第89話 進む前に確かめること
第二確認室で受け取った新しい図面を前に、俺たち第三班は、すぐには次の行動を決められずにいた。
最初に渡された資料では、ここから第四保管室へ向かう中央通路を利用できることになっていた。ところが、正式な確認印のある更新資料には、その通路が通行禁止になったことに加え、第四保管室へ到達する前に第三観測室で追加情報を受け取るよう記されている。
第三観測室へ向かうには、南側の通路を通る必要があった。
そして、その途中には、術式確認区域を示す印が描かれている。
俺は図面から顔を上げ、班のみんなの様子を確認した。
ガレスは腕を組んで新しい経路を眺め、エミリアは物資一覧と図面を交互に見比べている。サザリーは更新前の情報に線を引き、レオル先輩は次に進む方向を確認していた。
リビアも俺の隣で図面を覗き込んでいるが、その表情に焦りは見えなかった。
「まず、今分かっていることを整理しようか。移動を始めるのは、そのあとでいいと思う」
レオル先輩が落ち着いた声で提案した。
上級学年の先輩らしい穏やかな口調だったが、俺たちへ一方的に指示を出すのではなく、全員の考えを聞こうとしてくれているのが分かる。
「中央通路は正式に通行禁止になった。第四保管室へ行く前に第三観測室へ寄る必要がある。そして、今の図面で第三観測室へ向かえるのは南側の通路だ。ここまでは確認済みの情報として扱っていいかな?」
「はい。術式確認区域については、まだ何をする場所なのか分かっていません」
サザリーが答えながら、記録用紙へ短い文章を書き込んだ。
彼が使っている紙には、確認済みの情報と未確認の情報を分ける欄が作られている。事前の話し合いで考えていた形式を、実際の情報量に合わせて簡単にしたものらしい。
「俺は、術式確認って名前が気になるな。何か魔術を使うのか?」
ガレスが尋ねると、リビアは図面へ目を向けたまま首を傾げた。
「その可能性はあると思うけど、まだ決めつけない方がいいね。術式を発動する課題かもしれないし、すでに動いている術式の状態を確認するだけかもしれないもの」
「なるほど。確かに、確認って言ってるだけで、魔術を使えとは書いてないな」
「うん。それに、演習中の魔術使用には制限があるから、説明を受ける前に何かするのは避けた方がいいと思う」
リビアの言葉に、俺も頷いた。
彼女は結界魔術に優れているし、俺も五属性の魔術を扱える。けれど、今回の課題は俺たちの魔力量や術式の威力を試すものではない。
必要な情報を確認し、許可された範囲で行動する。
その基本を忘れてしまえば、どれだけ魔術が得意でも意味がないだろう。
「物資についてはどうかな?」
レオル先輩がエミリアへ視線を向ける。
「今のところ、数量も封印も問題ありません。ただ、南側の通路には少し狭い部分があるみたいなので、木箱の持ち方は途中で変えた方がいいかもしれません」
エミリアは物資一覧を机へ置き、二つの木箱を指差した。
一番の木箱は比較的軽く、二番の木箱は少し重い。俺たちはここまでの移動中にも何度か持ち手を交代しており、荷物を一人に任せきりにしないよう気をつけていた。
「じゃあ、二番は俺が持とうか。さっきクルセスに代わってもらったし、今は十分休めたからな」
ガレスが申し出た。
「大丈夫か? 狭い通路もあるみたいだけど」
「問題ないって。もちろん、途中で持ちにくくなったらちゃんと言うぞ。そこまで意地を張るつもりはないからな」
彼が笑いながら答えると、エミリアも少し安心したように微笑んだ。
「それなら、最初はガレス君にお願いしようかな。重さだけじゃなくて、封印をぶつけないことも気をつけてね」
「分かってるよ。ちゃんと運ぶって」
ガレスはそう答えてから、俺へ手を伸ばした。
俺は二番の木箱を彼へ渡し、一番の木箱を持ち直す。
自分で持とうと思えば、二つとも運べるだろう。
けれど、それではガレスが前衛対応として周囲を確認する機会も、荷物の扱いについて考える機会も減ってしまうかもしれない。
(できるからって、全部俺が引き受ける必要はないんだよな)
以前から何度も考えてきたことだが、実際に班で行動していると、その意味が少しずつ違って見えてくる。
俺が一人で荷物を運べば、短い時間で済む場面はあるだろう。
それでも、今回必要なのは、六人で状況を確認しながら目的地へ到達することだ。
「じゃあ、南側の通路へ進もう。途中で気になることがあれば、その場で共有してほしい」
レオル先輩の言葉に、俺たちは頷いた。
サザリーが更新資料を折りたたみ、記録用紙と一緒に持つ。
エミリアは物資の数量を最後に確認し、リビアは応急処置用の布包みがきちんと固定されているか確かめた。
準備が整ったところで、俺たちは第二確認室の担当教師へ礼を告げ、南側の通路へ向かった。
◇
南側の通路へ入ると、それまで歩いていた区域とは少し雰囲気が違っていた。
石造りの壁には魔導灯が一定の間隔で設置されているが、通路の幅は場所によって変化している。床には低い段差があり、曲がり角の手前には、足元への注意を促す小さな札も取り付けられていた。
演習用の施設とはいえ、実際の古い建物や地下通路を想定して作られているのかもしれない。
ただし、本当に危険な状態になっているわけではなかった。
段差には見やすい目印が付けられ、壁の一部には監督用の窓が設けられている。教師たちが必要に応じて状況を確認できるようになっているのだろう。
「この先、少し狭くなってるな」
先頭を歩いていたガレスが足を止めた。
俺たちもその場で立ち止まり、通路の先を確認する。
壁の一部が内側へ張り出しており、二番の木箱を横向きに持ったまま進むと、角へぶつける可能性があった。
「木箱の向きを変えれば通れそうだけど、持ったまま回すのは危ないかな」
エミリアが言うと、ガレスも頷いた。
「一回下ろそう。クルセス、悪いけど手伝ってくれるか?」
「もちろん。レオル先輩、一番の木箱を少しお願いできますか?」
「うん。こちらで預かるよ」
俺は一番の木箱を先輩へ渡し、ガレスと一緒に二番の木箱をゆっくり床へ下ろした。
封印が付いている面を壁へ向けないよう注意しながら、持ち手の位置を変える。ガレスが木箱の片側を支え、俺が反対側を持ち上げると、無理なく通れる向きになった。
「そのまま少し待って。向こう側の足元を確認するね」
リビアが先に狭い部分を通り、反対側から声をかけてくれた。
「段差はないけど、壁が少し近いから、木箱を傾けすぎない方がいいと思う」
「分かった。ありがとう」
俺たちは彼女の説明に従い、木箱を水平に保ったまま通路を通過した。
ガレスが先に抜け、俺が後ろから支える。
反対側へ出たところで一度木箱を下ろし、封印の状態を確認してから持ち直した。
「よし。傷も付いてないな」
ガレスが安心したように息を吐く。
「うん。問題なさそう」
エミリアが確認し、サザリーも記録用紙へ目を落とした。
彼は少し考えてから、何も書かずに顔を上げる。
「今のは数量や状態に変化がなかったから、細かく記録する必要はなさそうだね。必要なことだけ残しておこう」
「そうだね。全部書いてたら、移動するたびに時間がかかっちゃうし」
エミリアが頷いた。
そのやり取りを聞きながら、俺は少しだけ感心した。
サザリーは情報整理を担当しているからといって、何でも記録しようとしているわけではない。必要な情報を選び、後から確認できる形にすることを考えている。
役割を果たすというのは、決められた作業を増やすことではないのだろう。
「しかし、こういうのは剣術の訓練と全然違うな」
ガレスが木箱を持ち直しながら言った。
「剣を振るときなら、自分の間合いや相手の動きを見て判断するだろ? でも荷物を運ぶときは、周りの人がどう動くかまで考えないといけないんだな」
「剣術でも周囲の確認は大切だと思うけど、確かに意識するところは少し違うね」
リビアが答えると、ガレスは苦笑した。
「そうなんだよ。俺、剣のことなら多少は自信あるけど、こういう作業は慣れてないからさ」
「でも、さっきも自分から止まって確認してくれたでしょう? それはすごく助かったよ」
エミリアが言うと、ガレスは少し照れたように頭をかいた。
「そう言ってもらえるなら、よかった」
俺たちは笑い合い、再び歩き始めた。
通路の奥へ進むにつれて、魔導灯の光が少しずつ明るくなっていく。
やがて、壁に「術式確認区域」と書かれた札が現れた。
その先には、扉のない広い入口があり、室内には三つの台座が並んでいる。
俺たちは入口の手前で足を止めた。
◇
術式確認区域の中には、三つの魔導具が置かれていた。
一番の台座には、青い光を放つ小さな結晶板。
二番の台座には、淡い黄色の線が浮かぶ円盤。
三番の台座には、ほとんど光っていない灰色の板が載せられている。
奥には担当教師が立っており、俺たちが近づくと静かに頷いた。
「第三班ですね。ここでは、指定された術式の状態を確認してもらいます」
教師は机の上から説明書を取り出し、俺たちへ差し出した。
「今回の課題では、魔導具へ直接魔力を流し込む必要はありません。表示されている状態を読み取り、指定された基準に従って分類してください」
俺は少しだけ意外に思った。
術式確認区域という名前から、何らかの魔術を使う場面を想像していたからだ。
けれど、説明書を確認する前に勝手な判断をしなかったのは正解だったらしい。
「説明書は全員で確認してもよろしいでしょうか?」
リビアが尋ねる。
「もちろんです。ただし、魔導具へ触れたり、魔力を流したりすることは禁止されています。観察と記録だけで判断してください」
「分かりました」
俺たちは指定された場所へ荷物を置き、説明書を囲んだ。
そこには、三つの魔導具の状態を「正常」「要確認」「使用停止」の三段階に分類するよう記されている。
ただし、判断基準は台座ごとに異なっていた。
「一番は光の強さと揺れ方、二番は線の数と間隔、三番は表面の印を確認するんだね」
リビアが説明書を読みながら言った。
「全部同じ基準じゃないのか」
ガレスが少し驚いたように呟く。
「そうみたい。だから、見た目だけで判断しちゃ駄目なんだと思う」
エミリアが答えた。
俺も説明書へ目を落とす。
確かに、光が強いから正常、弱いから異常という単純なものではなかった。
それぞれの魔導具に決められた確認方法があり、その基準に従って判断する必要がある。
「まず、一番から確認しようか」
レオル先輩が提案した。
俺たちは頷き、青い結晶板の前へ移動する。
リビアが説明書を持ち、確認項目を読み上げた。
「光が一定の強さで保たれ、揺れが規定範囲内なら正常。光が弱くても安定していれば要確認。強い明滅が続く場合は使用停止……だね」
俺は結晶板を観察した。
青い光は一定の強さで保たれているように見えるが、時折わずかに揺れている。
その揺れが規定範囲内なのかどうかは、目視だけでは判断しにくかった。
「俺には少し揺れてるように見えるけど、正常かどうかまでは分からないな」
正直に答えると、リビアが頷いた。
「私も同じ。説明書には、台座の横にある目盛りで確認するよう書いてあるよ」
見ると、結晶板の隣には小さな目盛りが刻まれていた。
光の揺れに合わせて細い針が動いており、その範囲を確認できるようになっている。
「なるほど。これなら分かるね」
サザリーが言う。
俺たちは目盛りを確認し、光の揺れが規定範囲内に収まっていることを確かめた。
「一番は正常でいいと思う」
リビアが言うと、全員が頷いた。
サザリーが記録へ書き込む。
二番の台座では、黄色い線の数と間隔を確認した。
最初は線が三本あるように見えたが、よく見ると一本が途中で途切れている。説明書では、線の途切れがある場合は要確認に分類することになっていた。
「二番は要確認だね」
エミリアが言う。
「うん。線の数だけ見てたら間違えてたかもしれない」
俺が答えると、ガレスが苦笑した。
「俺、最初は正常だと思ったぞ」
「でも、ちゃんと確認できたから大丈夫だよ」
リビアが笑う。
三番の台座では、灰色の板の表面に刻まれた印を確認した。
光はほとんど出ていなかったが、説明書には光の有無ではなく、表面の印の組み合わせで判断するよう書かれている。
俺たちは慎重に印を読み取り、使用停止に該当することを確認した。
「三番は使用停止、か」
レオル先輩が言う。
「これで三つとも確認できたね」
俺たちは結果をまとめ、担当教師へ報告した。
教師は記録を確認し、静かに頷いた。
「第三班、判定はすべて正しいです」
その言葉に、ガレスが小さく拳を握った。
「よし!」
エミリアも安心したように息を吐く。
俺はリビアと顔を見合わせ、自然に笑った。
特別な魔術を使ったわけではない。
けれど、六人で確認し、正しい判断へたどり着けた。
そのことが嬉しかった。
「では、次の指示を渡します」
教師は新しい封筒を差し出した。
表面には正式な確認印が押されている。
「第三観測室へ向かい、こちらの情報を提出してください。なお、途中の通行区域については、現在の図面を優先してください」
「分かりました」
レオル先輩が封筒を受け取り、俺たちは礼を言って術式確認区域を出た。
◇
第三観測室へ向かう通路は、先ほどよりも少し明るかった。
天井の一部に採光用の窓が設けられており、外からの光が石畳へ落ちている。遠くでは別の班が移動しているらしく、かすかな足音が聞こえてきた。
俺たちは歩きながら、先ほどの課題について話していた。
「リビア、さっきの三番の板、最初から使用停止だって分かってた?」
俺が尋ねると、彼女は首を横へ振った。
「ううん。見た目だけなら、光が弱いだけにも見えたから。説明書を読んで初めて分かったよ」
「そうなんだ」
「魔術の知識があっても、知らない形式の魔導具なら判断を間違えることはあると思う。だから、ああいう確認は大切なんだね」
リビアはそう言って、少しだけ微笑んだ。
俺も頷く。
俺たちは魔術が得意だ。
けれど、得意だからといって、何でも知っているわけではない。
知らないことを認め、必要な情報を確認する。
それも大切な力なのだろう。
しばらく歩くと、第三観測室の扉が見えてきた。
俺たちは全員がそろっていることを確認し、扉を叩いた。
「第三班です。追加情報の確認に来ました」
レオル先輩が声をかけると、室内から返事があった。
「入ってください」
扉を開けると、そこには大きな机と複数の掲示板が並んでいた。
壁には第二総合演習区画の一部を示す図面が掲げられ、机の上にはいくつかの資料が置かれている。
担当教師は俺たちの人数を確認し、提出するよう指示された封筒を受け取った。
「第三班ですね。術式確認区域の結果を確認します」
教師は封筒を開け、内容へ目を通した。
「正常、要確認、使用停止。すべて正しく分類されていますね」
「ありがとうございます」
レオル先輩が答える。
「では、ここから次の課題へ進んでもらいます」
教師は新しい資料を机へ置いた。
そこには、第四保管室へ向かうための経路と、途中で確認すべき情報が記されていた。
ただし、最初の図面とは少し違っていた。
「……これ、通路が二つあるね」
エミリアが言う。
俺も図面を覗き込んだ。
第四保管室へ向かうには、東側の短い通路と、西側の長い通路がある。
東側は距離が短いが、途中に物資の重量制限が設けられている。
西側は距離が長いものの、重量制限はない。
「どっちを使うか、選ぶ必要があるのか」
ガレスが呟いた。
教師は頷いた。
「そうです。ただし、どちらの通路を使うかは班の判断に任されています。選択した理由を、最終確認地点で説明できるようにしてください」
俺たちは顔を見合わせた。
これまでの課題では、通行可能な道を探すことが中心だった。
けれど今回は、どちらの道も使える。
そのうえで、どちらを選ぶか考えなければならないらしい。
「重量制限って、どのくらいなんだ?」
ガレスが尋ねる。
俺たちは資料を確認した。
東側の通路には、運搬する物資の合計重量に制限があると記されている。
しかし、木箱の正確な重量は物資一覧には書かれていなかった。
「……これ、重さを確認しないと判断できないね」
エミリアが言う。
「そうだね」
サザリーが頷く。
「今の情報だけで東側を選ぶのは危ないかもしれない」
俺は木箱へ目を向けた。
一番は比較的軽い。
二番は少し重い。
けれど、正確な重量までは分からない。
「先生、物資の重量を確認する方法はありますか?」
俺が尋ねると、担当教師は机の横を指差した。
「こちらに計量台があります。必要であれば使用してください」
見ると、そこには大きな秤が置かれていた。
俺たちは顔を見合わせた。
「じゃあ、まず量ってみようか」
レオル先輩が言う。
俺たちは頷き、木箱を計量台へ運んだ。
最初に一番の木箱を載せる。
続いて二番の木箱。
さらに、保存食や飲料水など、運搬する物資の重量を確認した。
エミリアが数値を読み上げ、サザリーが記録する。
すべての重量を合計すると、東側の通路に設定された制限をわずかに超えていた。
「……少しだけ超えてるね」
エミリアが言う。
「じゃあ、東側は使えないのか」
ガレスが腕を組む。
俺は資料を読み直した。
東側の通路には、合計重量の制限がある。
ただし、一度に運ぶ物資の重量なのか、班が持つ物資全体の重量なのかは、少し分かりにくい表現だった。
「これ、確認した方がいいかな」
俺が言うと、サザリーが頷いた。
「そうだね。解釈を間違えたまま進むのは避けたい」
俺たちは担当教師へ質問した。
教師は資料を確認し、説明してくれた。
「東側の通路の重量制限は、一度に通過する物資の合計重量に適用されます。したがって、物資を分けて運ぶことは認められます。ただし、班員の安全と物資の管理を維持してください」
「なるほど」
俺は頷いた。
つまり、東側の通路も使える。
ただし、物資を分けて運ぶ必要がある。
一方、西側の通路なら、全員で一度に進める。
「どうする?」
レオル先輩が尋ねた。
俺たちは少し考えた。
東側は距離が短いが、物資を分けて運ぶ必要がある。
西側は距離が長いが、全員で一緒に進める。
どちらにも利点と欠点がある。
「俺は、西側の方がいいと思う」
ガレスが最初に口を開いた。
「距離は長いけど、全員で進めるし、荷物を何度も運ぶ必要がないからな」
「私もそう思う」
エミリアが頷く。
「物資を分けて運ぶと、そのたびに数量を確認する必要があるし、途中で何かあったときに管理が複雑になるかもしれない」
サザリーも考えながら言った。
「情報整理の面でも、西側の方が単純だね。ただ、距離が長い分、途中で別の条件変更がある可能性はあるけど」
「それは東側でも同じだと思う」
リビアが答える。
「今分かっている情報だけで考えるなら、西側の方が安全に進めそうだね」
俺も頷いた。
「俺も西側に賛成。時間は少しかかるかもしれないけど、六人で一緒に動ける方がいいと思う」
レオル先輩は全員の意見を聞き、最後に頷いた。
「では、西側の通路を選ぼう。理由は、物資を分けずに運べることと、班全員で移動できること。最終確認地点では、そのように説明しよう」
「はい」
俺たちは頷き、選択した経路を記録した。
担当教師へ西側の通路を使うことを伝えると、教師は静かに頷いた。
「分かりました。では、第四保管室へ向かってください」
俺たちは礼を言い、荷物を持ち直した。
第三観測室を出ると、西側の通路へ続く扉が見えている。
その先には、まだ何が待っているか分からない。
けれど、今の俺たちは、ただ短い道を選ぶのではなく、六人で安全に進める道を選ぶことができた。
俺はリビアへ視線を向ける。
彼女もこちらを見て、静かに微笑んだ。
「セス、行こうか」
「うん」
俺は頷き、木箱を持ち直した。
六人で進むために、何を優先するべきか。
その答えは、少しずつ見えてきている気がした。
俺たちは互いの位置を確認しながら、西側の通路へ足を踏み入れた。




