心を斬り刻む。
鳴き声は共鳴した。
「子供でもどのくらい危険なのか分かるんですよ。逆に言うと子供でも分かってしまうほどに危険って事です」
「私もお父様の記憶が無ければこうなってたのかも……」
啼き声に背を向けて孤児院を出る。
それがどれだけ勇気が必要な行動なのか、アイシャは経験したのだ。
待っていたリッカーがアイシャにもマリアにも視線を向けず、空を睨んだまま呟く。
「上はまだ雑魚ばっかりだから走り抜けられるけど、少しぐらい減らしとく?」
マリアが拒否する。
「数が減ると大物が来てしまう可能性が高くなります。ここは彼らに任せましょう」
孤児院の出入り口のドアを閉めたマリアは結界魔法を掛け、外からも中からも開けられなくした。その結界の効果がどのくらいかは知らないが、二人は先生を信用している。
「信用するのが前提の作戦ですので夜が明ければ自由に出入りできる程度にしました」
この街に住む一般市民の殆どは大聖堂に避難していて、孤児院に大人はいない。
逆に危険だと思うハニエルに大聖堂に集めるように言われたのをマリアが否定していた。
「子供を守る親なんてなんの役にも立ちません。その場に身をかがめて子供と一緒に死ぬだけです。それなら少しでも戦って貰います」
冷酷とも思える発言ではあるが、ハニエルが決戦に選んだ土地である。
孤児院と言っても、他の町と比べればかなり安全な建物だ。
籠城戦と、少数精鋭による敵の親玉を直接狙う部隊に分けた作戦で、守りに重点を置いているのだから、パニックを防ぐ為にも守る対象も分ける必要があったのだ。
「孤児院に子供が居ると分かっているのなら、守る方も余計な事に気を回さなくて済みます。最悪でも子供を守りたいのなら孤児院に集まれば良い訳です」
子供が勝手に逃げ回るようでは個々を狙われる。
しかし、最大の問題が一つある。
「レッドカラーが一体でも孤児院を狙ったら全て終わりますけどね」
「なら、来る前に殲滅しないとね」
※追加資料
■:ロックバード
肉は脂がのっていて美味しい
羽根は糸にして編めば魔法耐性が付く
爪や嘴は薬の材料になる
弱い者を追いかける習性がある
強い者からは逃げる
■:グリフォン
肉はロックバードより美味しい
素材は全てに魔力が付いていて加工次第で良いアクセサリーになる
鳥頭にしては賢いので、強い者にはあまり逆らわない
風魔法が得意ではなく、風魔法しか使えない
賢い個体は人語を理解する
■:フェルニール
通称、風鳥
風のように現れて、風のように去っていく
捕獲例が少なく、肉が美味しいかどうかは謎
羽根は薄い水色と薄い緑色
移動速度は速い
人を襲う事は珍しいが、戦うと素早くて厄介
卵が美味
■:ガルダー
通称、聖鳥
身体がとても大きく大人が10人乗っても飛べる
とても賢く、人語を理解する
火と風の魔法を操る
レッドカラーよりは弱い
肉も卵も食べた事が無い
蛇を好んで食べる
■:コカトリス
見た目は鶏で、もっとも賢いと頭脳は6歳児くらい
辛うじて人と話が出来る
状態異常魔法を得意とするが、魔力量に個体差が有り過ぎ
弱い個体が家畜化されている
卵をよく産む
肉も美味しい
羽根を集めるとほんのり温かい
■:ブルーカラー
青い鱗を持つ最弱のドラゴン
Cランクくらいの冒険者の天敵
群れで行動する事が多い
ドラゴンバスターを目指す者の登竜門的存在
一応、火を吐ける
■:イエローカラー
黄色い鱗を持つブルーカラーよりちょっと強いと言われるドラゴン
実際は差が分からない
火を吐けるが、当たるバカはいない
■:グリーンカラー
身体が緑色ではなく、背中らコケや草が生えた飛行能力の低いドラゴン
突進力とパワーに溢れている
鱗は無いが皮膚がとても硬い
鉱石リザードの鉄よりも硬い
炎を広範囲に吐ける
肉がすっっっっごく美味しい
■:レッドカラー
赤い鱗を持ち灼熱の炎を吐く要注意ドラゴン
Sランクなら普通に狩れる相手
小規模の街なら半日も持たずに壊滅するぐらい強い
鱗は炎の耐性がある
皮膚も加工して防具にすれば耐熱性が良い
飛行速度もなかなか
炎を吐くと石が溶ける
その肉は味付けでもされてるのかってぐらい美味しい
■:シルバーカラー
白銀のドラゴン
全世界でもかなりのレア個体
硬すぎる皮膚はミスリルで斬るにはかなりの技術が必要
頭をハンマーで殴った方が楽だが、まず殴れない
生物の性能としてはレッドカラーに毛が生えた程度だが
体力お化けでいつまでも暴れまわる
レッドカラーの変異種なので肉はやっぱり美味しい
普段何を食べて生きているのか不明
■:ブラックカラー
ドラゴンの最終形態
あらゆる生命体を食べ尽くしたと言われているが
普通に考えて無理
皮膚と鱗の硬さが異常で
オリハルコン以上の金属でやっと斬れる
さらに世界で一個体のブラックエンペラーが存在する
※おまけ
ホゥディ「先生の本って難しいよね
シェリィ「お嬢様が持って行かずに残してくれたんですから
ホゥディ「うん、ぼく頑張って覚えるね
シェリィ「目指せ、四天王。ですよ
ホゥディ「……そこまで目指してないけど……




