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第103話 遺されたモノ

 先代魔王で父親の腕を墓に入れる。

これでアイシャは約2年の旅を完了した。

 これはケジメであって、旅を終えたという気持ちが大事なのである。


「お父さん、お母さん、安らかに眠ってください……」


 一年中花が咲き誇る庭園に、常に手入れをされている綺麗な墓。

 スケルトンがウロウロしているのが気になるけど、バケツに水を入れて運んでるからちょっとフラフラしている。無理しなくても良いんだけど。

 あ、私に持ってきたのね。


「魔王様、ドウゾ」

「ありがと」


 水の入ったバケツと、ナニコレ?


「それ、柄杓というのですけど、墓に水を掛ける風習なんてありましたっけ?」

「花に水をあげる道具です。ジョウロですと掛け過ぎてしまうので。あと、肥料を撒くのにも便利ですね。先生に教わったんですけど……」

「そ、そうでしたっけ?」


 魔法関連の時もそうなんですけど、教わったと言われると、誰かに何か教えていた記憶が朧気になる事が多いのです。

 直接指導したのはそれなりに覚えているのですが……。


「……私が花に水を撒くの?」

「みんなでやると楽しいですよ」

「ま、いいか」


 柄杓でバケツの水を汲んで弧を描くように撒く。

 光に反射した水がキラキラとして輝くと、虹を造る。


「綺麗ですねー」


 シェリィと二人で撒くと何個も虹が出来た。


「凄いですねー」


 スケルトン達が褒めてくれるけど、なんか違うのよね。


「綺麗ねー」

「………誰?」


 綺麗な女の人がぼんやり立っている。

 ぼんやりというのは、姿が半透明だからだけど……。


「おかーさんっ?!」


 全く魔力を感じませんでしたが、謎が分かりました。

 ココに魔法陣が……先代魔王の腕が戻った事で、魔法陣が発動したようです。

 凄く綺麗な魔法陣です。

 ……ですが、これはお嬢様が魔王に成る事で発動する……違いました。どういう仕組みなのか気になります。


「先生は相変わらずですね……」

「えっ……会話が出来るのですかっ?!」

「記憶を辿っていますで可能ですよ。ほら、アッシュ、自分で組んだ魔法陣なのですから恥ずかしがらないで出て来てください」

「あ、ああ……セリーヌ、こうでもしないと会話できなかったからな」

「私とする前に自分の娘にですよ。まさか私の為だけに魔法陣を組んだなんて言いませんよね?」


 おかーさん、ちょっと怖い。

 って、おとーさんまで現れたんだけど、ナニコレ。


「これは生前の記憶を使って再現しているようです。本物ですが偽物です」

「分かりにくいんだけど」

「要するに、生前にお嬢様宛に遺しておきたいものが有ったという事です」

「そうです。私の病気が悪化する前に……」


 おかーさんは病死している。

 この頃はまだ勇者の脅威も無かったし、平和で楽しい毎日だった。


「アイシャ、少し抱かせてね……」


 ふわりと両腕に包まれるが感覚は無い。

 柔らかさも感じないが、懐かしさを感じる。

 これがお母さんの……。


「まあ、お父さんがいる限り1000年は安心して暮らせる国にするぞ、アイシャが大人に成って……あれ、まだ子供だな?」


 約2年後に勇者によってボコボコにされる事を知らない先代魔王です。

 事情を説明したら驚くでしょうけど、先代魔王は魔法陣によって再現されているだけですので、何の能力も有りません。


「そーよ、大変だったんだから、あーして、こーして、かくかくしかじか……」


 あー、説明しちゃってますけど、どうなるのでしょう……。

 王妃様の目が丸くなりました。

 驚き過ぎて何も返せないようです。


「俺、勇者に負けるのか……1000年どころかたった2年で」


 先代魔王もビックリです。


「そんなに苦労して、今は私の娘が、アイシャが魔王に成っているなんて……」


 涙は流れませんが悲しい表情です。


「アッシュ、アイシャに何か上げるモノは無いのですかっ」

「あ、宝物庫のモノなら自由に使っていいぞ」

「全部奪われたわ」


 地面におでこを付けるレベルで先代魔王の落ち込み具合が凄いです。

 王妃様にべしべし叩かれているんですけど、なんで当たるんでしょう……?

 触れる事が出来ない筈では。


「そ、そうだ、それなら地下の魔素溜まりの封印を……」

「先生と済ませたわ」


 地面に顔を突っ込んで落ち込んでいます。

 

「そうだ、シェリィは居ますか?」


 目の前に居ますが認識できていないようです。

 って、何故シェリィが呼ばれたのでしょう?


「秘密にする必要も無くなったわね」

「おばーちゃん……」

「え?確かに骨ばーちゃんって呼ばれてたけど……」

「違うのですよアイシャ、シェリィは私の血の繋がったお婆様なのです」


 じゃあ、私って骨ばーちゃんと一緒の……血筋?!


「言われて思い出しましたが、シェリィって若い頃は絶世の美女の候補でしたね」


 おかーさんも美人だし、骨ばーちゃんも美人だったという事は……。


「ってことは、私も絶世の……」

「アイシャは十分可愛いと思っているぞ」


 うんうん。


「そこでお婆様に伝えて欲しいお願いがあります。死んでしまってからで良いのでマリア先生に昔の姿で城に入るように伝えて欲しいのです」


 話と文脈が滅茶苦茶です。

 まあ、理解しましたけど。


「夫の手助けをして欲しかったのですが……」

「四天王も全滅、貴族や領主どころか領民も逃げ出したとなるとなあ……」

「これはマリアの為に用意したモノになります」


 取り出された魔力核は茶色じゃなくて紫色に近い。

 それだけ魔素が濃いのだろう。


「肉体付与の魔法を私が掛ければ呪いを解く方法は有りませんので」

「な、なんという裏ワザっ」


 先生が不思議な言葉を唱えてるんだけどなんだろう。

 呪いを掛ける為の魔力を残しているというのもなかなか用意周到と言えばそうなのですが、謎は残りますよね……。


「そもそも私達は二人とも死んでいますが」

「お婆様も死んでしまっているのですか?」


 カクカクしかじか。


「そうか、アイツら許さn……俺もそこでは死んでるんだよな……当たり前か」


 もう、落ち込み過ぎです。

 落ち込み過ぎて頭が地面にめり込んでいます。


「という事はこの魔力核は」

「シェリィに呪いを掛けてあげるわね」

「な、なんと……ありがとうございます……」

「おかーさんにとっておばーちゃんなら、私のおばーちゃんでもあるんだから、気にしなくて良いのよ」


 骨ばーちゃんはあの時に先生がたまたま使役させる為にスケルトン化させたのだが、その偶然が無ければ今の事態は起きる筈もない。

 そもそも、おかーさんがこの場に誰がいるのかある程度予測していなければならないのだから……そっか、勇者が来るなんて想定していないからややこしくなるんだ。

 確かに勇者がやってこなければ今の私が魔王に成っている筈ないモノね。


「えっと、先生」

「はい?」

「おとーさんとおかーさんは、私達が目の前に居るのをどのくらい認識しているの?」

「魔法陣が発動している筈ですので、有効範囲内ならば……ただし、これが造られたのが3.4年ほど前のようですし、当時の記憶を基に造られているので、会話が成立しなくなります。一番の問題は、私達との会話をどのくらい覚えていられるかという事になります」


 首をひねっています。

 そうですよね、解り難いですよね。


「おとーさん、今日は良い天気だね」

「済まん、部屋の中だから分からないが……釣り日和か?」

「うん」

「釣りの話は止めて、アイシャに伝える事を伝えましょう」

「うむ……」

「ところでシェリィは居ますか?」

「はい、居ますけど……」


 記憶容量に難有りってことですね。

 自分の娘との会話は記憶しているようです。

 それにしても部屋の中で造ったんですね、これ。


「シェリィが私のおばーちゃんなのは分かったしコアも貰ったよ」

「あ、あら。そうでしたか」

「私が今の魔王なのも覚えてる?」

「それは問題無いが、アイシャよ、どうした?」

「みんな殺されちゃって苦労してるんだけど」

「あー、うむ。そりは今の私達に言っても何も出来なくて申し訳ない。なにしろ、50年後ぐらいを想定していたのだ。アイシャも大人に……まだ子供だな?」


 この魔法陣を組む時に緊張し過ぎじゃないですかね。

 その気持ちが言葉に成って、娘相手なのに妙な言葉遣いです。


「ミズガル樹に行く予定があってな、渡そうとマイセル・レコードをセリーヌと造ったのだ。セリーヌだけだと詰まらないと思ったから二人で造ったんだが……」


 先代魔王が姿勢を戻してこちらを……娘の方を見ていますね。

 それにしても自由に喋り過ぎじゃないですかね。


「少しぐらい会話も出来ると良いと思って悪戯心でな、つい」


 アイシャの悪戯癖の原因が判明しました。


「なんか、おかーさんだけどおかーさんじゃないし、おとーさんだけどおとーさんじゃないし、変」

「そう言われてもなあ……そうだ、小型の魔導船を造っている途中だったんだ。まだ今は完成していないが、我々と会っているのなら完成しているかもしれん」

「ま、魔導船?!」

「ふふっ、やっと喜んでくれそうですね」

「ああ、寝室の隠し部屋にあるすいっ……」


 ……二人が突然消えました。

 魔力が無くなったのでしょう……しかし、これはちょっと……。


「……ちょっと酷くない、これ」

「同感です」

「ま、まぁ……魔王様がせっかく遺してくれたものですし」

「ふーん。でもシェr……おばーちゃんが言うなら」

「いつも通りシェリィとお呼びください。そもそも王宮仕えになる予定は無かったですし、セリーヌは私の孫娘に間違いは無いのですが、殆ど会った事が無いのです」


 子供達が成長し過ぎて貴族に叙爵されてしまい、社交界に肌が合わなかったために長く一人暮らしをしていたという。


「そうなると、おじーちゃんって誰?もしかして生きてる?」

「えーっと、ベルディ何とかって出身らしいとしか……サンタヘルって街に行くと言ったまま行方知れずです」


 サンタヘルを知らないのは普通の事です。

 出身がその街なら悪魔か天使という事になりますが……。


「まあ、夫が行方不明なんてよくある話です」

「そーですよねぇ」


 なんで二人で笑ってるの……。







※追加情報



■:ミズガル樹



この世界で世界樹の正式名称

通称の世界樹の方が多くの人に浸透している


■:マイセル・レコード


ただの記憶媒体

魔法によって発動させたり記憶を再生したりする

会話が出来るのはかなり高度だが、ちぐはぐに成りやすい

 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-**-*-

 

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宜しくお願いしますm(_"_)m

 

 

 

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