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【第2章完結】異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜  作者: 花村しずく
2-04透輝の爪飾り

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208. 暴露大会

 少し間を置いて、エリアスが軽く喉を鳴らす。


 「……ところで」


 皆の視線がそちらに向く。


 エリアスは、どこか困ったような笑みを浮かべて言った。


 「ツムギ。ひとつ聞いてもいいか?」


 「うん?」


 「なぜ急に、その前の星の記憶の話をしてくれたんだ?」


 腕を組み、少し首を傾げる。


 「いや、信頼してもらえているのは純粋に嬉しいんだが……正直、少し急でね。心の準備が追いついていない」


 その言い方に、テーブルから小さな笑いがこぼれた。


 


 ツムギは、少し考えるように視線を落とす。


 「……うーん」


 言葉を探しながら、ゆっくりと話し始めた。


 「実はね、言うぞ!って思って言ったわけじゃないの」


 皆が静かに耳を傾ける。


 「もちろん、ずっと胸のどこかに引っかかってはいたんだ。いつか話した方がいいのかなって、何度も思ってた」


 指先で、おにぎりの包みを軽く折る。


 「でも、今日この梅を食べたときにね……ふっと、懐かしいなって思ったの」


 顔を上げて、少し照れたように笑う。


 「それで、その懐かしいっていう気持ちを、みんなに話したくなったんだと思う。知っておいてほしいなって」


 そのとき。


 「はい!」


 元気な声とともに、ハルが勢いよく手を挙げた。


 「僕、それわかる!」


 皆がくすっと笑いハルの方を向く。

 ハルは少し身を乗り出しながら、言葉を選ぶように続けた。


 「ツムギお姉ちゃんってさ、何か話すときに、ちゃんと考えてから言うっていうより……思ったことを、そのまま言葉にしたいタイプでしょ?」


 ツムギが少し驚いた顔をする。


 「でも、その話をするためには、先に知っておいてもらわないと伝わらないことがあったりする」


 ハルは指で空中に線を描くようにしながら言う。


 「それが、あんまり人に話さないほうがいいことだったりすると、言っていいのかなって迷っちゃうんだよね」


 少し考えてから、にこっと笑った。


 「でも、別に何かしてほしいわけじゃないんだよね?」


 ツムギを見て、首をかしげる。


 「ただ、そうなんだよって知っておいてほしいだけ、みたいな」


 


 ツムギは、一瞬ぽかんとしたあと――


 ふっと笑った。


 「……うん。たぶん、それ」


 ハルは満足そうに頷く。


 「だよね!」


 そのやり取りを聞いていたリナが、腕を組みながらふむふむと頷いた。


 「なるほどなぁ」


 少し感心したような声だった。


 「確かに、その人が何に喜んで、何に悲しんで、何を面白いと思うのか。そういうの知っといた方が、何気ない一言でも、その人の気持ちをちゃんと理解できたりするもんな」


 ツムギの方を見て、やわらかく笑う。


 「自分の中の一番柔らかいところを見せるのって、結構勇気いるやろ?」


 「……うん」


 ツムギが小さく頷く。


 「でも、それを知らんままやと、悪気なくても、何気ない一言で相手を傷つけてしまうこともある」


 リナは肩をすくめた。


 「そう思うと、ツムギが話してくれたの、ありがたいわ」


 にっと笑う。


 「また一つ、ツムギマスターになれた気分や」


 その言い方に、テーブルから笑いがこぼれる。


 「確かに!」


 ナギが手を叩く。


 「ツムギの理解度、また一段階アップだね!」


 エドも笑いながら頷く。


 「人の背景を知るのって、大事ですよね」


 エリアスも静かに同意する。


 「人は、今見えている部分だけで出来ているわけではないからな」


 


 わいわいとした空気が広がる中――


 バルドが、ぐいっと果実水を飲み干した。


 そして、どんと胸を叩く。


 「よし!」


 突然の宣言に、皆がそちらを見る。


 バルドは、にやりと笑った。


 「では次は、わしの秘密でも話すとするかのう」


 「え?」


 「なになに?」


 興味津々の視線が集まる。


 バルドは、ゆっくりと顎ひげを撫でながら言った。


 「実はな――」


 少し間を置いて、


 「わしは昔……」


 ぐっと身を乗り出す。


 「甘い菓子が、まったく食えん男だったのじゃ」


 一瞬の沈黙のあと――


 「えぇぇぇぇぇ!?」


 部屋が、どっと笑いに包まれた。


 それをきっかけに――


 なぜかその夜は、自然と暴露大会のような流れになった。


 ナギが子どもの頃に失敗した大事件の話。

 エドが昔、貴族学校でやらかした恥ずかしい失敗。

 リナの商売修行時代のとんでもない値切り交渉。

 バルドの若い頃の研究暴走事件。


 誰かがひとつ話すたびに、別の誰かが「それなら私も」と続ける。


 笑い声が絶えない。


 皿の上の料理は少しずつ減り、果実酒のグラスは何度も満たされる。


 POTEN創舎の夜は、にぎやかで、あたたかく、そしてどこか安心できる時間になっていた。


 そんな中。


 ふと、イリアがツムギに視線を向けた。


 「ツムギ」


 いつもの落ち着いた声だった。


 「安心しなさい」


 ツムギが顔を上げる。


 「ここにいるメンバーに、あなたの秘密を軽々しく外で話すような人間はいないわ」


 穏やかな言葉だったが、その響きには確信があった。


 ツムギは一瞬きょとんとして――


 それから、にこっと笑った。


 「ありがとうございます」


 そして、少し首を振る。


 「でも、大丈夫です」


 皆の顔を見渡す。


 「私は、このメンバーを信頼してますから」


 言葉は、静かだった。


 「もしみんなが、誰かに話した方がいいなって思うことがあったら、話してくれていいと思ってます」


 少しだけ照れたように続ける。


 「きっと、そういう状況になった時は……話すべき場面なんだと思うから」


 イリアは、ふっと口元を緩めた。


 「なるほどね」


 腕を組む。


 「それぞれの判断に任せる、ということね」


 少しだけ肩をすくめる。


 「それなら、私もその信頼に足る人間でいないといけないわね」


 ほんの少し、冗談めかした調子だった。


 「もー!イリアさん!」


 ツムギが思わず笑う。


 その横で、ジンは頭を抱えている。


 「いや、俺はノアには話すからな!」


 突然の宣言に、皆が吹き出す。


 ジンは真剣な顔で続ける。


 「家に帰ったらすぐ話す! むしろこれを黙ってたことを知られたら……その方が後が恐ろしい」


 「それは確かに」


 リナが苦笑する。


 ツムギも、けらけら笑った。


 「だよね!」


 肩をすくめる。


 「私もきっと、“なんでもっと早く言わないの!”って怒られる気がする」


 テーブルの上には、まだ笑い声が続いている。


 新しい秘密も、昔の思い出も、

 全部ひっくるめて。


 この場所は、今日もあたたかかった。


 こうして――


 POTEN創舎、初めてのバザールの打ち上げの夜は、ゆっくりと更けていった。

ツムギの物語は水曜日と土曜日、ハルの物語は月曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

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⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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