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『あの日、君が祈っていたこと』  作者: 整備士
さよならは、また逢う日まで
29/36

EP29 秘密基地

「で、どこ行く?」


「……え?」


「今日、加奈が遊ぼうって言ったんだろ?」


「あ、うん。そうだけど……」


 小学四年生になった春。


 加奈が初めて、自分から俺を遊びに誘ってきた。


 いつもは俺が誘うばかりだったから、ちょっと驚いた。


「何かやりたいことあるのか?」


「……特には」


「なんだよ、それ!」


「だ、だって……」


 加奈は少し困った顔をして、それから小さく笑った。


「陽一くんと遊びたかっただけだから」


「そっか! じゃあ探検しようぜ!」


「……探検?」


「まだ行ったことないところ!」


「ええっ?」


「よし、出発!」


「ちょっと待って! どこ行くか決めてからにしようよ!」


「歩きながら決める!」


「それ、迷子になるやつだよ!」


「冒険って言うんだよ!」


「前もそう言って迷子になったよね!?」


 加奈が何か言っていたけど、とにかく出発した。


 俺たちはいつもの道を外れて、町外れの神社へ向かった。


 夏になると祭りが開かれる、小さな神社だ。


 普段は人も少なく、境内には大きな木が何本も生えている。


「なあ、加奈。あっち行ったことある?」


「どっち?」


「神社の裏」


「ないけど……」


「じゃあ決まり!」


「えっ、何が!?」


 俺は境内の奥へ走った。


「あっ! 待ってよ!」


 加奈が慌てて追いかけてくる。


 木々の間を抜けたところで、俺は足を止めた。


「……おっ?」


「はあ、はあ……もう、陽一くん、速い……」


「見ろよ、あれ!」


「……何?」


 木の陰に、古い小屋があった。


 木造の、今にも壊れそうな倉庫。


 扉は少し傾いていて、壁には蔦が絡まっている。


「すげえ! 秘密基地みたいじゃん!」


「……倉庫じゃない?」


「分かってねえなあ、加奈は!」


「何が?」


「こういうのがいいんだよ!」


「……そうなの?」


「そうなの!」


 扉を押すと、ぎい、と音がした。


「おおっ、開いた!」


「陽一くん、気をつけてね」


「大丈夫だって!」


「前もそう言って転んだよね?」


「……いつの話だよ」


「先週」


「最近だった!」


 中は薄暗かった。


 古い提灯や木箱、ほうきなんかが積まれている。


 祭りの道具をしまっているらしい。


 埃っぽい匂いがして、加奈がくしゃみをした。


「くしゅんっ!」


「大丈夫か?」


「うん……ちょっと埃が……」


「おっ! なんかあるぞ!」


「陽一くん、話聞いてる?」


 奥の木箱の上に、古いお菓子の缶が置いてあった。


 開けると、中にはビー玉や短い鉛筆、変な形の石ころが入っている。


「これ、宝物じゃね?」


「……誰かの?」


「たぶん!」


 木箱の隙間には、古い漫画も挟まっていた。


「おお! 漫画まである!」


「ほんとだ」


「昔、ここで遊んでたやつがいたんだな!」


 なんだか、すごいものを見つけた気がした。


 知らない誰かの秘密基地。


 俺たちが生まれる前から、ここにあったのかもしれない。


「……あっ!」


 もう一冊、本が挟まっていた。


「なんだこれ?」


 引っ張り出してみる。


 漫画より少し大きい雑誌だった。


 表紙には、ほとんど下着姿の女の人が写っていた。


「……?」


 俺は首を傾げた。


「なんでこの人、裸なんだ?」


「えっ?」


 加奈が横から覗き込んだ。


「…………っ!?」


「なあ、加奈。なんでだと思う?」


「だ、ダメーッ!!」


「うわっ!?」


 突然、加奈が叫んだ。


「そ、それ! 見ちゃダメ!」


「なんで?」


「だ、だから……!」


 加奈の顔が、みるみる赤くなっていく。


「それ、大人が読む本だから!」


「大人?」


「そう!」


「じゃあ父ちゃんが読むやつ?」


「そ、そういう意味じゃないの!」


「じゃあなんで裸なんだよ?」


「わ、わたしに聞かないで!」


「加奈も知らねえの?」


「知らない!」


「じゃあ中を見れば分かるんじゃね?」


「ダメーッ!!」


 加奈が飛びついてきた。


「うおっ!? 何すんだよ!」


「しまって! 早く!」


「分かった! 分かったから押すなって!」


 俺は慌てて雑誌を木箱の奥に押し込んだ。


 加奈はそれを確認すると、ほっとしたように胸を撫で下ろした。


「……もう! 陽一くんのバカ!」


「なんで俺が怒られてんだよ!」


「知らない!」


「知らないって、お前……」


 女の子って、たまによく分からない。


 少なくとも、このときの俺には、加奈があんなに慌てた理由がさっぱり分からなかった。


*


「よし! 決めた!」


「今度は何?」


「ここ、俺たちの秘密基地にしようぜ!」


 加奈が目を丸くした。


「……秘密基地?」


「そう! ここなら誰も来ねえし!」


「……二人で?」


「おう!」


「……二人だけの?」


「当たり前じゃん!」


 加奈はしばらく俺を見つめていた。


 それから、嬉しそうに笑った。


「……うん!」


「じゃあルールを決めよう!」


「ルール?」


「秘密基地にはルールが必要なんだよ!」


「……誰が決めたの?」


「俺!」


「ふふっ。そうなんだ」


 俺は木箱にあった紙と鉛筆を借りて、文字を書いた。


『ひみつきちのルール』


 一、ほかのやつにはないしょ。


 二、おかしをもってくる。


 三、ゴミはもちかえる。


「どうだ!」


「……二番目、陽一くんがお菓子食べたいだけじゃない?」


「お菓子のない秘密基地なんて秘密基地じゃねえ!」


「そんなことないと思うけど……」


「じゃあ加奈も何か書けよ!」


「えっ、いいの?」


「二人の基地だろ?」


「…………」


 加奈は少し考えてから、鉛筆を受け取った。


 そして、丁寧な字で一行書き足した。


『四、ふたりでなかよくする。』


「……これ、必要か?」


「えっ?」


「だって、そんなの当たり前じゃん!」


「…………」


「加奈?」


「……ううん」


 加奈は嬉しそうに笑った。


「そうだね。当たり前だよね」


「おう!」


 こうして、俺たちの秘密基地が完成した。


 最初の仕事は掃除だった。


「陽一くん、そこにも埃あるよ」


「分かってるって!」


「ほら、こっちも」


「……なあ、加奈」


「何?」


「秘密基地って、こんなに掃除するもんなの?」


「汚いままじゃ座れないでしょ?」


「……そうだけどさあ」


「ほら、頑張って!」


「なんか学校みてえ!」


「ふふっ」


 結局、探検より掃除の方が長かった。


*


 その頃、テレビでは毎日のように戦争のニュースが流れていた。


 どこかで戦闘があったとか、政府が何かを発表したとか。


 難しい言葉ばかりで、俺にはよく分からなかった。


 ただ、夕飯の時間に父ちゃんがニュースを見るようになったことだけは、よく覚えている。


「父ちゃん、チャンネル変えていい?」


「まだニュース見てるだろ」


「アニメ始まるんだけど!」


「録画しとけ」


「今見たいんだよ!」


「陽一、父ちゃんの邪魔しないの」


 台所から母ちゃんの声が飛んでくる。


「えー!」


「えー、じゃありません」


「……ちぇっ」


 テレビでは、知らない土地の映像が流れていた。


 煙の上がる建物。


 慌ただしく動く人たち。


 父ちゃんは黙って画面を見ていた。


「……父ちゃん」


「ん?」


「戦争って、いつ終わるの?」


「……さあな」


「早く終わんねえかな」


 俺がそう言うと、父ちゃんは少しだけこちらを見た。


「……そうだな」


「だってアニメ見れねえし」


「お前なあ……」


 父ちゃんが呆れたように笑った。


 母ちゃんも台所でため息をついていた。


 俺は何か変なことを言ったのかと思ったけれど、よく分からなかった。


 そのときの俺にとって戦争は、テレビの向こう側で起きている、よく分からない出来事だった。


*


 五年生になっても、俺たちは秘密基地に通っていた。


 お菓子を食べたり、漫画を読んだり、宿題をしたり。


 ……いや、宿題をしたこともあった。


「陽一くん」


「何?」


「その計算、違うよ」


「えっ?」


「ここ」


「……あっ」


「さっきも同じところ間違えたよね?」


「……うるせえ」


「教えてあげてるのに!」


「はいはい、ありがとうございます」


「心がこもってない!」


 加奈は前よりずっとよく笑うようになった。


 昔は知らないやつに話しかけられるだけで、俺の後ろに隠れていたのに。


 今じゃ俺の宿題にまで文句を言う。


 ……成長って、恐ろしい。


 そんなある日のこと。


 俺は秘密基地の床に座り込んで、買ってきたお菓子を並べていた。


「……おかしい」


「何が?」


「お菓子が少ねえ」


「さっき買ってきたばっかりでしょ?」


「そうじゃねえよ! 百円で買える量が減ってんだ!」


「ああ……」


「前はもっと買えたのに!」


 加奈は袋を覗き込んだ。


「戦争の影響で、いろんなものが高くなってるんだって」


「……戦争?」


「うん。お母さんが言ってた」


「戦争って、お菓子まで巻き込むのかよ!」


「……そうみたい」


「くそっ! 許せねえ!」


「怒るところ、そこなんだ……」


「重大問題だろ! 秘密基地の存続に関わるぞ!」


「そんなに!?」


「ルールの二番目が守れなくなる!」


「……じゃあ、ルールを変えたら?」


「それはダメだ!」


「なんで!?」


「秘密基地の伝統だから!」


「作ったの陽一くんでしょ!」


「伝統は一日目から始まるんだよ!」


「何それ!」


 加奈が吹き出した。


「ふふっ……あははっ!」


「笑い事じゃねえって!」


「じゃあ今日は半分こしよ?」


 加奈は自分の持ってきた袋を開けた。


「ほら」


「……いいのか?」


「うん」


「……ありがと」


「どういたしまして」


 俺たちはお菓子を分け合った。


 いつもより少し少ない気がしたけれど、二人で食べるには十分だった。


*


 学校帰りに、例の三人組に呼び止められたのも、その頃だった。


「なあ、陽一!」


「何だよ?」


「最近、お前らどこ行ってんの?」


「秘密!」


「はあ!?」


「秘密だから秘密なんだよ!」


「加奈も一緒?」


「うん」


「二人だけ?」


「そうだけど?」


 三人が顔を見合わせた。


「……なあ」


「何?」


「お前ら、付き合ってんの?」


「はあ!?」


 思わず変な声が出た。


「付き合ってねえよ!」


「じゃあなんで毎日二人で遊んでんだよ!」


「楽しいからに決まってんだろ!」


「加奈も?」


「えっ!?」


 急に話を振られた加奈が、びくっと肩を揺らした。


「わ、わたしは……」


「ほら、どうなんだよ?」


「……た、楽しいよ」


「ふーん」


「……何?」


「いやあ?」


 三人が、にやにや笑っている。


「なんだよ、その顔!」


「別にー?」


 そのとき、ビートルズ好きの一人が、妙に落ち着いた声で言った。


「……愛とは、時に本人たちが一番気づかないものなのさ」


「また始まった!」


「ふっ。若いっていいねえ」


「お前も十一歳だろ!!」


「年齢なんてただの数字さ」


「前にも聞いたわ!!」


 そいつは満足そうに肩をすくめた。


「で、秘密の場所ってどこ?」


「教えねえ!」


「愛の巣かい?」


「違うわ!!」


 隣で加奈が、真っ赤になって俯いていた。


「……加奈?」


「な、何でもない!」


「顔赤いぞ?」


「陽一くんのせい!」


「俺!?」


 なんでだよ。


*


 秘密基地の場所がバレかけたこともあった。


 原因は、もちろんあの三人組だ。


「……なあ、加奈」


「何?」


「さっきから誰かついてきてねえ?」


「えっ?」


 振り返る。


 電柱の陰から、ランドセルが三つはみ出していた。


「…………」


「…………」


「……見えてるよな?」


「うん」


 俺たちが歩くと、電柱の陰から三人が出てきた。


 俺たちが止まると、三人も止まった。


 俺たちが振り返ると、三人が慌てて電柱に隠れた。


 ……いや、隠れきれてねえ。


「おーい!」


 呼びかけると、三人がびくっと跳ねた。


「何してんだよ!」


「べ、別に!」


「偶然だよ!」


「俺たちもこっちに用事があって!」


「何の用事?」


「…………」


 三人が顔を見合わせた。


「……散歩?」


「ランドセル背負って!?」


 ビートルズ好きのそいつが、静かに一歩前へ出た。


「……探偵という仕事はね、時に孤独なものなんだ」


「三人いるだろ!!」


「君はまだ、人生の奥深さを知らない」


「お前は宿題の奥深さを知れ!!」


 加奈が隣で吹き出した。


「ふふっ……!」


「加奈! 笑ってないで助けてくれ!」


「だ、だって……あははっ!」


 結局、俺たちは神社とは反対方向へ歩いて三人をまいた。


 その日は秘密基地へ行けなかった。


「……ちくしょう」


「ふふっ。残念だったね」


「何笑ってんだよ」


「だって、陽一くん、ずっと怒ってるんだもん」


「加奈は悔しくねえの?」


「うーん……」


 加奈は少し考えた。


「……今日は、いっぱい歩けたから」


「それがどうしたんだよ?」


「……陽一くんと」


「…………」


「……何?」


「いや、別に」


 なんだか、変な返事だった。


 でも加奈が嬉しそうだったから、まあいいかと思った。


*


 六年生になった頃には、学校でも少しずつ変化が出始めていた。


 授業は今までどおりだったけれど、放課後のクラブ活動が中止になった。


 先生は、授業が終わったら寄り道せずに帰るようにと、何度も繰り返していた。


「……なあ、加奈」


「何?」


「クラブなくなったのはいいけどさ」


「うん」


「なんで宿題は減らねえんだ?」


「……そこ?」


「だっておかしいだろ! 活動減らすなら宿題も減らせよ!」


「宿題は家でできるでしょ?」


「じゃあ秘密基地でやる!」


「寄り道しちゃダメって言われたばっかりだよ?」


「……じゃあ秘密基地が家ってことにしようぜ!」


「無理があるよ!!」


「じゃあ加奈の家!」


「なんでそうなるの!?」


「宿題教えてくれ!」


「最初からそれが目的でしょ!」


 結局、その日は加奈の家で宿題をすることになった。


 学校では先生が戦争の話をすることも増えていた。


 以前なら聞き流していたニュースも、友達との会話に出てくるようになった。


 それでも俺たちは、まだ普通に学校へ通っていた。


 給食を食べて、くだらないことで笑って、宿題を忘れて怒られる。


 放課後の時間が少し変わっただけで、毎日は相変わらず騒がしかった。


*


 六年生になると、周りの連中も俺たちのことをからかうのに飽きていた。


 ……と思っていた。


「陽一、今日も加奈と帰るの?」


「おう」


「はいはい」


「なんだよ?」


「いや、もう何も言わねえ」


「……?」


 何も言わないなら、最初から聞くなよ。


 それに、加奈だって少し変わった。


 昔は俺が手を引っ張って歩くことが多かったのに、最近は向こうから腕を引っ張ってくる。


「陽一、早く!」


「ちょっと待てって!」


「もう、遅い!」


「さっきまで加奈が遅かっただろ!」


「それはそれ!」


「何だよそれ!」


 それから、たまに妙なことを聞くようにもなった。


「ねえ、陽一」


「ん?」


「……髪、変じゃない?」


「髪?」


「うん」


「いつもと同じじゃね?」


「……今日は結び方が違うの」


「えっ?」


 よく見ると、確かに少し違う。


 いつもより高い位置で結んでいるらしい。


「……ああ、ほんとだ」


「…………」


「……どうした?」


「……別に」


「暑いから?」


「……もういい!」


「えっ!?」


 加奈はぷいと顔を背けた。


 なんだよ。


 髪の話だったんじゃねえのか。


 その日の帰り道。


 俺は何となく、加奈の髪をもう一度見た。


 淡い金色の髪が、歩くたびに揺れている。


「……なあ、加奈」


「何?」


「今日の髪、いいんじゃね?」


「…………え?」


「いや、いつもと違うやつ」


「…………」


「……加奈?」


「……うん」


 加奈は前を向いたまま、小さく答えた。


「……ありがと」


「おう」


 それきり、しばらく会話が途切れた。


 ……変なの。


 いつもなら、あんなに喋るくせに。


 でも。


 その日、加奈はずっと機嫌がよかった。


*


 ある日、秘密基地で漫画を読んでいると、加奈が急に言った。


「ねえ、陽一」


「んー?」


「中学生になっても、ここに来る?」


「来るだろ」


「……ほんと?」


「なんで?」


「だって、中学生になったら忙しくなるかもしれないし……」


「忙しかったら休みの日に来ればいいじゃん」


「……そっか」


「それにさ」


「うん?」


「加奈が来なくなったら、俺一人じゃん」


「…………」


「一人で秘密基地にいても、つまんねえだろ」


 加奈は漫画を閉じた。


「……陽一」


「何?」


「わたしがいなくなったら、寂しい?」


「……は?」


 何を当たり前のことを聞いてるんだ。


「そりゃ寂しいだろ」


「…………」


「加奈は寂しくねえの?」


「……寂しいよ」


「じゃあ決まりじゃん!」


「……うん」


 加奈は笑った。


 いつもみたいに大きな声で笑うんじゃなくて、なんだか大事なものを見つけたような顔で。


 俺は少しだけ、目を逸らした。


「……何だよ」


「何も言ってないよ?」


「いや、見てるから」


「見ちゃダメ?」


「……別に、いいけど」


「ふふっ」


「何笑ってんだよ!」


「なーんでもない!」


 ……最近、こういうことが増えた。


 加奈が笑う。


 俺が何か言う。


 すると加奈が、もっと嬉しそうに笑う。


 何がそんなに面白いのか、俺にはさっぱり分からなかった。


 でも、その笑い方は嫌いじゃなかった。


*


 中学生になっても、俺たちは一緒だった。


 制服が変わって、授業が難しくなって、帰る時間も少し遅くなった。


 それでも、帰り道が同じなのは変わらない。


 神社の裏の秘密基地にも、時々顔を出した。


 ただ、昔みたいに毎日遊んでばかりはいられなくなった。


 学校では相変わらず、放課後の活動に制限があった。


 ニュースをつければ戦争の話ばかりで、店に行けば前より高くなったものが目についた。


 それでも、加奈と歩く帰り道だけは、昔とあまり変わらなかった。


 くだらないことで言い合って、笑って。


 たまに、どちらからともなく黙り込んで。


 そんなある日のことだった。


「陽一」


「ん?」


「今度の休み、空いてる?」


「空いてるけど」


「……海、行かない?」


「海?」


「うん」


「いいじゃん! 行こうぜ!」


「……ほんと?」


「何だよ。加奈が誘ったんだろ?」


「……そうだけど」


「じゃあ決まり!」


 加奈は嬉しそうに笑った。


「……うん!」

今回から物語の過去編での転換期になるため少しづつ不穏な空気を出していきたいと思ってます

ちなみにタイトルは高田梢枝の秘密基地です

世代的にエウレカセブンを見ていたのもあり久しぶりに視聴しようかと思いました

是非曲とアニメどちらも見てください

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