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DYRA ~村を焼かれて帰る場所をなくした少年が、「死神」と呼ばれた美女と両親捜しの旅を始めた話~  作者: 姫月彩良ブリュンヒルデ
XVII 悪意の手を逃れたどり着いた先

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349/352

349:【TRI-PLETTE】知らないのは自分だけだった!? タヌは初めて自分自身を知る

前回までの「DYRA」----------

 RAAZに「あの日」の出来事の証拠を見せたISLAは、困惑するアントネッラへ、彼女を思いやる姿勢を見せる。説明しても到底理解できない事象を敢えて告げない。ただ謝意を示し、彼女をルカレッリ共々塔から脱出させた。いよいよ運命のときが来る。そこへ「最後の当事者」が現れ──。


 銃声は猟銃、もしくはショットガンを思わせる音だった。

「……!」

 銃を手に現れた人物が誰かわかったとき、タヌは声とはとても言えぬ、変な声を喉の奥から漏らした。

「え……」

 先ほど、砂になって消えた父親と同じ顔の人物だった。服装はサロペット作業着。良く見ると、靴は見たこともない素材の編み上げブーツ風靴。銃を持つ手には手が一回り大きく見えそうな手袋。

あの人(・・・)が……」

 タヌは、まったく違う雰囲気の人物が現れたことに激しく動揺する。それまで会い、つい先ほどまでひどい言葉を投げ続けてきた人物はもちろん、昨日モラタで会い、声を掛けてきた人物は何となく違う気がする。今ここに現れたあの人物こそ、DYRAから聞いた特徴と最も合致する雰囲気を持っている。そんなことを思いながら見ていたとき。

「フィリッポ! それ以上近寄るなっ!!」

 苦しみに呻いていたはずのハーランが叫んだ。

「フィリッポって……」

 確かにそう呼んだ。ハーランは間違いなく、父親の名前を、呼んだ。正真正銘の父親が、現れたのだ。タヌはじっと見つめた。

「本物のクズが来たか……」

 RAAZがDYRAを抱きしめたまま、顔を上げ、フィリッポを睨んだ。

「ああ。今の。本当の『敵』がようやくお出ましか」

 ISLAも冷たい視線で見つめる。マイヨでもこんな視線で何かを見たことがあっただろうか。タヌは刃のような輝きに、身体を僅かに震わせた。

「ISLA。一戦行けるか?」

 RAAZが問う。

「……ま、サユルの件もある」

「獲られた部下のことか」

「でも、そんな目先の感情でハーランと一戦交えるほど俺はバカじゃない。俺が腹の中で抱えてる、ヤツへの禍々しい感情は全部残らず、アンタに預けたい」

「そういうことなら、わかった」

「それと、彼女にも一仕事してもらわないと」

 言いながら、DYRAを見る。

「せっかく全員揃ったんだ。アンタとその彼女にも知っておいてほしいことがある」

「何だと?」

「俺のエイリアスボディはとんでもない情報を持って帰ってくれた。次々起こる事態に対応するため、精査がギリギリだったのと、状況を含めた利用価値の優先順位の都合、ずっと黙っていた。けれどボディを収容できたから、情報もそこに至る思考プロセスも完全シンク(同期)できた」

 ここで、ISLAが一瞬だけ、背の高い透き通った円柱に収まったマイヨを見た。タヌはその仕草に、マイヨを「助けた」のではないのか。遠回しに違うと匂わせてきたことに戸惑った。

「つまり、案山子が何を思い、どうしたのかも」

「ドクターが作った俺の身体は、そういうこと(・・・・・・)だ。今はもう、自分が見たもの(・・・・・・・・)聞いたこと(・・・・・)として話せる」

 マイヨが見聞したものを我がこととする、タヌは理解できなかった。

「話し終わるまでは、俺のことを守ってくれよ? RAAZ」

「しょうがないな」

 RAAZがそういうと、ISLAがDYRAの右手をそっと握った。握った手の周囲に黄金色の粒子が広がっていき、DYRAの右手を通して吸い込まれていくように消えていった。

「ずっと、この部屋にはうっすらナノマシン降っているけど、彼女には集中的に渡した方がいいってことだろう? アンタを助けたい一心で自分のアセンブラーにダメージ出すほどの覚悟で必死だったんだ。それには報いるさ」

「そうか」

「彼女はアンタという切り札を残す、その役目をキッチリ果たしてくれた。その意味で俺だって感謝している」

 ISLAが言い終えると、手を離した。

「ん……」

 RAAZの腕の中で少しずつDYRAが動く。

「……おい……お前、大丈夫か?」

 DYRAが目を覚ます。彼女を支えるように抱きしめたまま、RAAZがすぐに彼女の手に自身の手を絡めた。

「ああ。キミが、助けてくれたから」

「よか……た」

「それは、私のセリフだよ。立てるか?」

「手を、借りていいか?」

 DYRAが目を覚まし、RAAZの手を借りてゆっくりと身体を起こし、立ち上がる。


 その様子を見たタヌは安堵した。

「よかった……」

 しかし、ここでISLAが二人の姿を見せまいと、遮るようにように立ち塞がった。タヌは表情を引き攣らせた。次に、ISLAはハーランを睨む。そして、左手をパチンと鳴らす。

「じゃあ、始めようか。アンタらが死んでもらうしかない理由くらい、ちゃんと聞かせてやる。ドクターの件だけじゃない」

 タヌはここで、ゆっくりと立ち上がったハーランを見ながら、彼の身体に自由がそれなり程度に戻ったことを察した。それにしても、この三つ編みのない(・・・・・・・)マイヨの冷酷さ。ある意味、倒れてしまったマイヨの怒りそのものなのだろうが、それにしても、だ。

「悪いけど、子どもでも容赦する気はないよ?」

 ISLAの呟きが耳に入ったとき、タヌはビクリとした。そのとき、自分の後ろに人の気配を感じた。

「タヌ君。キミ、いや、キミもお父さんのことも絶対に守る」

 背中から、ハーランが小さな声で告げた。

「どうして……?」

 ハーランが自分を守るのか。タヌは理解できなかった。だいたい、初めて会ったとき、自分に爆弾腕輪をつけたくらいなのに。けれども、それを尋ねることはできなかった。今、自分が置かれている奇妙な状況をまったく呑むことができないからだ。どうして自分がDYRAたちの敵のような扱いを受けなければならないのか。どうして、現れた父親はアンジェリカを撃ったのか。何一つわからないままで、質問すらまとめることができないからだ。

「アンタら自身、まとめて死ぬ必要がある理由くらい、わかっているよな?」

 ISLAが言うと、タヌがハッとして、声を上げた。

「マイヨさん! 何でですか!? どうして、ボクや父さんが!? DYRAやRAAZさんに迷惑を掛けたから、RAAZさんが、ボクが父さんと再会できたらそのときに……とは言っていたけどっ!!」

 タヌは心のどこかで、DYRAから話を聞いたとき、心のどこかで父親が殺される理由はなくなったと思った。そんなことはないと頭ではわかっていたが、そう願いたい気持ちを捨てきれなかった。だが、現実はハーランといるという最悪の状況だ。ハーランも、三つ編みのない(・・・・・・・)マイヨもいなければ。DYRAとRAAZだけなら。でも、こうなってしまった以上、たられば(・・・・)はもはや考えるだけ無駄だ。

「自分のことも知らない、か」

 ISLAがしれっと言い放った。

「けど、俺たちにとっては、『知らなかった』じゃ通らない」

 一体、何を言っているのだ。マイヨがあまりに冷たい口調で言い放った言葉を聞いて、タヌは目の前が真っ赤とも真っ白とも何とも言えない状態になった。

「ボクが何を……!?」

存在すること(・・・・・・)

 バッサリ切り捨てるような言葉もだが、タヌはそれ以上にその内容に驚いた。何を言っているのか、まるで理解できない。

 ここで、ISLAの瞳に緑色がかった輝きが表れる。左目は、片目だけの眼鏡(モノクルディスプレイ)が反射することもあり、不器用なほど光り輝いている。

「DYRAが情報をトレゼゲから持って帰ってきた。それはフィリッポが二人いたこと。そして、ハーランとの関係……」

「!」

 マイヨならDYRAやRAAZから聞いているに違いない。

「どうして……」

 まさか、この目の前にいる三つ編みのない(・・・・・・・)マイヨも知っているとは。

「RAAZから聞いて、もう一度ピルロへ向かった。その件にまつわる証拠がほしかった。だが、アンタもしたたかだった。俺がもう一度、アンタのアジトとピルロを繋ぐ隠し通路がある部屋へ戻ってくると読んで、結構な量のプラスチック爆弾を仕掛けてくれやがった。証拠諸共、部屋は吹っ飛んだ」

「証拠?」

 RAAZが問うた。

「ああ。ハーランとフィリッポが繋がっているとアンタから聞いて俺が探したのは、フィリッポの家系図(・・・)、そうでないならルーツがわかるものだ」

 聞いた途端、フィリッポは顔色を変えた。ハーランも表情を僅かに硬くする。

「ここで直接の証拠は押さえられなかった。それでも、錬金協会の副会長が隠し持っていた文通の手紙がすべてだった」

 ISLAがタヌを見ながら話す。

「フィリッポ・クラウディージョ。いや、フィリッポ・クラウディージョ・カッソン・ニムローテまで言った方がいいか」

 聞いた途端、タヌは表情を引き攣らせた。どうしてそこまで。

「俺のエイリアスボディが見たものは、超伝送量子ネットワークシステムを通してデータが|シンクされれば、俺が見たもの、聞いたことになる」

 ISLAの報告、フィリッポのフルネームを聞いた途端、RAAZもやりきれないと言いたげな深い息を漏らした。

「つまり……」

「そういうこと。ハーランだけじゃなくて、そいつも、そしてそのガキもニムローテ。ドクターを騙して、檻に閉じ込めて、寵愛という名で嬲って、苦しめて、そして、殺したニムローテの血を引くヤツだ」

 タヌは、自分とハーランが親戚だと言われてもピンと来なかったが、三つ編みのない(・・・・・・・)マイヨの、言葉の端々に憎悪と怨恨がチラつく語り口に、自分がとんでもない立場にいるのだとだけ理解した。


349:【TRI-PLETTE】知らないのは自分だけだった!? タヌは初めて自分自身を知る2026/03/24 00:00


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 花粉症地獄がヤバイバーと言いつつ、春がきた感じがする日々です。

 皆様いかがお過ごしでしょうか。


 改めまして、ここまで読んで下さってありがとうございます。

 また、今回初めて読んだよ、という皆様も、せっかくのご縁です。是非ブックマークなどで応援よろしくお願いします。レビューとか感想とかいただけると、作者は小躍りして喜びます。珈琲にケーキセットつきそうなくらいに!


 タヌとフィリッポ。親子にまつわる真実が最悪のタイミングで暴露されてしまいました。

 RAAZも憮然としているわけですが、さて、DYRAがどう出るのか。物語はいよいよ幕引き迫ります。


 唯一無二のゴシックSF小説、本当にもう、残り僅か。Web版もいよいよあとn回。フェラーリのナンバリングで終わらせる所存です。355か、360。これ過ぎたら、ちょっととんでもない数字になるということで、お察しです!


 一層の応援、どうぞよろしくお願いいたします!


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【宣伝】TAMAコミにサークル参加します!


 日時:4月5日(日) 11:30-16:00

 場所:たま未来メッセ(東京・八王子駅よりすぐ)


 当サークル「11PK」はスペース配置《ア05-06》で、このたび壁配置となっております。2spありますので、ゆっくり立ち読みもできますよ。

 Webで連載中のゴシックSF小説「DYRA」も、文庫本全巻在庫用意(校正校閲済み、プラス、Web未収録シーンあり!)。

 最終巻は「Web版とは違います」。

 さらに! さらに! 

 物語の核心に迫る前日譚にして、反響大きい「DYRA SOLO」(Web公開ナシ)と一緒に読むと面白さ一万倍です。今回の347話は、もう、血の涙が出そうなほど見方変わります!


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【宣伝】冬コミ新刊「DYRA 16」 BOOTHにて通販開始


https://sbrynhildr.booth.pm/items/7754629


 Webで連載中のゴシックSF小説「DYRA」は文庫本で頒布(校正校閲しています。プラス! Web未収録シーンがあります!)。

 今回の新刊は何と、最終巻です!! しかも、Web版とは違う、おまけに素晴らしいビッグサプライズなシーンもあります。

 こちらは、物語の核心に迫る前日譚にして、反響大きい「DYRA SOLO」(Web公開ナシ)と一緒に読むと面白さ一万倍です。

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