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最弱生命に転生した俺、死ぬたび進化スキルを継承して46億年後の最強種を目指す  作者: 真々


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第14話 白い海の底で、初めて敵を喰った

開いた流れの奥へ、俺は踏み込んだ。


逃げ続けた海の、いちばん濃い底。古き王の圧が流れ出してくる、その源へ。光は硬い縁の内側に庇ったまま、俺は一歩ずつ、白の濃さが増していく方へ進んだ。逃げるのはもう終わりだと、自分に言い聞かせながら。


だが、待っていたのは歓迎じゃなかった。


濃い白の中から、いくつもの輪郭が滲み出てくる。古き王の配下だ。俺よりずっと大きく、この濃さの中でも平然と漂っている連中。それが、四方から俺を取り囲んだ。


【周囲に敵性反応:複数】


 


囲まれた、と思った瞬間、一体が突っ込んできた。


避けきれない。強くなったとはいえ、体はまだ不安定だ。動きの一つ一つに、崩れかけの軋みがついて回る。硬い縁で受けても、大きさの差はどうにもならない。


そのときだった。


――左。


膜の奥で、欠片が鋭く弾けた。ひと言。それだけだ。だが、意味ははっきりしていた。俺は考えるより先に、体を左へ滑らせる。直後、さっきまで俺がいた場所を、別の一体が突き抜けていった。


読まれていた。俺の位置も、敵の動きも。危険の方向を指すだけだったこいつが、今は「どっちへ逃げろ」まで教えてくる。


「……助かる」


礼を言う暇もなく、次が来る。左、と欠片が弾け、俺は従う。右、と弾け、また従う。二体、三体の突進を、紙一重でいなしていく。だが、それだけだ。避けているだけでは、いつか捕まる。囲みは狭まる一方で、逃げ場は削れていく。


避けるだけじゃ、詰む。


耐えるだけでは詰んだ。最強にすがっても詰んだ。同じことを、また繰り返すのか。


 


いや――と、思考が止まった。


ふちの白毒が、さっきより濃い。俺が下がるたび、囲みは俺を、より濃い底の方へ追い込んでいる。連中にとっては、そこが仕留め場のつもりなんだろう。逃げ場のない、いちばん濃い場所。


だが。


濃い層のふちでも、俺は息ができる。化け物ルートで、そういう体になった。硬い縁は、白毒の濃さに少しだけ耐える。――こいつらは、どうだ?


平然と漂っているように見えて、こいつらの居場所は、この濃さの「手前」までだ。もっと濃い底へは、来ていない。


追い込まれているんじゃない。追い込める。


「……そっちが仕留め場のつもりなら」


俺は、逃げるふりをして、いちばん濃い底へ自分から潜った。一体が、勢いのまま追ってくる。濃い、濃い、もっと濃い。俺の縁が軋む。だが、保つ。


追ってきた一体の輪郭が、濃さの中で、ぐにゃりと歪んだ。


【敵性反応:活動低下】


効いてる。俺が耐えている濃さに、こいつは耐えられない。さっきまでの勢いが嘘のように、動きが鈍り、輪郭がほどけかけていく。環境そのものを、盾じゃなく、刃にする。逃げ込む場所を、狩り場に変える。


 


弱った一体に、俺は初めて、自分から寄っていった。


避けるためでも、守るためでもない。喰うためだ。


硬い縁を伸ばし、ほどけかけた輪郭に触れる。取り込む、と念じた瞬間、体がその大きな輪郭を、内側へ引きずり込み始めた。共生候補を迎えたときとも違う。あれは招き入れた。これは、奪っている。


【外部要素を取り込み中】

【白毒変換:素材を確保/出力さらに上昇】


流れ込んでくる。相手の輪郭が、活動力に変わって、俺の中に溶けていく。強くなる感触が、はっきりとあった。喰った分だけ、俺は濃さに強くなる。喰うほど、この海で動けるようになる。


――うまい、と思ってしまった。


嫌悪と、それを裏切る快感が、同時に来た。命を奪って、糧にして、それを「うまい」と感じている自分がいる。喰われるだけだった俺が、喰う側に回って、あろうことか、それを気持ちいいと思っている。


残りの連中は、仲間が溶かされるのを見て、濃い底へは追ってこなかった。囲みが、ほどけていく。攻略した。逃げ切ったんじゃない。喰って、退けた。


 


濃い底で、俺は一人、静かになった輪郭を確かめる。


強くなった。守る力も、また増えた。光をもっと長く庇える。それは、いいことのはずだった。


なのに、背筋のようなところが、ざわついて止まらない。


平然と濃さの中を漂い、弱いものを喰らって君臨する――それは、俺が「ああはなりたくない」と思ってきた、あいつの姿だ。古き王の。喰う側に回った今の俺は、あいつに、一歩近づいたんじゃないのか。


欠片は、何も言わなかった。ただ、俺の内側で、静かに気配を潜めている。喰うことを止めはしなかったこいつも、今の俺を、どう記録していいか決めかねているみたいだった。


硬い縁の内側で、光が小さく揺れている。守るために強くなったはずだ。守るために、喰ったはずだ。それなのに――強くなるほど、俺は、俺が守りたいものから、遠い何かになっていく気がした。

第14話は、逃げる・耐える・守るだけだった主人公が、初めて「喰う」側に回る回でした。囲まれ追い詰められた末に、主人公は白毒の濃さを――逃げ場ではなく武器として使います。自分だけが耐えられる濃い底へ敵を誘い込み、弱らせ、取り込む。攻略方法が、逃走から利用へ。欠片も「左」と初めて戦いを助けてくれます。ですが、喰うことを「うまい」と感じてしまった自分に、主人公は戸惑います。守るために強くなったはずが、その手段は、いちばんなりたくなかった古き王の論理に近い――強くなるほど、守りたいものから遠ざかる気がして。次話もご期待ください。

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