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処刑台のワンオペ聖女〜神ペンで推しとブラック職場を改善します〜  作者: みねバイヤーン(石投げ令嬢フルカラー電子コミック①②発売)


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【7】国王の呪いを強引に解きます

 息子なんだから、堂々と王宮に行って「父に会わせてくれ」と言うのかと思いきや、こっそり潜り込むことになった。


「クモの巣だらけですまない」

「いえ、大丈夫です。見えますか?」


 薄暗い地下通路を、羽根ペンを光らせてふたりで歩く。塔の地下に国王の私室に通じる秘密通路があったのだ。


 長らく誰も通ったことがないようで、クモの巣だらけだし、空気がホコリっぽい。足の裏が痛くなるぐらい歩くと、はしごがあった。ひたすら上って手の皮がむけそうになった頃、やっとたどり着いたらしい。


 アトラスが小さな扉を開け、先に中に入り、私に手を貸してくれた。

 静かな部屋だ。豪華絢爛ではなく、趣味のいいものが少しだけ置いてある。


 アトラスがベッドに近づくと、目をつぶっていた男性が目を開けた。


「お、おお。アトラス、塔から出られたのか」

「父上。はい、この通り、すっかり元気になりました。あの秘密の通路を歩いて来れるぐらいまで」


 国王が私のことを見る。さっとカーテシーをした。


「父上、俺の命を救ってくれたマリエラです。マリエラが発見したことをご覧いただけますか」


 スマートグラスをかけ、壁に今まで撮ってきた映像を流す。


 神殿長が寄付金を横領していること。魔導研究所がブラック職場で真面目に働く魔導士ほど搾取されていること。


 そして、所長とゆかいな仲間たちがアトラスの魔力で私腹を肥やしていたこと。


「なんと、そなたを閉じ込めた塔で魔力を貯め、それを民のために使うのではなく魔石にして他国に売っていたというのか」


「はい、父上。それだけではありません。聖女であった母上を利用した上に死に追いやり、俺を魔王討伐に追い立て、聖女マリエラを無実の罪で処刑しようとした。これらにも所長たちが関わっています」


 国王は深々とため息を吐いた。


「そうか。所長だけでそのような大それたことができるわけもない。残念だが、所長の後ろにはあれがいるのだろうな」


「王妃と、おそらくエリオット兄上も」


 しおれていた国王がさらにくたびれて見える。枯れかけのサボテンみたい。


「許せ、アトラス。ワシの力が足りないばかりに、お前とお前の母、そしてマリエラまで苦境に追い込んでしまった。この、この体がもう少し言うことを聞けば」


 国王は何度も自分の胸を叩く。枯れ枝のような腕が弱々しく胸を打つたびに、黒い何かが国王の体から雫のように飛び散る。


「ひょっとして、陛下の病気は呪いでは?」


 頭に浮かんだことをそのまま口に出してしまった。慌てて口を閉じたけど、アトラスは聞き逃さなかった。


「マリエラ、何か見える?」

「はい。以前小さな呪いに侵された人を見たことがあります。そのときは、聖水を何度も飲ませて癒しをかけたら治りました。陛下の呪いはその人よりはるかに大きいです。でも、聖水を試してみませんか」


「試してみよう。神殿に遣いを──」

「いえ、すぐに取りますね」


『ワールド・エディター、どこでも扉』


 現れた扉を開き、神殿の女神像のところに行き、聖水と魔石をもらう。


「あら、女神様がなんだか薄汚れているような。あ、ひょっとして誰もお清めしてないんじゃ。どうしよう」


 ちょっと考え、先に陛下を癒すことにした。


「女神様、陛下を治したらすぐに戻ってお清めします。もう少しだけお待ちくださいませ」


 丁寧にお辞儀をし、聖水と魔石を持って陛下のところに戻る。


「今のは」

「父上、聖女マリエラの奇跡です。深く考えてはいけません」

「そうだな」


 頷き合っているふたりの前に聖水を運ぶ。


「こちらを飲んでいただけますか?」


 聖水をコップに入れて陛下に飲んでもらっては、聖女の癒しをかける。

 何度も繰り返し、陛下がうぷっとなってきても、呪いは消えない。

 

 なんてしつこい呪いなんだろう。どうしよう、何かいい方法はないかな。考えろ、思いつけ、何かあるはずだ。


 神ペンがうずうずしてるかのように手の中で震えた。


「分かった。これだ」


『ワールド・エディター、エリクサー』


 聖水を入れたコップにエリクサーと書く。コップが神々しく光り輝いた。


「これで効くはずです。飲んでくださいませ」


 エリクサーが陛下の体にしみわたっていくのが見える。


「痛いの痛いの飛んでいけ。悪いの悪いの飛んでいけ。陛下を呪った人に倍返し。えーい」


 陛下の体から黒いものが飛び出し、渦を巻いてどこかに飛んでいく。


 神殿の金貨と魔導研究所の顔文字から、映像が入ってきた。スマートグラスを通して壁に映しだす。


「あ、神殿長がしおしおになっていきます」

「所長と仲間たちが苦しんでいる」

「王妃とエリオット。やはりか」

「新聖女セレーナもですね」


 私たちは、陛下を呪った人たちが苦しむのをいつまでも見ていた。 

 念願のざまあなのに、あんまり心は晴れなかった。

 まだ、苦しんでいる人がたくさんいるからかもしれない。


「王国を建て直さねばならない。アトラス、聖女マリエラ。力を貸してくれないか」

「父上、喜んで」

「私にできることであれば。なんなりとお申し付けください」


「聖女マリエラにできないことなど、想像できないが」

「確かに。あ、マリエラ、危ない」


 体から力が抜けた。アトラスに受け止められたところで、私は意識を手放した。


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