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第102話 墓参り

 午前の執務を終えたアイシャは久しぶりにのんびりとした昼食を摂り、食後のリンゴジュースもしっかりと楽しんだ後、シェリィのスケルトンを10体ほど借りて、ある準備をしている。

遠く離れた土地で命を賭した攻防戦をやっている事を知っているからと言って、今のアイシャには何も出来ないし、内政で多忙を極めていたのだ。

 だが、それでも空いた時間が出来た事にアイシャは自分のやりたい事をやっと出来るとあって、少しウキウキしている。


「申し訳ありません、忙しくて失念していました」

「良いのよ、分かってたとしても他に優先する事は有ったし、時間も欲しかったから」


 今日は午後の執務は無く、明日の早朝にスケルトン軍団の出航を見送れば、魔王としての仕事は一段落である。

 とにかく金も無いし人員の募集も行っているが、魔族が必須条件となるだけで、面接に来る者は一人もいない。今回の午後の執務の空白も、人員募集の為の面接の時間でもあったのだった。


「先生が持ってるんでしょ、お父さんの腕」


 魔法袋から出した魔王の腕は、布で巻いただけではあるが魔力でコーティングしてあり、保存状態は良い。

 中身を確認すると、枯れたように萎んでいて、動き出しそうな感じはしないのだが、妙に懐かしい魔力を感じる……。


「何か残っているわね」

「そうですか?私には特に強い魔力は感じませんが」

「これは……なんて言うか、泣いている子供を慰めてくれるような優しい……」


 ポロポロと涙を零す。

 何も出来ない自分が悔しいです。

 血を分けた肉親の想いの強さには勝てませんから。


「んーっ、んぐっ」


 鼻水を垂らしていますので吹いて差し上げま……ちょっと、私の服でチーンってしないでください。

 ううっ……怒るに怒れません……。


「あー、スッキリした。じゃ、ちょっと行ってくるね」

「あ、はい、行ってらっしゃいませ……」

「待ってるから先生も来てね」

「……着替えてきます」


 


 久しぶりに城の外へ出ると、とても良い天気と仄かな風が気持ちいい。

 今日まで我慢していたから、歩調も少し早く、その足取りは軽い。

 準備はスケルトンに任せたので、手に持っているのは父親の腕だけで、木漏れ日のある木々をすり抜けると、あの時と違う何かを感じた。

 

「あれ、道を間違えた……カナ?」

 

 目的までの場所は分かっているし、道も複雑なモノはない。

 歩調が緩み、周囲を見渡すと花の香りが鼻をかすめる。

 足が止まった。目の前にとても綺麗な花畑が見えたからだ。


「お、おおー、ナニコレ?!」


 その驚きは一瞬で感激に変化した。

 綺麗に整備された石畳の道を歩くと、左右には色とりどりの花が花壇の中で所せましと犇めき合って咲いていて、湧き水のある小さな池から花壇をまたぐように小川が流れ出していた。

 ウロウロとしているスケルトンが花に水を撒いていて、シェリィも混ざって作業をしている。


「お待ちしていました」

「凄い、凄い。シェリィがやったの?」

「はい。コツコツと種を集めていつでも咲く花を集めました」


 半円に段差が出来ていて、その最上段にお父さんとお母さんのお墓が目立つように建っている。


「ココからでは見えないですけど、上がるともっとビックリしますよ」

「ってか、ココこんなに広くなかったよね?」

「土を盛って広げました。少し木も伐採してしまいましたが不都合などありましたか……」


 シェリィが申し訳なさそうな顔をする。

 だから満面の笑みで応える。


「期待してるよっ」

「あ、ありがとうございます」


 シェリィも笑顔になってよかった。

 ……笑顔よね?

 骨だから分かり難いわ。


「魔王様っ、可愛すぎますっ!!」

「うわっ、いつの間に来たの」

「木の伐採辺りから後ろに居ました」

「ああ、ついさっきね」


 3人で整えられた階段を上がる。

 段差は低く、老婆でも登れるだろう。

 骨ばーちゃんって呼ばれていたから、おばあちゃんよね?

 骨だからホントに判り難いわ。

 もう他のスケルトンとの区別と言えば服を着ている事と猫背ぐらいしかない。

 登り終えた小さな広場には、カラフルな綿帽子が風に揺られて僅かに種を飛ばしていた。


「すっごー……」

「もう少しで少し強い風が吹きますので」


 シェリィがそう言うと、本当に風が強くなった。

 自然の風が地表を撫でるように流れると、綿帽子が一斉に飛んだ。


「うわぁ……」


 風に乗って庭園から海に向かって流れて行く……。

 あれ、何かが近くの森から飛んできた。


「カラーの群れが棲んでいるのですか?」

「去年あたりから何処から飛んできまして」


 もしかすると、あの時の……。


「ねぇ、先生」

「なんでしょう」

「カラーって言ったらあの鳥達の事よね?」

「そうです」

「なんでドラゴンの事をカラーって呼んでるの?」

「ああ、それは冒険者達が言い始めたようです。ドラゴンは色によって強さが変わりますが、それを纏めてカラーと呼んでいます。あの鳥達の方がカラーと呼ばれたのは古いのですが、ほぼ伝説に近いぐらい珍しい鳥ですので、ドラゴンにその名前を奪われています。それと、ドラゴンをカラーって呼ぶと通っぽくてカッコイイと思われたのも広まった理由の一つですかね……」


 魔王様とシェリィが綿帽子の無くなったマソウタンポポを寂しそうに眺めています。


「枯れちゃったんだね……」

「このまま萎れますが半月ほどで次の花が咲き、そこから十日から十五日程度で綿帽子になります」

「へーっ」

「ココの環境に合っていたようで、何度も咲きますよ」

「へー、次が楽しみになるわね♪」


 魔王様が楽しそうです。


「……話を聞いていましたか?」

「あ、カラーね、うん。聞いてた」

「………」


 あっ、先生が拗ねてるっ!!


「こ、これ埋めたいんだけど」

「墓石の後ろに入れる蓋が有ります」


 父親の墓の裏に回ると確かに蓋がある。

 蓋は腕が入る程度の大きさで、腕を入れる為に用意したように見える。


「その穴は移転用の為のモノなんですよ」

「へーっ……移転用?」

「なんらかの理由があってお墓を移動させる時に使うモノのようですね。そんな事態になったら移転どころでは無いと思いますけど」

「それはそう。まぁ、そんな事態にはさせないし、意地でもお墓は守るモン」

「お墓も大事ですけど、お城を守りませんか……」


 アイシャにとっては城も墓も価値は変わらない。

 城を守る事が墓を守るのなら、墓を守る事も城を守ることに繋がるのだから……。







■:マソウタンポポ(魔生蒲公英)



魔王国に群生するタンポポ

綿帽子に色が付いていて、赤、青、橙、白、緑がある

花の時の色で綿帽子の色も決まる

根と葉は食べられる

種の発芽率が極端に低い




 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-**-*-

 

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宜しくお願いしますm(_"_)m

 

 

 

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