第90話 六人でたどり着いた答え
第三観測室を出た俺たちの前には、第四保管室へ続く西側の通路が延びていた。
先ほど確認した図面によれば、この道は東側の通路よりも距離が長い。その代わり、物資の重量制限がなく、六人全員で荷物を運びながら進むことができる。
俺たちが西側を選んだのは、単に重い荷物を分けて運ぶ手間を省きたかったからではなかった。
物資の数量を確認しやすいこと。班員同士が離れずに行動できること。そして、途中で状況が変わっても、全員で情報を共有しながら判断できること。
それぞれの理由を確かめたうえで選んだ道だった。
「じゃあ、ここから先も無理せず進もう。途中で何か気になることがあったら、すぐに声をかけてほしい」
レオル先輩が俺たちを見回した。
ガレスは二番の木箱を持ち直し、エミリアは物資一覧を確認している。サザリーは記録用紙を鞄の取り出しやすい場所へしまい、リビアは俺の隣で通路の奥を眺めていた。
「セス、一番の木箱は大丈夫?」
「ああ。重さは問題ないよ。リビアこそ、疲れてないか?」
「私は大丈夫。セスも何かあったら言ってね」
彼女が微笑む。
俺は頷き、木箱を持つ手に少しだけ力を込めた。
こうして何気なく声をかけ合えることが、今はありがたかった。
以前の俺なら、疲れているかどうかを聞かれても、多少の無理なら隠してしまっていたかもしれない。けれど、今回の演習では、それではいけないのだと思う。
自分の状態を伝えることも、班の一員として必要な行動なのだから。
◇
西側の通路は、思っていたよりも変化に富んでいた。
最初の区画は広く、石畳も平らで歩きやすかったが、二つ目の曲がり角を過ぎると、床の一部に傾斜がついていた。壁には魔導灯が設置されているものの、通路の奥は少し暗く見える。
俺たちは急がず、足元を確認しながら進んだ。
「ここ、少し滑りやすそうだな」
ガレスが前方の床を指差す。
見ると、石材の表面がほかの場所より滑らかになっていた。
水が付いているわけではないが、重い荷物を持ったまま勢いよく踏み込むと、足を取られる可能性がある。
「一度止まって確認しよう」
レオル先輩が言う。
俺たちは荷物を安全な場所へ下ろし、床の状態を確かめた。
ガレスが慎重に足を置き、体重を少しずつ移してみる。
「普通に歩く分には問題なさそうだけど、急に向きを変えるのは危ないかもしれない」
「それなら、一人ずつ通った方がいいね」
エミリアが提案した。
俺たちはその方法を選び、先に荷物を持っていないレオル先輩が通路を渡った。
次にガレスが二番の木箱を持って進み、俺が一番の木箱を運ぶ。リビアとエミリア、サザリーも順番に通過し、全員が無事に傾斜を越えた。
「よし。問題なしだな」
ガレスが笑う。
「でも、最初に気づいてくれて助かったよ」
俺が言うと、彼は少し照れくさそうに頭をかいた。
「まあ、前衛対応だからな。こういうところくらいは役に立たないと」
「十分役に立ってると思うよ」
リビアが穏やかに言った。
ガレスは嬉しそうに笑い、再び先頭へ向かった。
俺はその背中を見ながら、少しだけ考えた。
前衛対応という役割は、必ずしも敵と戦うことではない。
危険になりそうな場所を先に見つけ、班のみんなが安全に進めるようにすることも、大切な仕事なのだろう。
そして、それはガレスが得意とすることの一つなのかもしれない。
◇
さらに進むと、通路の途中に小さな掲示板が設置されていた。
そこには「物資確認地点」と書かれた札が掛けられている。
「ここで確認するのかな?」
エミリアが近づく。
掲示板には、第四保管室へ到着する前に物資の数量と封印状態を確認するよう記されていた。
ただし、確認方法について細かな指定はない。
「じゃあ、ここで一度全部確認しよう」
レオル先輩が言う。
俺たちは荷物を下ろし、エミリアを中心に数量を確かめた。
保存食の包みは六つ。
飲料水の小瓶は四本。
応急処置用の布包みは二つ。
記録用の紙束は一つ。
木箱は一番と二番の二つ。
すべて初期数量と一致していた。
「封印も問題ないね」
エミリアが確認すると、サザリーが記録用紙へ書き込んだ。
「第三観測室からここまで、物資の変化なし。確認済み、と」
「よし。じゃあ、次へ進もうか」
レオル先輩が言う。
俺たちは荷物を持ち直し、再び歩き始めた。
そのとき、通路の奥から小さな声が聞こえた。
「……第三班の皆さん、少し待ってください」
振り返ると、監督役の教師がこちらへ歩いてきていた。
教師は手元の書類を確認し、俺たちへ一枚の紙を差し出した。
「追加指示です。こちらを確認してください」
紙には正式な確認印が押されている。
俺たちは足を止め、全員で内容を確認した。
そこには、第四保管室へ向かう途中の一部通路で、模擬的な障害が発生したことが記されていた。
具体的には、前方の通路の一部が通行しにくい状態になっており、班の判断で安全な移動方法を選ぶ必要があるらしい。
「また条件変更か」
ガレスが小さく呟く。
けれど、その声に不満は感じられなかった。
むしろ、次に何をするべきか考えているようだった。
「まず、実際の状況を見てから判断しよう」
レオル先輩が言う。
「はい」
俺たちは頷き、教師へ礼を告げてから先へ進んだ。
◇
しばらく歩くと、通路の一部に木製の障害物が置かれているのが見えた。
高さは腰ほどで、通路の中央を塞ぐように設置されている。
左右にはわずかな隙間があるが、木箱を持ったまま通るには狭すぎるようだった。
「これは、そのままじゃ通れないな」
ガレスが立ち止まる。
俺も障害物を確認した。
木製の枠は床へ固定されており、勝手に動かすことはできない。上を越えることも不可能ではなさそうだが、荷物を持ったままでは危険だ。
「どうする?」
レオル先輩が尋ねる。
俺たちは少し考えた。
魔術で荷物を浮かせる方法も思いついたが、今回の演習では高出力魔術や無許可の術式使用は禁止されている。
それに、障害物を越えるためだけに魔術を使う必要があるとも思えなかった。
「荷物を一度下ろして、反対側へ受け渡す方法はどうかな?」
エミリアが提案した。
「でも、この高さだと木箱を持ち上げる必要があるね」
リビアが答える。
「そうだな。二番の木箱は少し重いから、無理に持ち上げると危ないかもしれない」
俺が言うと、ガレスが頷いた。
「俺とクルセスなら持ち上げられると思うけど、受け取る側にも人が必要だな」
「じゃあ、まず荷物を持ってない人が反対側へ回って、受け取る準備をするのはどう?」
サザリーが言う。
俺たちは障害物の左右を確認した。
人が通るだけなら十分な幅がある。
ただし、木箱を持ったまま通ることはできない。
「それならできそうだね」
レオル先輩が頷く。
「ただ、荷物を持ち上げる前に、受け取る側の足元を確認しよう」
俺たちはその方法を選んだ。
まずレオル先輩とリビアが障害物の反対側へ移動し、足元の状態を確認する。
次に俺とガレスが一番の木箱を持ち上げ、障害物の上を越えるように慎重に差し出した。
レオル先輩が受け取り、リビアが横から支える。
木箱は無事に反対側へ渡された。
「次は二番だな」
ガレスが言う。
俺たちは一度深呼吸し、二番の木箱へ手をかけた。
先ほどより重いため、持ち上げるときに少し力が必要だった。
けれど、二人で息を合わせれば問題ない。
「せーの」
ガレスの声に合わせて木箱を持ち上げる。
障害物の上を越えたところで、レオル先輩とリビアが受け取った。
そのままゆっくり下ろし、封印の状態を確認する。
「大丈夫。傷も付いてないよ」
リビアが言った。
俺たちは安心して息を吐いた。
残りの物資も同じように受け渡し、最後に全員が障害物の反対側へ移動した。
「よし、全員通過だな!」
ガレスが嬉しそうに笑う。
「でも、少し疲れたかも」
エミリアが肩を回しながら言った。
「大丈夫?」
俺が尋ねると、彼女は頷いた。
「うん。ちょっと腕が疲れただけ。少し休めば問題ないよ」
「じゃあ、ここで短く休憩しようか」
レオル先輩が提案した。
俺たちは通路の端へ移動し、荷物を安全な場所へ置いた。
エミリアは水を一口飲み、ガレスも肩を軽く動かしている。
俺はその様子を見ながら、少しだけ考えた。
もし俺が一人で荷物を持ち上げていたら、もっと早く通過できたかもしれない。
けれど、それではほかの五人が何を考え、どう協力できるのかを知る機会はなかっただろう。
今回の演習で大切なのは、速さだけではない。
六人で安全に進むこと。
そして、そのために必要な判断を共有することだ。
「セス、何考えてるの?」
隣に座ったリビアが小声で尋ねた。
「ちょっと、今日のことを」
「楽しい?」
「うん。思ってたよりずっと」
俺が答えると、リビアは嬉しそうに笑った。
「私も。みんなで考えるのって、面白いね」
「そうだな」
俺たちは顔を見合わせ、静かに微笑んだ。
◇
休憩を終えたあと、俺たちは第四保管室へ向かった。
通路は少しずつ広くなり、壁の魔導灯も明るさを増していく。
やがて、正面に大きな扉が見えてきた。
扉の上には「第四保管室」と書かれた札が掲げられている。
「着いた……!」
エミリアが小さく声を上げた。
俺たちは全員がそろっていることを確認し、レオル先輩が扉を叩いた。
「第三班です。物資の搬入に来ました」
少し間を置いて、室内から返事があった。
「入ってください」
扉を開けると、広い保管室が現れた。
壁際には棚が並び、中央には物資を置くための台が設置されている。
奥には担当教師が立っていた。
「第三班ですね。物資を確認しますので、指定された台へ置いてください」
「はい」
俺たちは荷物を順番に台へ置いた。
エミリアが物資一覧を読み上げ、担当教師が数量を確認する。
保存食の包みが六つ。
飲料水の小瓶が四本。
応急処置用の布包みが二つ。
記録用の紙束が一つ。
木箱が二つ。
封印も問題ない。
「すべて一致しています」
担当教師が言うと、俺たちは思わず顔を見合わせた。
ガレスが嬉しそうに笑い、エミリアは胸を撫で下ろした。
「よかった……!」
「物資の搬入は完了です」
教師は記録へ確認印を押し、俺たちへ一枚の証明書を渡した。
「次は中央確認所へ向かい、六人全員で完了申告を行ってください。途中の通行区域については、こちらの最新資料を確認してください」
「分かりました」
レオル先輩が証明書を受け取り、俺たちは礼を言った。
これで物資の搬入は終わった。
けれど、演習そのものはまだ終わっていない。
最後の条件は、六人全員が中央確認所へ到着することだ。
俺たちは新しい図面を確認し、中央確認所へ向かう経路を選んだ。
今度は大きな条件変更もなく、通行可能な道を進むことができた。
途中で何度か曲がり角を確認しながら歩き、やがて中央確認所の入口へ到着する。
「これで最後だね」
リビアが言う。
「うん。全員そろってるし、物資の搬入も終わった」
俺は周囲を見回した。
ガレス、エミリア、サザリー、レオル先輩、リビア。
そして俺。
六人全員が、ここまで一緒に進んできた。
「じゃあ、行こうか」
レオル先輩が扉へ手をかけた。
◇
中央確認所の中には、複数の机が並んでいた。
それぞれの机には担当教師が座っており、演習を終えた班の報告を受けている。
俺たちは指定された机へ向かい、レオル先輩が代表して完了申告を行った。
「第三班、六人全員そろって到着しました。指定された物資は第四保管室へ搬入済みです」
担当教師は証明書を確認し、俺たちの人数を数えた。
「確かに六人そろっていますね。では、最後にいくつか確認します」
教師は記録用紙を手元へ置いた。
「まず、第三観測室で西側の通路を選んだ理由を説明してください」
レオル先輩が俺たちへ視線を向ける。
俺たちは頷き合い、サザリーが代表して答えた。
「東側の通路は距離が短いものの、一度に通過できる物資の重量に制限がありました。物資を分けて運ぶことも可能でしたが、その場合は数量管理が複雑になり、班員が離れる可能性もありました」
サザリーは一度言葉を区切り、続けた。
「西側の通路は距離が長いものの、全員で物資を運びながら進めるため、情報共有と安全確認を維持しやすいと判断しました」
教師は頷き、記録へ何かを書き込んだ。
「なるほど。では、途中の障害物にはどのように対応しましたか?」
今度はガレスが答えた。
「無理に荷物を持ったまま通らず、先に人が反対側へ移動して、荷物を受け渡しました。木箱は封印を傷つけないように、複数人で持ち上げています」
「その判断で気をつけたことは?」
「荷物の重さと、受け取る側の足元です。あと、無理に急がないことですね」
教師は再び頷いた。
続いて、物資の数量管理についてエミリアが説明した。
初期数量の確認。
途中の確認地点での再確認。
第四保管室での最終確認。
彼女は少し緊張しているようだったが、言葉を急がず、一つずつ丁寧に説明していた。
俺はその様子を見ながら、少しだけ嬉しくなった。
最初に班で集まったとき、エミリアは自分の役割について不安を感じていた。
けれど今は、自分が確認してきたことを、きちんと説明できている。
それは彼女自身が考え、行動してきた結果なのだろう。
「では、最後に一つだけ」
教師が俺たち全員へ視線を向けた。
「今回の演習で、最も大切だと思ったことは何ですか?」
その質問に、俺たちは少しだけ顔を見合わせた。
答えは一つではないだろう。
安全確認。
情報共有。
役割分担。
物資管理。
どれも大切だった。
けれど、俺の中には、もう一つの答えがあった。
「……俺は、全員で判断することだと思います」
自然と声が出ていた。
教師が俺へ視線を向ける。
「理由を聞かせてください」
「はい」
俺は少しだけ考え、言葉を選んだ。
「今回の演習では、俺一人でもできそうなことが何度かありました。でも、それを全部自分でやるより、みんなで確認して、それぞれの得意なことを生かした方が安全に進めたと思います」
隣でリビアが静かに頷いている。
「分からないことを確認するのも、誰かに手伝ってもらうのも、最初は少し遠回りに感じるかもしれません。でも、その方が結果的に失敗を減らせることもあるんだと分かりました」
俺はそこで一度言葉を区切った。
胸の奥に、今日の出来事がゆっくりと浮かんでくる。
通行できない道を前に立ち止まったこと。
術式確認区域で説明書を読み、判断を急がなかったこと。
物資の重量を量り、六人で進める道を選んだこと。
そして、障害物を越えるために、互いの力を借りたこと。
「だから、俺は……できることを全部自分でやるんじゃなくて、必要なことをみんなで考えるのが大切だと思いました」
言い終えると、少しだけ恥ずかしくなった。
けれど、教師は穏やかに頷いた。
「よく分かりました。第三班の皆さん、お疲れさまでした」
教師は記録へ最後の確認印を押した。
「物資搬入、情報確認、全員到着。基本課題の三条件を満たしています。第三班の交流演習は完了です」
その言葉を聞いた瞬間、ガレスが大きく息を吐いた。
「よっしゃあ!」
エミリアも笑い、サザリーは安心したように肩の力を抜いた。
レオル先輩は俺たちを見回し、穏やかに微笑む。
「みんな、お疲れさま。無事に終えられてよかった」
「はい!」
俺たちは自然に笑い合った。
俺も胸の奥に、温かいものが広がるのを感じた。
勝負に勝ったときとは違う。
難しい魔術を成功させたときとも違う。
六人で同じ目標へ向かい、最後まで一緒に進めたことが、ただ嬉しかった。
◇
演習を終えたあと、俺たちは区画の外にある休憩場所へ移動した。
そこには長椅子と水飲み場が設けられており、ほかの班の生徒たちも順番に休憩している。
俺たちは空いている長椅子へ座り、しばらく何も言わずに休んでいた。
体力的には、そこまで厳しい演習ではなかった。
けれど、何度も状況を確認し、判断を重ねたせいか、頭の中が少し疲れている。
「いやあ、思ったより考えることが多かったな」
ガレスが笑いながら言った。
「俺、最初はもっと単純に荷物を運ぶだけだと思ってたぞ」
「私も少しそう思ってた」
エミリアが頷く。
「でも、途中で数量を確認したり、通路を選んだり、いろいろあったね」
「情報が変わるたびに整理するのは大変だったけど、みんながちゃんと共有してくれたから助かったよ」
サザリーが言う。
「僕一人で全部把握しようとしてたら、もっと時間がかかってたと思う」
「それは連絡・誘導の役割も同じだね」
レオル先輩が微笑んだ。
「僕とクルセスだけで情報を伝えるんじゃなくて、必要なときには直接声をかけてもらえたから、動きやすかった」
俺も頷いた。
「そうですね。最初は役割をどう分けるか気にしてましたけど、実際には状況に合わせて動く方が自然でした」
リビアは俺たちの話を聞きながら、嬉しそうに笑っていた。
「みんな、それぞれの役割をちゃんと考えてたよね。私も、術式確認区域で勝手に魔術を使わなくてよかったと思ったよ」
「リビアなら、あの魔導具の仕組みも分かったんじゃないか?」
俺が尋ねると、彼女は首を横へ振った。
「全部は分からないよ。説明書に書いてある範囲で判断できただけ。知らない魔導具を見て、すぐに仕組みまで分かるわけじゃないもの」
「そっか」
「でも、それで十分だったでしょう?」
彼女が微笑む。
俺は頷いた。
「うん。十分だった」
その答えに、リビアは満足そうに笑った。
しばらくして、ガレスが立ち上がった。
「よし。そろそろ戻るか。午後の授業もあるしな」
「そうだね」
エミリアも立ち上がる。
俺たちは荷物を整え、学院の校舎へ戻ることにした。
第二総合演習区画を振り返ると、入口には次の班が集まり始めていた。
彼らもこれから、それぞれの課題へ向かうのだろう。
どんな判断をし、どんな道を選ぶのかは分からない。
けれど、俺たちと同じように、何かを学んで帰ってくるのかもしれない。
◇
夕方、学院から屋敷へ戻る馬車の中で、俺とリビアは並んで座っていた。
窓の外には、夕日に照らされた王都の街並みが広がっている。
通りを行き交う人々の姿を眺めながら、俺は今日の演習を思い返していた。
「セス、今日は楽しかったね」
リビアが言う。
「うん。思ってた以上に」
「私も。六人で協力するのって、いいものだね」
「そうだな。俺、一人でできることばかり考えてたら、気づけなかったことが多かったと思う」
リビアは少しだけ俺の方へ身を寄せた。
「セスは、昔から誰かのために頑張ろうとするでしょう?」
「そうかな」
「うん。私のことも、いつも守ろうとしてくれるし」
彼女はそう言って、俺の手を取った。
「でもね、私はセスに守ってもらうだけじゃなくて、一緒に考えたり、一緒に頑張ったりしたいの」
俺はその言葉を聞き、彼女の顔を見た。
銀青色の髪が夕日に照らされ、柔らかく輝いている。
リビアはまっすぐ俺を見つめていた。
「だから、今日みたいに一緒に何かをできるのは、すごく嬉しい」
「……俺もだよ」
俺は彼女の手を握り返した。
「リビアと一緒に考えて、みんなと協力して、最後まで進めたのが嬉しかった」
彼女は微笑み、俺の肩へそっと寄りかかった。
馬車は穏やかに揺れながら、屋敷へ向かって進んでいく。
俺たちはしばらく言葉を交わさず、夕暮れの街並みを眺めていた。
今日の演習は終わった。
けれど、そこで学んだことは、きっとこれからも役に立つだろう。
自分にできることを知ること。
できないことを認めること。
そして、誰かと力を合わせること。
俺は隣にいるリビアの温もりを感じながら、静かに思った。
これから先、どんな道を選ぶことになっても。
一人で全部を背負おうとするのではなく、大切な人たちと一緒に考えて進んでいきたい。
そのための最初の一歩を、今日、六人で踏み出せた気がした。




