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100日後に死ぬ僕  作者: 変愚の人
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49日目

「……改めて厳しいな」


私は支局にあった地図を広げて呟いた。清原刑事が言っていたハッカー、柏木。その居場所と思われる住所を、改めて調べた。

場所は小倉の中心から少し外れた一軒家。ただ、周囲が田んぼで見晴らしが良すぎる。

つまり、誰かが来たらすぐに察知できるというわけだ。


連休中に行こうとも一瞬考えたが、地図を確認してやめていた。虎穴に入らずんば虎児を得ずというが、これは虎穴というよりは決して這い上がれない底無しの穴だ。さすがにそこまで無謀ではない。


清原刑事は、柏木とは面識があると言っていた。奇人の部類らしく、誰も寄せ付けない所があるという。

ただ、訪問したからといって攻撃するような男ではないとも言っていた。つまり、それが意味することは……


柏木は、宮東会……それも黒原派に軟禁されている、ということになる。


恐らくは生きている。ただ、何かをやらされてもいる。

それは辰夫の居場所を探ることなのか。それとも宮東会の金を守ることなのか。あるいは両方か。



一つ言えそうなのは、辰夫を救う鍵は、この男が持っているのであろうということだ。



昨日、勇人と電話で話した。辰夫が近くにいる可能性。そして、辰夫の過去についても話を聞いた。

勇人の言う通り、このまま辰夫を死なせるわけにはいかない。久しく会っていないとはいえ、彼は歳の離れた弟のようなものだ。まして、勇人の病気や巴の結婚式のこともある。


辰夫の居場所を知るなら、柏木には会っておきたい。彼の技術なら、辰夫がどこにいるのか掴めるかもしれない。

そして、彼が本当にやろうとしていることが何か、も。


ただ、この「牢獄」の突破方法は、私には皆目見当も付かない。

小一時間ほど地図を睨んで、私はしばらく考えるのをやめることにした。


「まーた難しい顔してやがんなぁ」


「……深沢支局長」


取材か何かの帰りらしい支局長が、ニヤニヤと私を見ている。


「どうせまたあのNTVの女のことでも考えてたんだろ?」


「違いますよ。関係のないことです」


「じゃあ宮東会だな」


全てお見通し、と言わんばかりに支局長が笑みを深める。


「まあ俺は関与しねえぞ。命知らずでも、功名心があるわけでもねえからな。

日々の紙面を埋められればそれでいいからな。宮東会は費用対効果が悪過ぎる」


「……それでいいんですか」


支局長から笑みが消えた。


「いいんだよ。それに、何事にも『旬』がある。宮東会はまだ『旬』じゃねえ」


「……『旬』?ニュースの、ですか」


一般的に、ネタが話題になる賞味期限を「旬」という。しかし深沢支局長のいう「旬」は、その意味とは違うようだ。


「そうだ。まだネタとして熟してねえ。下手に突っつかずとも、自然に地面に落ちる。大事なのは、いつ落ちたのかを察知することと、そのためにアンテナを張ることだ」


「……アンテナ」


私はハッとした。まさか。


「『XYZ』……!!」


深沢支局長の顔に笑みが戻る。


「これ以上は言わねえ。だから下手に動くな。放って置けば、そのうち事態は動き出す。

その時に先手を取れりゃいい。今は、今日の原稿を片付けることが大事だ」


そうか。支局長は支局長なりに「網」を張っていたわけだ。

とすれば、今私ができることは……


#


「で、俺のところに来たわけっちゃね」


「ええ。相談も兼ねてです。ここなら誰も来ないでしょう?」


清原刑事が苦笑する。


「まあ、一応個室あてがわれたからな。本当はそろそろ6人部屋に移りたか。退屈でいかんちゃ」


ベッドの側には投資本と四季報が積まれている。どうやら彼の趣味らしい。


「柏木は、何をさせられているんでしょう?」


「そりゃ辰夫の居場所を探っとるんじゃなか?柏木は辰夫の師匠の可能性があるたい。ある程度の癖とかは知っとるはずっちゃ」


「どうやって?」


「……どうやろね。マルウェア飛ばしてGPSからというのは難しか。辰夫はそんな間抜けな手には引っ掛からん。

とすると、防犯カメラなりをハッキングして……やろか。でも東海にいるなら、膨大な作業になるんじゃなかと?」


「もし近場にいると確信していたら?」


「……そこまでは手間じゃなかかもしれんけど……そもそも、まだ見付かってなかけん、意味のある推論じゃなかね」


……そうかもしれない。ただ、成果が出ないのに、いつまでも黒原派というのは柏木を拘束するだろうか?何かが変だ。


あるいは……既に一度辰夫を見付けて、見失っている?だとしたら柏木を縛り続ける理由も分かる。同じ方法で一度成功した、ということだ。


……では、何故見失った?



「あ」



私の脳裏に、ある考えが浮かんだ。これなのだろうか?


「どしたんね」


「……整形かもしれない」


「顔を変えた、ということっちゃ?」


「あるいは」


そう、これならカメラに映っても辰夫とは分からない。……そして、勇人すら彼を彼と認識できないかもしれない。

とすれば……既に彼は、私たちや勇人の周りの人間に接触している可能性がある。


勇人は今は自宅だ。だから辰夫が今接触しているとすれば、それは恐らく……

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