表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100日後に死ぬ僕  作者: 変愚の人
80/125

78日目

「何だっちゃ、相談事って」


翔琉が怪訝そうな顔をする。秀哉はというと、黙々と学食名物、大盛りスタミナ丼を食べていた。カッキーは静かにスマホを弄っている。


僕は辺りを見渡す。スマホは鞄の中だ。兄ちゃんに話が聞かれることはない。


「明後日、姉ちゃんの結婚式やろ?」


「うん、まあ。確か、秀哉とカッキーも呼ばれとったな」


カッキーが目線を上げる。


「翔琉は長年の付き合いやし、勇人の姉ちゃんについてもよう知っとるらしいけど……何で俺らもなん?しかも急やったし。

ご祝儀は不要って言われても、さすがに変やぞ」


「何か、理由があるんじゃなかと?」


秀哉に僕は頷いた。


「兄ちゃん、行方不明なんやけど……ひょっとしたら、明後日来るかもしれんと。

でも、俺らの前に顔を出すかは分からん。だから、兄ちゃんを捕まえるのに協力して欲しいっちゃ」


「何で捕まえないといかんの?まさか、指名手配犯とかじゃなかよね」


「実は……それに近いん」


3人の顔色が、さっと変わった。


「は!!?」


「話すと物凄く長くなるけん、ここでは詳しく言わん。ただ、兄ちゃんを捕まえんと、兄ちゃんは多分死ぬ。

警察にも親戚の人を介して相談しとる。警察も協力してくれるそうだっちゃ」


「ちょっと待て!?警察に任せればよかろうもん!?何で俺らまで!!?」


翔琉の叫びに、学食中の注目が集まった。僕は「静かに」と彼を座らせる。


「……幾つか理由があってそれは無理っちゃ。まず、警察でも信頼できるのは限られとる。ごく一部しか動けん。

第2に、大掛かりに動いたなら兄ちゃんは確実に逃げる」


「辰夫さんが?そこまで警戒心の強い人じゃ……」


「翔琉、今の兄ちゃんはお前が知る兄ちゃんじゃなか。東大卒の従兄弟すら振り回されるほどなんよ。できるだけ自然に、兄ちゃんに接触したい。だから実行する人数は少ない方がよか。

最後に、秀哉とカッキーのことは、兄ちゃんは知らん。だから、警戒されずに近付けるかもしれん」


「……写真は」


「これっちゃ」


秀哉とカッキーに、スマホの画像を見せる。


「やっぱ兄弟やから、少し似とるね」


「ただ、整形はしとると思う。実は美里が、ほんの少しだけヘルメット越しやけど顔を見たらしいっちゃ。

俺も兄ちゃんも奥二重やけど、今の兄ちゃんはハッキリとした二重。身体もかなり痩せてたらしい」


僕は、洋さんの知り合いというハッカーが作ったイメージ画像を見せた。


「大体こんな感じらしい。これに、何かしらの変装をすると思う」


「だが、もし変装を見破ったとしても、どうやってお兄さんを捕まえるん?」


「そこが問題なんやけど……ただ、兄ちゃんは姉ちゃんを見れる場所に来るはずっちゃ。

至近距離は無理でも、ある程度近くに来ると踏んどる」


「ある程度近く?」


僕は小さく頷いた。


「候補は幾つかあるけど、ホテルスタッフに成り済ますのは間違いなか。給仕かコンシェルジュ、あるいはハイヤーのドライバー。

一番ありそうなのは、給仕たい。服ぐらいはどうとでもするやろ」


「なぜそう言い切れるん?」


「コンシェルジュはスキルが要るらしいから、多分ホテル側に看破されるっちゃ。ドライバーも、本物をどうするかって問題がある。

一番ハードルが低いのは給仕っちゃ。それに、1回だけ近付けばよか。用が済んだら、とっとと逃げると思う」


「で、俺たちに何をしろと?」


「入口付近にそれっぽいのがいたら、そっと出て欲しいん。多分、実際に食事の皿は出さんと思う。出したとしても、翔琉たちがいる親族友人の席まで。

入口近くで、俺ら親族から離れた場所にテーブルをセットしといたっちゃ。特に秀哉とカッキーは、入口がよく見える位置にしとる。

実際に顔を見てる美里も近くに配置したから、見抜くのはできるんじゃなかとね」


「で、捕まえると?でも、向こうも無抵抗じゃなかよね?」


うーん、と翔琉が唸った。


「辰夫さん、腕っぷしはからきしやからなあ。ガタイのいい秀哉やすばしこいカッキーなら、どうとでもなりそうな」


「なるほど。で、捕まえたら」


「警察より先に俺に連絡して。信頼できる刑事さんに引き渡すから」


「そう上手く行くかねぇ」


カッキーの疑問はもっともだ。普通に逃げ切られる可能性はある。それでも、これが一番なんとかなりそうな作戦だ。

皆には言ってないけど、柏木さんには洋さん経由でこの上にホテルのカメラのハッキングもお願いしてある。

兄ちゃんがホテルに入ったら、その居場所はかなりの確率で分かる。……多分。


問題は、兄ちゃんが本格的に表に出始めたことだ。川口大臣に爆弾を送り付けた「サマー」は、確実に兄ちゃんだ。


幸い、洋さんによると警察は兄ちゃんに辿り着けてない。厳密には、善村刑事とその上司は、「サマー」が兄ちゃんだと上に伝えていない。

伝えたら警察は兄ちゃんを全力で捕まえようとするだろう。そしてそうなったら、川口大臣の身を守るために、事故に見せ掛けて消される可能性が高いとも聞いた。

警察はそんなことをしないと信じたいけど、「普通の警察はしなくても、川口の息のかかった奴が動くだろう」という。まるで映画か何かの世界だ。


そして、もっと問題なのは……宮東会。こっちは、「サマー」が兄ちゃんと知っている。

兄ちゃんを全力で消しに来るはずだ。柳澤がどうかは分からないけど……少なくとも、彼も味方じゃない。


奴らは、姉ちゃんの結婚式が明後日と知っているだろうか。もしそうなら……



ドクン



「ぐっ!!?」



胸が急に痛んだ。これは、気のせい?それとも……


とにかく、今の想像は、最悪だ。それだけは起きないことを、僕は心底願った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ