表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100日後に死ぬ僕  作者: 変愚の人
25/125

23日目

「……いつっ」


左手と右手の4本の指を使って、正方形の紙を折り畳む。まだ中指は痛むけど、多少はスムーズに折れるようになった。


「あんたも好きねぇ。洋君が来ないなら、勉強すればよかろうもん」


「それはもうやったっちゃ。それに、これはこれで意味があるたい」


テーブルの上には折り紙の薔薇の花が5個ほど転がっている。せめてあと10個はほしい。


「何のために作っとるん」


「美里の誕生日近いやろ?そのためっちゃ」


「折り紙?……ひょっとして」


「そ。折り紙の薔薇の花っちゃ。箱に詰め合わせるつもり」


「へえ、手作りのプレゼント!勇人にしちゃ、気が利くじゃない」


「そんなに金もないし。このぐらいしか、思い付かなかったと」


ハハ、と僕は照れ笑いした。美里の誕生日は4月27日だからまだ少し先なんだけど、自分の身体のことを考えたら早めに着手しておきたかった。


しかし、目が疲れるな。1個作るのに30分以上はまだかかる。指がちゃんと使えればもっと早くできるのだろうけど。

大きく伸びをした。ちょっと気分転換にしよう。


「ちょっと散歩しに行っていいと?」


「いいけど、どこまでっちゃ」


「O尾の駅ぐらいまで。30分ぐらいで戻る」


#


桜並木はもう半分ぐらい緑になっている。もう見頃は終わったけど、桜吹雪の中を歩くのは結構いい気分だ。

今日は昨日までの怠さも少し薄れている。気分を一新できそうだった。


ふと、昨日のことを思い出した。兄ちゃんがあそこまで大変なことになっているとは思わなかった。

洋さんも随分心配そうだったけど……そこまで兄ちゃんが追われなきゃいけない理由って、何だろう?

そもそも、兄ちゃんを捕まえるのに失敗したからといって、藤木先輩が殺されるのは明らかにおかしい。彼に同情するわけじゃないけど、何かが変だ。


そもそも、兄ちゃんは何のために僕に会ったのだろう。僕の病気のことなんて、兄ちゃんが知るわけがない。少し勘は鋭い方だけど、それだけで危険を犯して僕に会う理由なんてないはずだ。

洋さんも言ってたけど、何か意味はあったはずだ。それは一体何だろう?


足は思わず、兄ちゃんと会った純喫茶「ライムライト」に向かっていた。

お金は、一応持ってきている。帰りは少し遅くなるだろうけど、コーヒー一杯くらいなら大丈夫だ。


チリンチリン


やはり店には誰もいない。こんなのでよく潰れないな。

頭の禿げ上がったマスターは僕を一瞥するだけだ。兄ちゃんと会った時の席に座ると、彼がメニューを持ってきた。


そしてポツリと言ったのだ。


「……後ろの植木鉢の中」


「え?」


それ以上は何も言うことなく、マスターが去っていった。


僕は振り向くと、言われた通り植木鉢の中を見た。何かが入っている。


「……これは」


細長い何かがそこにあった。蓋のようなものもある。USBメモリ……?


僕は手を挙げてマスターを呼んだ。


「注文は」


「これ、一体……」


「知らん。俺の知ることじゃない。ただ、辰夫からはそれは君に託すと」


「え?」


「ただ、これを持っていることを人に言うな。警察にも、昨日会った記者にも。

お前の兄貴のように、一生追われる立場になりたくなければ。で、注文は」


ゴクリ、と僕は唾を飲み込んだ。……やはり、ここに兄ちゃんが来た意味はあったんだ。

そして、このマスターは……堅気じゃない。痛みとは違うものから来る脂汗が、全身から噴き出す。


「……注文は?これをこのままここに置いておくことは限界なのでね。

これが何かは分からないが、いつ爆発するか分からない『時限爆弾』であるのだけは分かる」


「そんなものを僕に託すんですか」


「君ならと辰夫が思ったからなんだろう。あの男は、ああ見えて信頼に足る」


「兄ちゃんとは、知り合いなんですか」


「……しゃべり過ぎたな。これ以上は言わない。注文を」


僕はUBSメモリを見た。兄ちゃんは、この3年で一体何をしてきたのだろう?


「……ホットコーヒーを」


そう言うと、マスターは小さく頷いて去って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ