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100日後に死ぬ僕  作者: 変愚の人
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36日目

「うう……」


なんとも不快な気分で目が覚めた。手術の痛みとかはないのだけど、股間から繋がれた管が痛む。

何でも翌日朝まではこの「カテーテル」というのを挿入していないといけないらしい。

全身麻酔の後は筋肉が上手く働かないから、これで尿を外に出さないといけないのだという。


手術自体はあっさりと終わった。口に酸素吸入器みたいなのを当てられたと思ったら、一瞬で気を失い気が付いたらベッドの上だった。

手術自体は1時間もかからなかったという。脇と首筋にに分厚いガーゼが当てられているのが分かった。


母さんと巴姉ちゃんが随分と動揺した様子でいたけど、その時はそれほど不快でもなかった。

ただ、ぼんやりとしたまま一晩を過ごした後がこんなにしんどいとは思わなかったけど。


「おはよう。気分はどうかな」


笹川教授が朝の回診に来た。少し気分が悪いと告げると、「それは問題ない」とあっさり流された。


「リンパ節を取った影響は、むしろ退院後に出るだろうな。怠くなったり、術後脇が腫れたりする。

感染症にもかかりやすくなるから、細心の注意を払ってほしい」


「あの、股間のこの管は」


「ああ、後ですぐ抜くよ。今日は手術のリカバリーの日だから、できるだけ動かず楽にしてくれ。

ご親族以外の面会は明日からだから、もし友達とかいたら今のうちに連絡するといい」


回診が終わると、巨乳でギャルっぽい看護師さんがやってきてカテーテルをさくっと抜いた。

ぶっちゃけこのルックスの人だともう少し興奮するかと思ったけど、全く勃ちもしなかったのは……やはり自分が病気だという自覚があるからなんだろうな。

AVでよくあるナースもののシチュエーションが幻想であるのがよく分かった。入院していると、どうにも性欲も湧かないものみたいだ。


#


それにしても、入院生活は退屈だ。スマホをぽちぽちやってニュースやらツイッターを見ているのもすぐに飽きた。

スマホゲームも同じだ。あれは課金がたっぷりできる大人のためのものだ。僕にはどうにも楽しめない。

美里や翔琉、秀哉たちに入院の日程などを伝えてしまうと、すぐにやることがなくなった。


一応退屈を持て余すだろうと思って折り紙の本と和紙の折り紙一式を持ってきたけど……この脇の状態じゃ、上手く折れそうもない。本当に、ただ寝っ転がっているしかないみたいだ。



うつらうつらしていると、スマホが「ヴー」と震えた。……美里からだ。


「勇人、お疲れ様。気分はどう?」


あまりいい気分でもないけど「うん、元気だよ」と返した。するとすぐに返事が返ってくる。


「よかった。今昼休み。昨日の放課後、こんなの買ったんよ」


画像が一緒に送られてくる。見ると、髪の長い半魚人みたいな変な生き物のキーホルダーみたいだ。


「……何これ」


「アマビエっていうん。熊本県の妖怪なんやって」


「妖怪?何でそんなん買ったん?微妙っちゃ」


「疫病退散に加護があるんやって。勇人の病気は疫病じゃないけど、何かご利益あるかなって。それにかわいくない?」


ぷっと思わず噴き出した。これがかわいい?女の子の感性は僕にはよく分からないな。


「ちょっとしたブームなんよ?ださかわいいって」


「いやいや、それはないっちゃ。でもありがとな」


すぐに返事が返ってくる。美里なりに元気づけようとしてるんだろうな。

ちょっと気分が明るくなってきた。……あれ、洋さんからもメッセージが来ている。


「手術成功おめでとう。気分はどうだ?」


美里との会話の合間に返事を返していく。今、昼休みなのかな。新聞記者って忙しいはずだけど。


「大丈夫です。何かご用ですか?」


しばらく間があって、メッセージが送られてきた。


「大変申し訳ない。柳澤隆光の連絡先を教えて欲しい」


ぞわぞわっと身体に震えが来た。……何で?

確かに、洋さんには彼と会った話はした。もちろん、洋さんも「深入りはやめておこう」と言っていたはずなのに。


「何か用事でも」


「理由は聞かないでくれ。彼に会う必要がある。君のためでもあり、私のためだ」


……洋さんにも危険が迫っているんだ。僕は直感した。

でも、これを伝えたら……洋さんも危ない。……どうしよう。


「どうしたん?」


既読を放置されていた美里からメッセージが来た。僕は「何でもない、ちょっと待って」と返す。


僕は悩んだ。あの男は、危険だ。藤木先輩より、何十倍も。その気になれば人を殺すこともためらわない。

本物のヤクザは、ああいう人種なんだと思い知った。

そんな男と、今まで表の世界しか知らない……それも、ピカピカの表舞台しか知らない洋さんが出会ったら……彼はきっと、何もできない。


しかし、メッセージからは切迫したものも感じた。何が何でも柳澤に会わないとまずい。

洋さんはきっとその理由を教えないだろう。ただ、あれだけ頭のいい人だ。何の考えもなしに、あの男に会おうとするなんてあり得ない。何かあるはずだ。



10分ほど考えて、僕は答えを出した。スマホは母さんの電話番号を示している。まだ家にいるはずだ。




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