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第099話 帰城

「あっ!!おねーちゃんっ、おかえりっ!」


 アイシャの姿を見付けて飛び込んで来たのは、あの町の唯一の生き残りで、男の子のホゥディだった。一番最初に見つける事が出来たのは、たまたま城の外で自主訓練をしていたからである。

 

「あら、大きくなったわねー」

「うん、僕あれからいっぱい訓練したよっ」


 先生が腕を組んでいて、見定めたようだ。



名前 ホゥディ 性別 男 年齢 8 種族 魔族

職業 拳闘士 Lv 21 筋力 87 魔力 9 敏捷 67 魅力 53

HP 526 MP 33

所持 

特殊技能 破壊王



「えっ……まだ8歳なのに即戦力です。筋力と敏捷に特化していますね。なんかヤバい特殊技能が有るんですけど……」

「あれ、おねーさん達だーれ?」


 ホゥディが初対面なのはメルスだけだ。

 レノアとシェリィもアイシャ達に気が付いて慌ててやってきた。


「おかえりー」

「お帰りなさいませー……せ、先生ですか?」

「シェリィは流石ですね。気が付いてもらえると助かります」


 レノアがビックリした後、しょんぼりしている。

 ちなみに、トレインが不在な事もガッカリする理由に含まれていた。


「先生なんだ?!すごーい、びじんだー!!」


 素直なのは良い事です。

 抱きしめてナデナデしてあげましょう。


「わっ、や、やめてー、はずかしー」

「私のおかーさんだって美人だったんですけど」


 そんなトコロで拗ねないでください。

 恥ずかしがって耳まで赤いです。


「おや、少し大人に成ってしまいましたか」

「あ、あの、その、もう一人のそちらの女性は……」


 シェリィが気が付いてドキドキしている。

 この辺りは年の功だろう。


「こっちは私の部下でメルス。シルバーカラーよ」


 顎が外れるほど口を開けています。

 魔王様はなんでその口に指を入れようとしているのですか?


「まだ部下になった覚えは無いけど、逆らえないのよね」

「逆らえますよ」

「えっ、そうなの?」

「かなり自由に振る舞えますけど、魔王命令を拒否できません」

「嫌な言葉を聞いたわ」


 魔王様にニンマリしていますね。


「じゃあ魔王命令。私をおんぶして謁見の間まで連れてって」


 …

 ……

 ………


「拒否できるが?」

「魔王様、メルスは謁見の間を知りませんから実行できないのです」

「ぐぬぬ」

「出来ない事は無理です。あと、自傷なども無理です」


 メルスがホッとしました。


「とりあえず謁見の間に行きましょう」





 玉座の間。

 そこにはスケルトン達が警備していて、既に綺麗に整列している。

 シェリィの命令で一糸乱れぬ行動が出来ていることにマリアが感心していた。


「整えられた綺麗な魔力制御は流石の一言ですね」

「お褒めにあずかり光栄です」


 ニコニコしている二人をチラ見しただけで、部屋の全体を改めて見まわす。

 部屋も隅々まで綺麗に掃除されているし、壊れた個所も直されている。

 真っ赤な絨毯が玉座まで伸びていて、アイシャがその上を歩く。


「魔王様、ココから私には分かりません。全て魔王様のご意志のままに」


 アイシャが固唾を飲んでから玉座に近付く。

 スケルトン達にも注目されるが、目は無い。

 普通の階段の半分化も無い段差を一つ一つ踏みしめて辿り着いたのは、少し前まで父親が座っていた魔王の玉座だ。

 この椅子はとても古く、初代魔王の時代から存在し、壊れても修復し、長い年月を亘って使い続けているらしい。

 先生がそう言うのだから間違いない。


「ココに私が座る……」


 その意味が理解できたワケでは無いが、アイシャは目に見えない重圧に手が震えていた。

 魔物とは違うコワさ。

 先生とは違う優しさ。

 喜怒哀楽が全て詰め込まれたかのような年月の重み。

 数秒の躊躇いの後、意を決して座る。


「…………」


 椅子から眺める景色に変化はない。




名前 アイシャ・ブイルダン 性別 女 年齢 12 種族 魔族

職業 魔王 Lv 12 筋力 22 魔力 666 敏捷 23 魅力 333

HP 257 MP 7974

所持 ミスリル製の釣竿 鉱石リザードの服

特殊技能 進化の女神と契約 魔力の紋章 鑑定Lv2 三十四代魔王




 特殊技能にはっきりと明記された。

 だが、これだけ。

 魔力とMPに変化も有るが、大して変わらない。

 この記録って誰が付けたんだろう……?



「やはり、何も起きませんね」

「今までは何かあったの?」

「代々の魔王様は継承の儀と呼んでいましたが、見た目では判りませんでした。ただ、継承後はとんでもなく能力の変化があったのですけど……」

「あー、黒帝を倒すのに使っちゃったもんね」

「多分ですけど、あの力を継承していたのではないかと」


 アイシャは確かに魔王に成った筈だが、歴代魔王の中で最も弱く、最も若い。

 たった12歳で継承した事など無いし、女性としては何世代ぶりか忘れるぐらい珍しいのだ。


「確かに魔王様に成られたのですよね?」

「鑑定結果ではそうなります」

「先代の魔王様の時は、なんと言うか、もっと破滅的に魔力を感じたのですけど……」


 それが記憶の継承であって、シェリィの疑問はそれを感じ取る事が出来ないからである。少なくとも魔王国領内に、何か感じ取れるモノがあったのは確かという、一般の見解に近い。


「これが魔王に成った事というのなら、少し寂しいわね」


 メルスの見解はその場にいるみんなが感じたもので、レノアは言いたくても言えない事だ。ホゥディなんてぼーっと見ていただけで、何の変化もない事が分かる。


「魔王としての君臨を宣言する必要があります。その後に領地を巡るのですが、魔王国内の有力者は殆どいない状態ですし、領地に住む者達の殆どが生きるので精一杯です」

「何の為に魔王に成ったのか分からないわね」

「……もう一つ必要な事が有るのですけど、知っているだけで本当に何処に有るのか……」


 アイシャがそれで思い出した。

 父親の記憶があった時の記憶を思い出すという、なかなかの苦労の中何とか思い出す事が出来た。


「そうよ、魔素溜まりが在ったわよね?」

「ある筈です……」

「大丈夫、分かったわ」


 ドヤ顔の魔王様。

 頼もしくて可愛いです。


「ここに居ても仕方が無いし、行きましょ」





 地下へ続く螺旋階段。

 魔王様が先頭で歩くと、設置された照明が反応し、点灯する。

 それでも朧気過ぎて足元が良く見えない。


「ばーちゃん、気を付けてね」

「ありがとねぇ」


 暫くして小部屋に出ると、古い古い、とても古い。

 封印の魔法陣が刻まれた扉がある。


「これは珍しいです。ちょっと写しても良いですか?」

「……早くしてね」


 知的好奇心には勝てません。

 こんな完璧な封印を形成する魔法陣なんて、国宝級どころじゃありません。

 注目されてやり難いですが、急ぎます。


「ふぅ……」


 終わって満足する暇もなく、魔王様が扉に手を添える。


「じゃあ、開くわよ……」


 押すのでもなく、引くのでもなく、添えただけで魔法陣が仄かに光を発すると、扉がきしむ音を響かせ、崩れながら開いた。

 

「……壊れちゃったんだけど」

「それで正解です。新たな封印を魔王様の手で造る必要がありますので」

「そうなの?」

「魔法陣を読み取るとそうなります。歴代の魔王である事の証明なのですが……これを再現するのに必要な魔力が足りません」


 メルスが突然私の前に立った。

 何かが飛び出てくると思ったのだろう。

 私も先生も油断していた訳ではなかったが、会話をしていて少し反応が遅れた。


「……風?」

「そのようです。ですが……禍々し過ぎます。シェリィはそこでホゥディとレノアを、待機してください」

「はい」


 魔素を多く含んだ風は、私にもメルスにも心地よいモノではなかった。

 先生だけは違った。

 メルスの横を抜けて中に入って行くと、先生の身体が崩れ、骨だけになった。

 それでも奥へ進んだ先生が暗闇に消えた。


「これが魔素の根源ですか……生きていては見る事も出来ませんでしたが」


 先生が何か呟いているがよく聞こえない。


「こんなものが他にも12ヶ所存在するなんて……」


 先生が見ているのは魔素そのもので、固形化したなにかである。

 そこに魔法で光を灯しても、暗闇に覆われ、見えなくなる。

 負の魔素が正の魔素を上回っているのだ。

 それを確かめるべく、マリアは幾つかの魔法を使い、魔素のコントロールに心血を注いだ。


「あの井出さんはとんでもないモノを残してますね……個人が制御出来るモノではなく、協力するしかないという訳ですかっ」


 創造神の事をそう呼ぶのは彼女だけかもしれない。







※おまけ



「ねぇ、修ちゃん、ココは何処なの……

「ココか……ココが悪魔と天使の住む世界だ

「えっ……



 

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