第147話 公爵令嬢様は、俺が頼ってくれないと少しだけ拗ねるらしい
朝食の準備が始まったばかりのパウリー公爵邸では、厨房から焼きたてのパンの香りが漂い、廊下の奥では食器を運ぶ使用人たちの足音が静かに重なっていた。窓の外には薄い雲が広がっていたものの、庭園の木々には朝の光が届いており、夜の間に葉へ残った水滴が風に揺れるたび、小さな輝きを見せている。
俺は食堂へ向かう途中、廊下の壁際に置かれた連絡台の前で足を止めた。そこには今朝の業務連絡がまとめられており、昨日から確認が続いている予備の配膳用具についても、新しい記載が加えられていた。
仮の保管場所は引き続き使用するものの、正式な配置については担当責任者が確認を続けるらしい。今朝の準備に支障はなく、使用後の返却先も共有されているため、現時点で追加の作業を行う必要はなさそうだった。
(……昨日と同じ状態だけど、確認が進んでいないわけじゃないんだな。少なくとも、誰が判断するのかははっきりしている)
以前なら、こうした連絡を見るたびに、自分にできることがないか探していたと思う。けれど、今は担当者が仕事を進めていることを理解できるし、俺が勝手に動けば連絡の流れを乱してしまう可能性もある。
確認表を元の位置へ戻したところで、廊下の向こうから食堂担当の使用人が歩いてきた。
「シルフィール様、おはようございます。今朝の準備についてですが、予備の配膳用具は予定どおり確保しております。食堂の配置にも変更はありません」
「おはようございます。ありがとうございます。連絡表も確認しました。では、今朝はそのまま進めていただいて大丈夫ですね」
「はい。もし追加で確認が必要になりましたら、こちらからお知らせいたします」
相手は落ち着いた様子で答え、食堂へ向かっていった。俺はその背中を見送りながら、仕事が問題なく進んでいることを確かめてから、自分の担当する準備へ戻ることにした。
ところが、食堂へ入る手前で、今度は別の使用人から声をかけられた。
「セス様、少しよろしいでしょうか。今朝、食堂へ運ぶ予定の花器について、確認したいことがあるのですが」
「はい。どうしましたか?」
使用人が示したのは、廊下の端に置かれた小さな花器だった。季節の花が数本生けられており、食卓を飾るには十分な大きさだが、いつも使用しているものとは形が違っている。
「今朝の担当者が用意してくださったものなのですが、予定していた花器と少し違うようでして。食卓の配置を変えた方がよいのか、確認してから運ぼうと思ったのです」
俺は花器を見てから、使用人の手元にある配置表へ視線を移した。
確かに、いつもの花器より底が広く、中央に置くと隣の食器との間隔が少し狭くなりそうだった。ただ、実際にどの位置へ置く予定なのかは、配置表だけでは判断できない。
「今朝の食卓を担当している方には、もう確認しましたか?」
「いえ。まず、こちらへお持ちしてしまいました」
「それなら、一緒に確認してみましょう。花器を変える必要があるかどうかも、実際の配置を見てから考えた方がよさそうです」
俺がそう提案すると、使用人は少し安心したように頷いた。
食堂へ入ると、すでに食器の配置が始まっていた。担当者へ事情を説明すると、相手は花器を見てから、食卓の中央へ目を向けた。
「なるほど。確かに少し幅がありますね。ただ、今日は中央の飾りを一つにする予定ですから、配置そのものを変える必要はないと思います」
「そうなんですね。それなら、こちらの花器を使っても大丈夫でしょうか」
「はい。実際に置いてみて、隣の食器との間隔だけ確認しましょう」
担当者は花器を受け取り、食卓の中央へ慎重に置いた。
少し離れた位置から見ると、花器は周囲の食器と十分な間隔を保っており、食事の邪魔になることもなさそうだった。使用人たちは互いに確認し合い、そのまま準備を進めることになった。
俺はその様子を見て、思わず小さく息をついた。
花器を運ぶ前に確認してくれた使用人も、実際の配置を判断した担当者も、それぞれ自分の役割を果たしている。俺は話をつないだだけだったが、それで問題なく準備が進んだ。
「セス」
背後から聞こえた声に振り返ると、父さんが食堂の入口に立っていた。
「おはよう、父さん。今、花器の配置について確認していたところなんだ」
「そのようですね。今朝は少し違う花器が使われているようですが、担当者同士で確認できたのなら問題ありません」
父さんは食卓へ視線を向け、花器と食器の位置を確かめた。
「それにしても、あなたは最近、相談を受けたときに相手の担当範囲を確認するようになりましたね。以前は、自分で判断できることなら、すぐに結論を出していたでしょう」
「……そうかもしれない。自分で分かることなら、その方が早いと思ってたから」
「早さが必要な場面もあります。しかし、誰が判断するべきかを考えることも、仕事の一部です」
父さんは穏やかにそう言ったあと、俺の肩へ軽く手を置いた。
「あなたがすべてを知っている必要はありません。知らないことがあれば確認し、判断を任せるべき相手がいれば任せる。その積み重ねが、屋敷全体の仕事を支えることにつながります」
「うん。今日も、俺だけだったら花器を変えた方がいいのか迷ってたと思う。担当の人に聞いてよかったよ」
「それでよいのです」
父さんは小さく微笑み、次の確認へ向かった。
俺も食堂を出て、学院へ向かう準備を進めることにした。
◇
玄関広間へ下りると、リビアは階段の近くで待っていた。
今日も制服はきれいに整えられており、シルバーブルーの髪が朝の光を受けて柔らかく輝いている。彼女は俺に気づくと嬉しそうに微笑み、少しだけ歩み寄ってきた。
「おはよう、セス。今朝はお仕事が少し長かったのかしら」
「おはよう、リビア。食堂の花器について確認があったんだ。でも、担当の人と話して、ちゃんと準備できたよ」
俺が答えると、リビアは興味深そうに首を傾げた。
「花器? 何か問題があったの?」
「いつもと形が違うものが用意されていて、食卓の配置を変えた方がいいか迷っていたみたいなんだ。でも、実際に置いてみたら問題なかったから、そのまま使うことになったよ」
「そうだったのね。それなら安心したわ」
リビアは頷いたあと、少しだけ目を細めた。
「……ところで、セス。そのとき、あなたは誰かに相談したの?」
「うん。食卓の配置を担当している人に確認したよ。俺だけで決めるより、その方が確実だと思ったから」
そう答えた途端、リビアの表情がぱっと明るくなった。
「まあ、それはよかったわ!」
「えっ? そんなに喜ぶことかな?」
「もちろんよ。昨日もお話ししたでしょう? 私は、あなたが誰かを頼れるようになったことが嬉しいの」
彼女はそう言ってから、少しだけ口元を緩めた。
「ただ……少しだけ、残念でもあるのだけれど」
俺は思わず瞬きをした。
「残念?」
「ええ。だって、あなたは今朝も誰かに相談したのでしょう? それなのに、私にはまだ何も相談してくれていないのだもの」
リビアは冗談めかした口調で言ったものの、その瞳にはほんの少しだけ不満そうな色が浮かんでいた。
俺は思わず困ってしまった。
「えっと……リビアに相談するようなことが、まだなかったから……」
「それは分かっているわ。私も、何でも私に聞いてほしいと言っているわけではないのよ」
彼女はそこで一度言葉を切り、少しだけ頬を染めた。
「でも、あなたが誰かに相談していると聞くと、私もその中に入りたいと思ってしまうの。……少し、欲張りかしら」
俺はその言葉を聞き、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
リビアは俺がほかの人を頼ることを喜んでくれている。それでも、自分も頼られたいと思ってくれるらしい。
「……欲張りじゃないと思うよ」
俺がそう答えると、リビアは少し驚いたように目を見開いた。
「本当?」
「うん。俺だって、リビアが困っていたら相談してほしいと思うし、何かを一緒に考えられたら嬉しいから」
俺は少し照れくさくなりながらも、言葉を続けた。
「だから、リビアがそう思ってくれるのも嬉しいよ」
彼女はしばらく俺を見つめていた。
それから、ゆっくりと頬を赤く染め、嬉しそうに微笑んだ。
「……セス。あなた、最近、本当にそういうことを自然に言うようになったわね」
「えっ? また何か変なこと言った?」
「いいえ。とても嬉しいことを言ってくれたの。ただ、私の方が少し困ってしまうくらいに」
リビアはそう言って笑い、俺の隣へ並んだ。
俺たちは玄関で待っていた使用人たちへ挨拶し、馬車へ向かった。
外へ出ると、朝の空気にはまだ少し冷たさが残っていたが、風は昨日より穏やかだった。庭園の花々が静かに揺れ、馬車の近くでは御者が出発の準備を整えている。
リビアは先に馬車へ乗り込み、俺が隣へ座るのを待ってから、少しだけこちらへ体を向けた。
「ねえ、セス。今日の学院では、何か私に相談してくれることがあるかしら」
「……今のところ、まだ分からないかな」
俺が正直に答えると、リビアは少しだけ頬を膨らませた。
「もう。そこは、何か考えてくれてもよいのではなくて?」
「えっ? でも、無理に相談することを作るのも変じゃない?」
俺がそう言うと、リビアは一瞬だけ黙り込んだ。
それから、自分でもおかしくなったのか、小さく笑い始めた。
「……そうね。あなたの言うとおりだわ。相談することがないのに、無理に相談してもらっても仕方がないもの」
彼女は少し恥ずかしそうに目を伏せた。
「ごめんなさい、セス。私、少しだけ浮かれていたみたい」
「謝らなくていいよ。俺も、リビアがそう思ってくれて嬉しかったから」
俺がそう答えると、彼女は安心したように微笑んだ。
馬車がゆっくり動き始め、窓の外で公爵邸の庭園が後ろへ流れていく。
俺はその景色を眺めながら、今日の学院でも何か新しいことを学べるだろうかと考えていた。
◇
王立学院へ到着すると、教室の中ではすでにガレスたちが集まっていた。
ガレスは机の上へ広げた資料を指差しながら、サザリーと何やら話している。エミリアはその隣でノートを開き、レオルは窓際の席から二人のやり取りを眺めていた。
俺とリビアが入っていくと、ガレスがすぐに顔を上げた。
「おはよう、セス! オリビア様も、おはようございます!」
「おはよう、ガレス。何か話してたの?」
「昨日の授業のことだよ! 分からない情報があるときに、誰へ確認するべきかって話になってさ。サザリーが、俺の考え方は少し急ぎすぎだって言うんだ!」
ガレスは少し不満そうに言ったが、表情はどこか楽しそうだった。
サザリーは落ち着いた様子で首を横に振った。
「急ぎすぎだと決めつけたわけじゃないよ。ただ、確認する相手が多ければ多いほどよいとは限らないって話をしていたんだ」
「でも、早く情報を集めたいなら、いろんな人に聞いた方がいいだろ?」
「もちろん、必要な場合はそうだね。ただ、同じことを何人にも聞いて回ると、相手の仕事を止めてしまうこともある。だから、最初に誰へ確認するべきか考えた方がいいんじゃないかな」
サザリーはそう言って、机の上の資料へ視線を落とした。
俺は二人の話を聞きながら、今朝の花器のことを思い出した。
もし俺が、食堂の配置を担当している人ではなく、関係のない使用人たちへ次々に尋ねていたら、かえって準備を遅らせていたかもしれない。
「……俺も、サザリーの言うことは分かる気がするよ」
俺がそう言うと、ガレスは少し驚いたようにこちらを見た。
「おっ、セスもそう思うのか?」
「うん。でも、ガレスの言うように、早く情報を集める必要がある場合もあると思う。だから、まず誰がその情報を持っているのか考えることが大切なんじゃないかな」
俺は今朝の出来事を簡単に説明した。
花器の配置について確認が必要になったこと、食卓を担当している人へ相談したこと、実際に置いてみて問題がないと分かったこと。
ガレスは興味深そうに聞いていたが、話が終わると大きく頷いた。
「なるほどな! つまり、誰に聞くかを間違えなければ、早く確認できるってことか!」
「そういうことだと思うよ」
俺が答えると、サザリーも納得したように微笑んだ。
「うん。僕もそう考えていたんだ。ガレスの言う早さも大切だけど、そのためには確認する順番を考えた方がいいってことだね」
ガレスは少し考え込んだあと、机の上の資料へ新しい書き込みを加えた。
「よし。じゃあ、最初に誰へ聞くかを考えるって書いておく!」
その様子を見ていたエミリアが、柔らかく微笑んだ。
「こうして話してみると、同じことを考えていても、少しずつ見ているところが違うんですね。私は、確認する相手が忙しそうだったらどう声をかけるか、ということも気になりました」
彼女の言葉に、俺は思わず頷いた。
「それも大事だね。相手が今すぐ話せるとは限らないし、急ぎの内容なのかどうかも伝えた方がよさそうだ」
俺たちはそのまま、確認するときの声のかけ方について話し始めた。
リビアも隣で静かに聞いていたが、やがて少しだけ身を乗り出した。
「私も、確認をお願いするときには、相手が判断しやすいように状況を伝えることが大切だと思うわ。何が分かっていて、何が分からないのかを整理しておけば、相手も答えやすいでしょう?」
その意見に、サザリーが頷いた。
「確かにそうですね。質問する側が何を知りたいのか曖昧だと、答える側も困ってしまいますから」
俺はリビアの言葉を聞きながら、少しだけ感心していた。
彼女はいつも、相手がどのように受け止めるかを考えて話すことができる。
俺も最近は少しずつ意識するようになったけれど、リビアほど自然にはできない。
「……リビア、今の考え方、俺も参考にしたいな」
俺がそう言うと、彼女は一瞬だけ目を見開いた。
それから、嬉しそうに微笑んだ。
「もちろんよ。セスがそう思ってくれたなら、私も嬉しいわ」
その表情を見て、俺は朝の馬車での会話を思い出した。
リビアは、俺が自分を頼ってくれることを喜んでくれる。
今の言葉も、彼女にとっては小さな相談のように感じられたのかもしれない。
俺がそう考えていると、ガレスが少し楽しそうな顔で俺たちを見比べた。
「……なあ、セス。最近、オリビア様に相談すること増えたよな?」
「えっ? そうかな?」
「増えたって! 前から仲はよかったけど、最近は授業のことでも自然に意見を聞いてる気がするぞ」
ガレスは何でもないことのように言ったが、俺は少し照れくさくなった。
その隣で、サザリーが小さく息をついた。
「ガレス、二人のことを観察するのもいいけど、そろそろ授業の準備をした方がいいんじゃないかな」
「おっと、そうだった!」
ガレスは慌てて資料をまとめ始めた。
俺も鞄から授業の道具を取り出し、リビアと軽く目を合わせてから席へ向かった。
◇
午前の授業では、複数の担当者が関わる仕事について考えることになった。
教師が示したのは、学院内で小さな展示を行う場合の準備計画だった。展示そのものは架空のものであり、実際に施設を使用する予定はない。
準備には、展示物を用意する担当者、会場の配置を考える担当者、来訪者への案内を担当する者、必要な道具を管理する者などが関わる。
それぞれの担当者が自分の仕事を進めるだけではなく、必要な情報を共有しなければ、全体の準備がうまく進まないという内容だった。
「皆さんには、今回は担当者同士の連絡について考えてもらいます。誰が何を知っている必要があるのか、どの段階で確認するべきなのかを整理してください」
教師はそう説明し、生徒たちを班に分けた。
俺の班にはガレス、サザリー、エミリアが入り、リビアとレオルは別の班になった。
机を寄せて資料を広げると、ガレスが最初に口を開いた。
「よし! じゃあ、俺は道具を運ぶ担当について考えるぞ。荷物を運ぶなら、どこへ置くか分からないと困るからな!」
ガレスは勢いよく言いながら、資料の中にある道具の一覧を指差した。
サザリーはその隣で、落ち着いた様子で頷いた。
「それなら、僕は連絡を記録する担当について考えようかな。誰が何を確認したのか分からなくなると、あとで困るだろうから」
「私は、展示物を扱う人の立場から考えてみます。運ぶ順番や置く場所によっては、傷つけてしまう可能性もありますから」
エミリアがそう言うと、俺は少し考え込んだ。
それぞれが担当を決めていく中で、俺は全体の準備を確認する役割について考えようと思った。
「じゃあ、俺は全体の進み具合を確認する担当について考えるよ。みんながどんな情報を必要としているのか、まとめてみたいんだ」
俺がそう言うと、ガレスは大きく頷いた。
「いいな! セスなら全体を見てくれそうだし!」
その言葉に、俺は少しだけ苦笑した。
「でも、全部俺が決めるわけじゃないよ。みんなの意見を聞きながら整理するつもりだから」
「分かってるって! 俺たちもちゃんと考えるさ!」
ガレスは笑いながら答え、資料へ視線を戻した。
俺たちはそれぞれの立場から必要な情報を書き出し始めた。
道具を運ぶ担当者には、搬入する時間と置き場所が必要になる。
展示物を扱う担当者には、品物の大きさや扱い方、運ぶ順番が分かっていなければならない。
記録を担当する者は、変更があった場合に誰へ伝えるべきか把握しておく必要がある。
俺はその意見を聞きながら、全体の準備を確認する立場では、どの情報を優先して集めるべきか考えた。
(……全部の細かい作業を知っている必要はないけど、どこで問題が起きそうなのかは分かっていた方がいいよな。でも、それを知るには担当者から話を聞かなきゃいけない)
俺は資料の端へ簡単な表を書き始めた。
担当者、必要な情報、確認する相手、変更があった場合の連絡先。
その四つを並べてみると、最初は別々に見えていた仕事が、少しずつつながっていくように感じられた。
「……セス、その表、分かりやすいね」
サザリーが俺の手元を見て言った。
「ありがとう。でも、まだ全部埋まってないんだ。ガレスが考えてる搬入のことも、エミリアが考えてる展示物の扱い方も、もう少し聞かないと分からなくて」
「それなら、僕の方でも記録の流れを整理してみるよ。変更があったとき、誰が最初に気づくのかも考えておいた方がよさそうだ」
サザリーはそう言って、自分のノートへ書き込みを始めた。
俺はその様子を見ながら、少しだけ安心した。
以前なら、表を完成させるために自分で全部の情報を考えようとしたかもしれない。
けれど、今はそれぞれが自分の立場から考えてくれる。
俺はその意見を聞き、必要なところをつなげればいい。
しばらくして、ガレスが資料を持ち上げた。
「なあ、セス。荷物を運ぶ時間って、展示物を並べる人と相談しないと決められないよな?」
「うん。エミリアの方では、どんな順番で並べるか考えてる?」
俺が尋ねると、エミリアは頷いた。
「はい。壊れやすいものや、先に置いてしまうとほかのものを運びにくくなるものがあるかもしれないので、順番を確認した方がよいと思っています」
「なるほど。じゃあ、ガレスとエミリアで一度相談してみてもらえるかな。俺は、その結果を全体の表に反映するよ」
俺がそう提案すると、二人は顔を見合わせて頷いた。
「よし、分かった! じゃあ、エミリア、こっちの道具から考えてみようぜ!」
「はい。まずは、どのくらいの大きさなのか確認したいですね」
二人は資料を寄せ合い、搬入する順番について話し始めた。
俺はその様子を見ながら、サザリーと記録の方法について相談した。
担当者同士が直接話し合って決めたことを、全体の記録へどう残すか。
変更があった場合、誰へ知らせるべきか。
考えることは多かったが、誰かと一緒に整理していくと、不思議と負担には感じなかった。
やがて、教師が各班を回り始めた。
俺たちの机へ来ると、資料と表を見比べながら、少し興味深そうに尋ねてきた。
「この班では、担当者同士で直接確認することを重視しているようですね。全体の管理者がすべてを決めるのではなく、それぞれの担当者が判断する形ですか?」
俺は少し考えてから答えた。
「はい。ただ、担当者だけで決めていいことと、全体へ確認が必要なことは分けた方がいいと思っています。たとえば、荷物を運ぶ順番は担当者同士で相談できますけど、会場全体の配置を変えるなら、ほかの人にも影響があるかもしれないので」
教師は静かに頷いた。
「なるほど。では、その境界をどう判断するかも考えてみてください。担当者へ任せることは大切ですが、全体への影響を見落としてはいけません」
その言葉に、俺は思わず背筋を伸ばした。
「はい。ありがとうございます」
教師が次の班へ向かうと、サザリーが小さく息をついた。
「……やっぱり、全体を見ている人の役割って難しいね。任せるだけでも駄目だし、全部決めようとしても駄目なんだから」
「そうだね。でも、だからこそ、みんなと相談する必要があるんだと思う」
俺が答えると、サザリーは少し笑った。
「セスがそう言うと、何だか説得力があるね」
俺は少し照れくさくなりながらも、表の続きを書き始めた。
◇
昼休み、俺たちは食堂で昼食を済ませたあと、図書館へ向かうことになった。
午後の授業で使う資料を確認したいというサザリーの提案だったが、ガレスはそれを聞いて少しだけ苦笑していた。
「昼休みまで勉強するのかよ、サザリー。まあ、俺も気になるところがあるからいいけどさ」
「無理に付き合わなくてもいいんだよ。ただ、午前の授業で出た話をもう少し調べておきたくて」
サザリーが落ち着いた声で答えると、ガレスは肩をすくめた。
「いや、行くって。せっかくだし、俺も何か参考になる本がないか見てみたいからな!」
俺たちは廊下を歩きながら、午前の授業で考えたことを話し合った。
リビアの班では、来訪者への案内を中心に考えたらしい。
案内する側が必要な情報を持っていなければ、来訪者を待たせてしまう。けれど、分からないことを勝手に答えるわけにもいかないため、確認する相手や連絡の方法を整理したという。
「私たちの班では、案内する方がすべてを知っている必要はないという話になったの。分からないことがあれば、適切な担当者へ確認できるようにしておく方が大切なのではないかしら」
リビアがそう説明すると、俺は思わず頷いた。
「俺たちの班でも似たような話になったよ。全体を管理する人が全部決めるんじゃなくて、担当者同士で相談することも必要だって」
「そうだったのね。それなら、少し考え方が近いのかもしれないわ」
リビアは嬉しそうに微笑んだ。
その表情を見て、俺は朝の会話を思い出した。
彼女は、俺が自分を頼ってくれることを喜んでくれる。
今も、俺が班で考えたことを話すと、真剣に聞いてくれている。
俺は少し考えてから、彼女へ尋ねてみることにした。
「……リビア。ちょっと相談してもいい?」
その瞬間、彼女の足がわずかに止まった。
「……えっ?」
俺は少し驚きながら、彼女の顔を見た。
リビアは目を見開き、まるで思いがけない贈り物を受け取ったような表情をしている。
「ど、どうしたの?」
「い、いいえ。何でもないわ。もちろんよ、セス。何でも聞いてちょうだい」
彼女は慌てて姿勢を整えたものの、頬には少し赤みが浮かんでいた。
俺は少し戸惑いながらも、午前の授業で考えたことを説明した。
「俺たちの班では、担当者同士で決めていいことと、全体へ確認するべきことを分けようって話になったんだ。でも、その境界をどう考えればいいのか、まだ少し迷ってて」
リビアは真剣な表情で聞いていた。
「なるほど。確かに、すべてを全体の責任者へ確認していたら、仕事が進みにくくなるでしょうね。でも、担当者だけで決めてしまうと、ほかの方へ影響が出ることもあるわ」
「うん。だから、リビアならどう考えるかなって思ったんだ」
俺がそう言うと、彼女は少しだけ目を細めた。
「……そうね。私なら、その判断によって影響を受ける方が誰なのかを考えると思うわ」
「影響を受ける人?」
「ええ。たとえば、荷物を運ぶ順番を変えるだけなら、運ぶ方と展示物を扱う方が相談すれば済むかもしれないでしょう? でも、会場の通路を狭くするような変更なら、案内する方や来訪者にも関係してくるわ」
リビアは歩きながら、指先で小さく空中へ線を描いた。
「だから、変更そのものが小さく見えても、ほかの方へ影響するなら共有する必要があるのではないかしら」
俺はその言葉を聞き、少し考え込んだ。
確かに、担当者が自分の仕事の範囲だと思っていても、その判断がほかの人の仕事へ影響することはある。
屋敷でも、道具の置き場所を少し変えただけで、別の担当者が困ることがあるだろう。
「……なるほど。変更の大きさだけじゃなくて、誰に影響するかを考えるんだね」
「そうね。もちろん、実際の仕事では決まりもあるでしょうから、それだけで判断できるとは限らないけれど」
リビアはそこで少しだけ微笑んだ。
「でも、セスが考えていることを整理する助けにはなるかしら?」
「うん。すごく参考になったよ。ありがとう、リビア」
俺がそう答えると、彼女は嬉しそうに目を細めた。
「……よかったわ」
その声は、いつもより少しだけ柔らかかった。
俺たちはそのまま図書館へ向かったが、リビアはしばらくの間、どこか嬉しそうな表情を浮かべていた。
◇
図書館へ到着すると、館内には静かな空気が流れていた。
高い窓から差し込む昼の光が長い机を照らし、書架の間では数人の生徒が本を探している。受付の近くでは司書が返却された本を確認しており、紙をめくる音や椅子を引く音が控えめに響いていた。
俺たちは入口で声を落とし、サザリーが探している資料のある書架へ向かった。
途中、レオルが以前気にしていた案内表示の近くを通ったが、そこにはまだ変更が加えられていなかった。
レオルは一度だけ表示へ視線を向けたものの、何かを言うことはなかった。
俺もその様子を見ながら、今は担当者による確認を待つ段階なのだと思い直した。
書架の前へ着くと、サザリーは資料の一覧を見ながら、目的の本を探し始めた。
「この辺りに、施設の運営や来訪者の案内について書かれた本があるはずなんだけど……」
彼は背表紙を一つずつ確認していたが、しばらくすると少し困ったように首を傾げた。
「……あれ? 一覧には載っているんだけど、見当たらないな」
ガレスが隣から覗き込んだ。
「貸し出し中なんじゃないか?」
「その可能性もあるね。でも、今の一覧だけでは分からないから、受付で確認してみようかな」
サザリーはそう言って、本棚から少し離れた。
俺はその様子を見ながら、以前なら自分も一緒になって書架を探し続けていたかもしれないと思った。
けれど、今は受付で確認する方が早い場合もあると分かる。
「俺も一緒に行こうか?」
俺が尋ねると、サザリーは少し考えてから首を横に振った。
「ありがとう。でも、今回は僕が確認してくるよ。資料の名前も分かっているし、必要なら司書の方へ聞いてみる」
「分かった。じゃあ、俺たちはここで待ってるね」
俺が答えると、サザリーは小さく頷き、受付へ向かった。
その背中を見送りながら、俺は少しだけ不思議な気持ちになった。
自分が何かを手伝わなくても、友人が自分で必要な確認を進めている。
それは当然のことなのかもしれないけれど、以前の俺なら、相手が困っていると聞いただけで何かしなければと思っていた。
今は、相手が自分でできることを尊重するのも大切だと感じられる。
「……セス」
隣からリビアが小さな声で呼びかけてきた。
「何?」
「今、サザリー様にお任せしたでしょう?」
「うん。本人が確認できるって言ってたから」
俺が答えると、リビアは嬉しそうに微笑んだ。
「そういうところも、私は好きよ」
突然の言葉に、俺は思わず目を見開いた。
「……えっ?」
リビアは自分の言葉に気づいたのか、少しだけ頬を赤くした。
「い、いえ。その……あなたが相手を信頼しているところが素敵だと思ったの」
俺は返事に困りながらも、彼女の顔を見つめた。
リビアは少し恥ずかしそうに視線を逸らしたが、口元には小さな笑みが浮かんでいる。
その様子を見ているうちに、俺まで照れくさくなってしまった。
「……ありがとう、リビア」
俺が小さく答えると、彼女は安心したように微笑んだ。
しばらくして、サザリーが受付から戻ってきた。
「確認できたよ。探していた本は、今は別の生徒が借りているらしい。代わりに、似た内容の本を教えてもらえたから、そちらを見てみようと思う」
サザリーはそう言って、司書から案内された書架の場所を示した。
俺たちはその説明を聞き、別の棚へ向かった。
目的の本は見つからなかったが、必要な情報を得るための別の方法が分かった。
それもまた、今日学んだことにつながっているように感じられた。
◇
放課後、教室へ戻ると、掲示板の前に数人の生徒が集まっていた。
公開講習について何か新しい連絡が出たのかと思い、俺も少し気になって近づいた。
しかし、掲示されていたのは通常の授業に関する連絡であり、公開講習の参加者や役割についての正式な発表ではなかった。
近くにいた生徒たちも、少し残念そうに話している。
「まだ決まらないのかな」
「希望者が多かったみたいだし、仕方ないんじゃない?」
「でも、早く分かると準備しやすいんだけどな」
そんな声を聞きながら、俺は掲示板の内容を確かめた。
確かに、公開講習については新しい情報がない。
俺たちが希望した役割になるかどうかも、まだ分からないままだ。
隣へ来たリビアも掲示板を見て、小さく頷いた。
「まだ発表はないみたいね」
「うん。でも、昨日説明会があったばかりだし、もう少し時間がかかるのかもしれないね」
「そうね。私たちも、決まっていないことを勝手に想像しすぎない方がよさそうだわ」
リビアはそう言って微笑んだ。
俺はその言葉に頷き、鞄を持ち直した。
公開講習の役割が決まれば、また新しく考えることが増えるだろう。
けれど、今はまだその段階ではない。
俺たちは教室を出て、帰宅する生徒たちの流れに沿って廊下を歩いた。
◇
帰りの馬車へ乗り込むと、リビアは少しだけ嬉しそうな表情で俺を見つめていた。
俺が不思議に思って首を傾げると、彼女は小さく笑った。
「……セス。今日は、私に相談してくれたわね」
「うん。午前の授業で考えたことを、リビアにも聞いてみたかったから」
俺が答えると、彼女は満足そうに微笑んだ。
「とても嬉しかったわ。あなたが私の意見を聞きたいと思ってくれたことが、何より嬉しかったの」
俺は少し照れくさくなりながらも、彼女の言葉を受け止めた。
「俺も、相談してよかったと思ってるよ。リビアの考え方を聞いて、少し整理できたから」
「それなら、これからも遠慮なく聞いてちょうだい」
彼女はそう言ってから、少しだけ悪戯っぽく笑った。
「……でも、あまりほかの方ばかり頼っていると、私、少し拗ねてしまうかもしれないわ」
俺は思わず苦笑した。
「リビア、それは困るな……」
「ふふっ。冗談よ。あなたが友人たちを頼ることも、私は嬉しいと思っているもの」
彼女はそう答えたあと、少しだけ声を落とした。
「ただ、私もあなたの隣にいたいという気持ちは、きっとこれからも変わらないわ」
その言葉に、俺は静かに頷いた。
「……俺も、リビアの隣にいたいよ」
リビアは一瞬だけ息を止めた。
それから、ゆっくりと頬を赤く染め、嬉しそうに微笑んだ。
「……ありがとう、セス」
馬車の中には、しばらく穏やかな沈黙が流れた。
窓の外では夕方の街並みが後ろへ流れ、車輪が石畳を進む音が規則正しく響いている。
リビアは俺の手元へ視線を向けたあと、そっと手を伸ばしてきた。
俺も自然にその手を握り返した。
彼女の指先は少し冷えていたけれど、手を重ねているうちに、ゆっくりと温かくなっていく。
俺たちはそのまま、屋敷へ到着するまで穏やかな時間を過ごした。
◇
パウリー公爵邸へ戻ると、夕方の庭園には柔らかな光が差し込んでいた。
俺はリビアと別れて着替えを済ませ、夕食の準備状況を確認するために食堂へ向かった。
朝に確認した花器については、担当者から特に問題がなかったと報告を受けた。
食卓の配置も予定どおり進み、夕食の準備に支障はないらしい。
俺はその説明を聞き、確認表へ記録を残した。
「ありがとうございます。今日の準備に問題がないなら、予定どおり進めてください」
担当者は頷き、ほかの使用人たちと準備を続けた。
俺はその様子を見ながら、今日の学院で学んだことを思い返していた。
担当者同士で相談すること。
必要な情報を共有すること。
分からないことを、適切な相手へ確認すること。
どれも特別なことではないのかもしれない。
けれど、実際に仕事を進める中では、そうした基本がとても大切なのだろう。
しばらくして、父さんが食堂へ入ってきた。
「セス、今日の学院はいかがでしたか」
「今日は、複数の担当者が関わる仕事について考える授業だったんだ。誰が何を確認するべきかとか、どこまで担当者同士で決めていいのかとか、いろいろ話し合ったよ」
俺が説明すると、父さんは興味深そうに頷いた。
「それはよい経験ですね。実際の仕事でも、担当者同士の連絡がうまくいかなければ、全体の進行に影響が出ますから」
「うん。今日はリビアにも相談して、変更がほかの人へ影響するかどうか考えることが大切だって教えてもらったんだ」
俺がそう言うと、父さんは少しだけ目を細めた。
「なるほど。オリビアお嬢様にも相談したのですね」
「うん。俺だけでは気づかなかった考え方だったから、聞いてよかったよ」
父さんは穏やかに微笑んだ。
「それなら、オリビアお嬢様もお喜びになったでしょう」
「……うん。すごく嬉しそうだった」
俺が答えると、父さんは小さく笑った。
「そうでしょうね。お嬢様は、あなたがご自分を頼ってくれることを、何より嬉しく思っていらっしゃるようですから」
俺は少し照れくさくなりながらも、静かに頷いた。
リビアが俺を大切に思ってくれていることは、昔から知っている。
けれど、最近はその気持ちを以前よりもはっきりと感じることが増えた。
俺も、彼女の気持ちにきちんと応えられるようになりたい。
そんなことを考えながら、俺は夕方の仕事を続けた。
◇
夜、仕事を終えて自室へ戻ると、窓の外には静かな庭園が広がっていた。
月明かりが木々の葉を淡く照らし、遠くからは風が枝を揺らす音が聞こえてくる。
俺は机へ向かい、今日の授業で書いたノートを開いた。
そこには、担当者同士の連絡や、判断する範囲について考えたことが整理されている。
俺はその内容を読み返しながら、今日一日の出来事を思い返していた。
朝は、食堂の花器について担当者へ相談した。
学院では、友人たちと一緒に考え、分からないことを確認した。
そして、リビアにも相談し、自分だけでは気づかなかった考え方を教えてもらった。
(……俺は、まだまだ誰かに頼ることに慣れていないのかもしれない。でも、こうして少しずつ相談できるようになっていけば、もっといろいろなことを学べる気がする)
そう考えていると、扉の外から控えめなノックが聞こえた。
「セス、少しだけお時間をいただいてもよろしいかしら」
リビアの声だった。
俺は立ち上がり、扉を開けた。
「もちろん。どうしたの?」
リビアは少し照れたように微笑んだ。
「今日、あなたが私に相談してくれたことを、もう一度お礼を言いたくて」
俺は思わず苦笑した。
「リビア、そんなにお礼を言わなくてもいいのに」
「だって、嬉しかったのだもの」
彼女はそう言ってから、少しだけ頬を赤くした。
「……それに、朝は少しだけ拗ねてしまったでしょう? あのことも、ちゃんと謝りたかったの」
俺は彼女の言葉を聞き、静かに首を横に振った。
「謝らなくていいよ。リビアが俺を頼ってほしいと思ってくれること、俺は嬉しいから」
リビアは少し驚いたように目を見開いた。
それから、ゆっくりと微笑んだ。
「……ありがとう、セス」
俺たちは部屋の中で向かい合い、しばらく今日の出来事について話した。
リビアは午前の授業で考えたことをもう少し詳しく説明してくれたし、俺も自分の班で出た意見を伝えた。
話しているうちに、互いの考え方の違いが少しずつ分かってきて、それが何だか楽しかった。
やがて、リビアは少しだけ身を寄せ、俺の手へそっと触れた。
「……ねえ、セス」
「うん?」
「これからも、私に相談してくれる?」
俺は彼女の目を見つめ、静かに頷いた。
「もちろん。リビアにも、これからたくさん相談すると思うよ」
彼女は安心したように微笑んだ。
「……それなら、よかったわ」
俺たちは自然に手を重ねた。
リビアは俺の手を握りながら、少しだけ嬉しそうに目を細めた。
「……でも、セス」
「何?」
「私、あなたがほかの方々を頼るところを見るのも嬉しいけれど……やっぱり、私のこともたくさん頼ってほしいの」
その言葉に、俺は思わず笑ってしまった。
「うん。分かってるよ」
俺がそう答えると、彼女は満足そうに微笑んだ。
しばらくの間、俺たちは静かに手をつないでいた。
窓の外では夜の風が木々を揺らし、部屋の中には穏やかな時間が流れている。
やがて、リビアは名残惜しそうに手を離し、自室へ戻るために立ち上がった。
俺は扉まで見送り、彼女が廊下の向こうへ歩いていく姿を見届けた。
部屋へ戻ると、机の上には今日の授業のノートが開かれたままになっていた。
俺はそこへ視線を向け、ゆっくりと微笑んだ。
(……明日も、分からないことがあったら誰かに相談してみよう。きっと、一人では気づけないことが見つかるはずだ)
俺はノートを閉じ、明日の準備を整えた。
公開講習の役割は、まだ決まっていない。
けれど、どのような役割になったとしても、今の俺なら以前とは違う考え方で学べる気がする。
そのことを少し楽しみに思いながら、俺は部屋の灯りを落とした。




