見えない敵との戦い 二十二
2026年9月24日
麻木は道の真ん中にいた。真ん中で車が来るのを待っていた。麻木がいたのは高速道路の真ん中だった。一時間ほどそうやって立っていたが、車が来ることはなかった。上り車線に麻木はいた。下り車線をみても車が来ることはなかった。
「このどうしようもない世界」
「ちょっとね、その大きな表現は何かな」
主人の声がした。自分の内側からした。
「これって夢みたいですけど現実なんですよね」
「そうだよ。じゃなきゃこうして俺の声が内側から聞こえるわけがない。夢だったら外から聞こえるから」
麻木はため息をついた。
「技の拡張試験。僕が試験を受けている立場。麻木君はペン。さ、走って。前に何かいる」
麻木は北上する形で走っていった。前に一台の車があった。壊れていて、もう身動きが取れないようだった。麻木が近づくと車から声が聞こえた。
「まだ…まだ…」
車はすでに無人となっている。一時間前に起こった事故だった。とうにケガ人は運ばれている。警官の姿はなかった。
「や…くるから気を付けて。腰痛めないように」
麻木は肩に掛けていた筒から太刀を取り出して身構えた。
車から黒い煙が立ち上る。それはみるみると形を変え、人のような姿となった。
影は麻木の姿を認識すると、ずる…ずる…と這うように近づいてきた。
「人じゃない。人じゃない。だからやれる!」
迫りくる黒い影に麻木は渾身の一撃を叩きこんだ。




