見えない敵との戦い 二十四
2026年9月25日
麻木はベランダに出ていた。とあるマンションの一室だった。ここは主人たちと暮らす住まいとは別のもので、仕事道具置き場として借りることになった部屋だった。自分で用意したわけではない。手荷物が増えてしまって、この荷物をどうしようかと考えたとき、思いきって田中に相談をした。そしたらすんなりと貸してもらったマンションだった。家賃は田中に渡していた。部屋は最近借りたばかりで、そこまで家具は置かれていない。自分で買った深緑色のソファーと白いテーブル。テーブルの足元には紙袋が置かれていて、麻木が借りたまま、返す相手がいなくなってしまった本が数冊入っていた。ここは思い出す場所にしたくて借りた部屋だった。
「変わらないといいな」
ベランダでたばこに火を点け、吸いながらベランダからの景色を見る。ところどころに見慣れない構造物が見える。この街のこれからはもっと良くなるだろうと麻木は思う。あの不自然に折れ曲がった塔や病院を飲み込む黒い球体を仲間が壊している。明日はあそこの中の一つを麻木たちが壊す予定になっていた。
「やらなきゃ死ぬ。もう俺も知られてる。だけど顔だけは知られてない。知ってる奴を全員葬ればいい」
もうすぐ仲間と別れがやってくる。だけどそれは肉体の死であって本当の死じゃない。またいつか会える。いつか来る仲間との別れ。思い出の場所を設えたかった。
「ぼーっとしていたら、おわり。死ぬ」
麻木は2本目のたばこに火をつけた。
空を見ると、空が緑色に染まっていくのが見える。これも影を悪用する集団がやっている。人を殺して魂を奪うためだ。このまま放っておけば3日後に雨が降るだろう。それが起こると交通事故が多発するようになる。車の魂を乱すための雨だった。
「必ず殺しますからね」
麻木は緑色に染まっていく空に、自らの影の力で作り出した強い閃光を投げつけた。それを合図にしたかのように、街のいたるところから次々と空に向かって閃光が飛んでいった。




