表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【最終回】DYRA ~焼かれた村、謎の鍵、そして「死神」と呼ばれた美女との旅の果てに~  作者: 姫月彩良ブリュンヒルデ
XVII 悪意の手を逃れたどり着いた先

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
354/355

354:【TRI-PLETTE】名も無き霊妙たる煌めきと死神から、愛すべき愚民共への贈り物

前回までの「DYRA」----------

 DYRAとRAAZはハーランを追い詰める。が、タヌはもうそこにはいなかった。そしてハーランの意味深長な言葉と共にゴングが鳴った、「次」なき死闘。一方、塔から脱出したアントネッラは、ディミトリたちに助けられ、生還を果たす。そのとき、塔の上に細長い雲を見る。


 タヌを乗せた脱出ポッドは発射された。それを知ったRAAZは遠慮なくハーランを始末できると思った。だが、それは甘すぎた。

 DYRAの背後で突然、扉にコツンとハーランが投げた何かが当たる音と共に爆発が発生した。

「!」

 DYRAの背中に爆風が当たるが、一瞬早く舞い上がった青い花びらの嵐が彼女を守る。

「ったく! この部屋で爆弾とか正気じゃねぇなぁ。それに、そんなモンで壊れるワケがない。打つ手がなくなってヤケでも起こしたか?」

 RAAZが口角を上げ、剣を振るおうとした。ハーランはすぐさま奥側の壁際へ行くと、機材が入っていると思しき大型ロッカーのような箱の取っ手に手を掛けながら、再び小型の爆弾を投げる。今度はアンダースローではなく、普通に。

「甘いなクソガキ。俺が今、何に手を掛けているかわかるか?」

 RAAZが爆弾を斬って捨てる間にハーランは扉を開け、中から何かを取り出した。

「確かにこの壁は爆弾じゃ壊せない。そう。爆弾じゃ(・・・・)。だが、こいつはこの壁を壊すため(・・・・)に作られている」

 ハーランが笑いながら告げた。手にしたモノを窓代わりの耐圧ガラス脇の壁へ向けると、それまでなかった赤い光点がポツリと浮かび上がる。

「ま……!」

 RAAZは彼が顔色を変えた。

「……非破壊検査用のレーザー!」

 呟いた瞬間、一瞬前まで光点があった場所を中心に、僅かな粉塵が舞った。

「DYRA!」

 パン! とも、バン! とも、何とも聞いたことがないような破裂音が響いたのと同時に、RAAZがDYRAを庇う。周囲に赤い花びらの嵐が舞い上がる。

「何だ……!」

 部屋はそれまでとは一転、白い霧で覆われた。DYRAは窓際の異変に気づいた。まるで、窓脇の壁に穴が空き、そこからまるで花でも咲くように穴が広がっているのだ。

「──!」

「ぐっ!」

「はっ!」

 広がる穴から空気の奔流が何もかもを吸い出していく。

 ここで、DYRAはハーランが「逃げる必要もない」と言った本当の意味に気づいた。

 脱出ポッドの射出口がある区画そのものが巨大な塔から切り離されるようにバラバラとなり、破片となって空へと放り出された。

 ハーランも。

 DYRAを抱き抱えたRAAZも。

 大小様々な破片が飛び散り、猛烈な勢いで空へ散る。

 その中のひとつが、先の方を飛ぶ何かに当たったのをDYRAは見た。


 普通の人間なら、上空数千メートルに放り出された時点でとっくに凍りつくか気圧差にやられて死んでいる。だが、DYRAとRAAZは普通の人間ではない。ハーランも然り。

「RAAZ!」

 凄まじい気流の中で、DYRAはRAAZを呼んだ。

「──聞こえている!」

 身体を接触させているため、物理的に声は聞こえずとも、ナノマシンで経由してやりとりする。DYRAはそんな理屈はわからないが、声が届いているとわかったので話し続ける。

「──何が起こった!? それに、爆発なのか!? 破片、タヌに!」

「──キミは飛べる! 適当な場所に上手く着地しろ! ISLAに拾わせる!」

「──お前は!?」

「──決着を、つける!」

 そう告げたRAAZが、視界の先にハーランを捉えていることをDYRAは把握する。が、次の瞬間にはものすごい速さで空を飛んでいる。花びらの嵐で障壁を展開して続けていられるからこそこんな無茶ができる。そうでなければ死んでいる。これでタヌのもとにたどり着けるのか。RAAZはハーランに追いつくのか。

 銀色の何かが灰色の細い煙らしきものを引いているが見えてくる。DYRAはそれがハーランが言った、タヌを乗せて打ち出したもの(脱出ポッド)だと確信した。近くにはハーランが流されるように飛んでいるのも見える。

「──行け」

 手を伸ばせば届きそうな脱出ポッドに届きそうな距離になると、RAAZがDYRAを離した。

「──!」

 DYRAは反射的に銀色の塊に手を伸ばした。

「!」

 U字の、足場を取っ手のように掴んだ。DYRAはそこから、脱出ポッドの隅の方に破片が刺さっており、そこから煙が噴き上がっているのを見る。

 このままでは海に落ちてしまう。

 海に落ちてしまえば、どうなるか。

 仮に、救命ボートのようなものであるなら浮かぶのだろう。だが、それでは助けがいつくるかわからない。漁師たちが来ないような場所に落ちてしまえば──。

 来ない場所に、必ず助けが来るように仕向けるにはどうしたらいいのか。

 海の真ん中に落ちて、何日も待つなどと悠長な選択肢を講じることはできない。

(どうすれば……!)

 飛び続ける脱出ポッドの外周についたU字を一つ一つゆっくり、確実にたどり、DYRAはポッドの前の方へ近寄る。少しでも気を抜いたら、あっという間に吹っ飛ばされてしまいそうだ。青い花びらの嵐の障壁すら吹っ飛ばされているのだ。最低限、自分の身を守るのが精一杯。このポッドまで包んで、などできるはずもない。

 RAAZとハーランはどうなったのか。彼は本懐を遂げたのか。だが、視線を余裕はない。

 銀色のポッドの前の方へ近寄ると、透明な素材になっている部分が見えてくる。

「──!」

 DYRAの緊張の糸が一瞬、緩んだ。

 最後に見たのは、不安の表情が和らいでいくタヌの姿だった──。




 それから7日の時間が流れた。




 打ち上げられたポッドのそばには、サファイア色の髪が美しい一人の女も倒れていた。その傍らでは、少年が必死に身体を揺すっていた。

 タヌと、DYRAだ。

「……DYRA、DYRAっ!! 起きてよ、DYRAっ!!」

 タヌが泣き叫ぶような声で呼びかける中、砂を引きずるような音が少しずつ聞こえてくる。

タヌは気づかず、声を上げ続けている。

 ざっ、ざっ、ざっ、音が耳にようやくタヌの耳に届いたとき、その音は止まり、長い陰が二人を覆った。

「……ああ……いた……!」

 泣き叫ぶ声の間に、男の声が割り込んだ。タヌはハッと顔を上げた。

 二人の目が合った。

 見知っているはずの男だった。銃を手にしていた。

「……とう……さん……!」

 ハーランの手を借り、父親もあの塔から脱出していたことをタヌは思い出した。

 タヌはDYRAを守るように、彼女の身体をしっかりと抱きしめた。同時に男が銃を手に構えると、空へ発砲した。大きな発砲音が響き、一発撃たれる度に、空に赤や緑、黄色、色とりどりの煙が上がった。

 ひとしきり撃ち終わると、銃をしまい、二人の元へ駆け寄った。

「タヌ!」

 DYRAを守るように抱きしめるタヌを、フィリッポはまるごと抱きしめた。

「生きていた! 良かった」

「……」

 タヌは小さな声で、呟いた。

 そして。

「……触らないでっ!!」

 次に、意を決したように声を張り上げると、片腕でフィリッポを突き飛ばした。

 フィリッポは狼狽えた。

「DYRAに触らないでっ!」

 タヌは真っ直ぐフィリッポを見る。

「ボクのために必死になってくれて……! ハーランさんに手を貸したあなたが、触っていい人じゃない!!」

「今のお前には、わからないかも知れない。でも、彼女は女神だ。お前を助けるために、この場所さえも創った」

「は?」

「お前は、ここがどこだか、わかるか?」

 フィリッポの指摘で、タヌはそんなことを考える暇もなかったと気づいた。

「ここはほんの数日前まで、アニェッリからずっと南、海に浮かぶ島だった場所だ」

 タヌはDYRAを離すことなく、フィリッポをじっと睨んだ。フィリッポは話を続ける。

「トレゼゲ島だった。けれど、あの塔から脱出したとき、その夜、南の海が盛り上がって、この地が現れたんだ」

「何、言っているの?」

「父さんは、あの方が逃がしてくれたおかげで、レアリ村の東にある浜辺に着いたんだ」

「何言っているの!?」

「地震が起きて、翌朝には南西側の景色が一変していた。だから、船でここまで来て──」

「ボクを命懸けで助けてくれたのは、DYRAだ!」

 タヌが声を張り上げた直後、フィリッポの背後から人がこちらへ走ってくるのが見えた。二人、見知った人影だった。

「やめろって!」

 突然、フィリッポが背後から羽交い締めされた。背後にいたもう一人が、タヌの前まで駆け寄ると、フィリッポの正面に立つ形で両腕を水平に広げ、壁になった。

「アンタ! マジでもうやめろって!!」

 ディミトリがフィリッポを引きずるように引き離す。

「タヌ君! やっと見つけたっ! 無事で良かった」

 楯役となったのはアントネッラだった。

「ディミトリさん、アントネッラさん!」

 DYRAの身体をしっかり抱きしめたまま、タヌが明るい声を上げた。

「何だっ! 離してくれ!」

 フィリッポがディミトリの腕を解こうとするが、思うようにならない。

「息子がラ・ルネサン、再生の女神といるんだぞっ! 離せっ!!」

「病院で、お兄様から聞いた通りだわ! 髭面やラ・モルテを、利用させるものですかっ!」

 もう、誰からもDYRAをラ・モルテと呼ばせたくない。でも、だからといって、別の形で利用されるのはそれ以上に嫌だ。タヌはアントネッラの言葉を聞いて、複雑な気持ちになった。

 白い子犬が浜辺をタヌたちの方へ向かって走ってくる。そのときだった。

 突然、彼らの視界に、無数の赤い花びらが舞った。最初はふわりふわりと、どこからか風に乗って。

「あ!」

 その場の誰もが、それが何を意味するか気づいたときだった。

「──そこまでだ」

 赤い花びらが木枯らしのように舞うと、タヌとDYRAの傍らに、赤い外套姿で、手にルビー色の諸刃の大剣を持った大柄な男が出現した。


354:【TRI-PLETTE】名も無き霊妙たる煌めきと死神から、愛すべき愚民共への贈り物2026/06/21 22:13

354:【TRI-PLETTE】名も無き霊妙たる煌めきと死神から、愛すべき愚民共への贈り物2026/04/28 18:12

354:【TRI-PLETTE】名も無き霊妙たる煌めきと死神から、愛すべき愚民共への贈り物2026/04/27 20:00


-----

 GWにはいりました。如何お過ごしですか。


 改めまして、ここまで読んで下さってありがとうございます。

 また、今回初めて読んだよ、という皆様も、せっかくのご縁です。是非ブックマークなどで応援よろしくお願いします。レビューとか感想とかいただけると、作者は小躍りして喜びます。珈琲にケーキセットつきそうなくらいに!


 多くは語りません。

 次回、ラストです。

 唯一無二のゴシックSF小説、最後まで一層の応援を、どうぞよろしくお願いいたします!


-*-*-*-*-

【宣伝】文学フリマ東京42 出店します。

5月4日に東京ビッグサイト南館で開催の「文学フリマ東京42」に参加します。

ブース番号はF01-02です。

広々2スペース分。

ゴシックSF小説「DYRA」文庫版全巻投入です! 是非よろしくお願いいたします。


-*-*-*-*-

【宣伝】冬コミ新刊「DYRA 16」 BOOTHにて通販開始


https://sbrynhildr.booth.pm/items/7754629


 Webで連載中のゴシックSF小説「DYRA」は文庫本で頒布(校正校閲しています。プラス! Web未収録シーンがあります!)。

 今回の新刊は何と、最終巻です!! しかも、Web版とは違う、おまけに素晴らしいビッグサプライズなシーンもあります。

 こちらは、物語の核心に迫る前日譚にして、反響大きい「DYRA SOLO」(Web公開ナシ)と一緒に読むと面白さ一万倍です。

-*-*-*-*-

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ