95) 不意打ちと敗北なのね。
今回は欠損表記があります、ご注意を。
ボス亀を倒す為に何度も潜った扉を抜けて中に入る。
モノの見事にボス亀が焦げている。
「おおう、流石ッスね。中から焼いたんですか?」
「あぁ、サンが足止めして俺が首切ってマルーがソコからドーンよ!」
軽いノリで話す剣士バツの言っている事が大雑把過ぎて、良く解らない。
まぁ、シーちゃんはコンガリ焼けて火が燻っている状態でも問題無いと言うので回収を御願いする。
「あ、あと宝箱が2個程出たんだが、開けられるか?」
「え、あ……ハイ。たぶん大丈夫と思いますが、良いんですか?」
ミューが宝箱の扱いで確認を取ったのは“失敗”して中身が駄目になっても良いか?の意味だろう。
「おう、それはオマケみたいなモンだからな。失敗しても文句は言わねぇよ。」
「解りました、解除してみます。」
数分程掛かってひとつの宝箱を開ける事に成功したようで、中身を手渡す。
「ふぅん。また微妙だな……魔力回復が毎時10%って、10ポイントだったら凄かったんだが。」
おおう、凄いな。毎時10%って……オイラが欲しいくらいだわ。というか、鑑定できるのね?羨ましい。
「と、いうワケで。」
「で?」
違和感と共に視界内に仮面レーダーによる警報が表示された。
何となく、オイラはミューの手を握り、引きよせた。
「にゃっ?ナナシノ!?」
「閃」
さんっ!
剣士の振るった刀が、ミューの居た位置にある……え、なに?
「斬」
ギンッ!
今度は間違いなく敵意を感じたので、オリハルコン粘土で太刀筋を逸らし、その間合いからミューを抱えて出た。
「突」
ばきん!
次は太刀筋を歪める様に受けたので、耐え切れなかった剣士の得物が折れる。
「は?なんなのコイツ?」
剣士は訝しげに首を捻り呟いた。
オイラはそれに答えずに☆導きの書☆に魔力を流し込みつつ精霊ズにも指示する。反撃だ。
「削げ。」
地中から剣士へ向けて手足を狙ったアーススパイクが発動する。
しかし、騎士サンカが割って入ることでオイラの攻撃は防がれた。だが、攻撃は一度だけでは無く何度も連続で発動させる。
「うわ!ちょっ!?がっ!」
ガツガツと剣士や騎士への連続攻撃で装備を削る。
遂には騎士の盾を割り、鎧を破壊した。その頃には剣士はアーススパイクで拘束済みだ。
シーちゃんの闇系魔法は何かに阻まれているようだ。耐性強化でもされているのか?
「おせーよ!マルー!」
騎士の叫びと共に展開していた魔法が全て搔き消消えた。
追加した魔法も発動しない。
「そんな事より、なにそれ?」
魔術師マルーが光を放つ杖をオイラに向けて質問を続ける。
「アナタ、今のは高速詠唱と無詠唱の混合スキル?怖すぎ。」
無視して袖から投擲用の小石を出そうと思ったら、普通に袖を弄っただけだった。
「あ、アナタの範囲系魔法も発動しないから……って!?」
落ちている折れた剣先を拾って投げてみたが、また騎士に阻まれた。
そもそも重力系の魔法陣が発動しなかったので、威力は無い。
「閃」
オイラの肘から先の左腕が、ローブと手甲も含めてポロリと……落ちた。
それを視認した途端に、痛みが来た。
「斬」
後ろへ避けようとしたが、今度は右足が膝下から外れた。
「また避けた?両足切ってから達磨にするつもりだったのに……突。」
「っつ!」
刺された……
ミューが!
無言で駆け寄って来ていたミューは、手に持っていた回復薬を落として蹲った。
そして剣士は腹部に刺さった刀を抜く為にミューを蹴り飛ばした。
「やっべ、マズイ所に刺さったじゃん。楽しむ時間が無くなった……」
「バカ!なにやってんのさ。」
「仕方ないじゃん、思ったより加減がきかなかったんだから。」
「良いアイテムを持ってそうなボーナス君だったのに!バカバツ!」
「あ……あぁ、ミュウうおぉぉぉおおぉぉ!」
オイラの中で何かが湧き出した。視界がゆらりと変わる。
湧き出たモノが本能的に良く無いと解る。ダメだ、このままではコレがミューを巻き込んでしまう。
しかし、湧き出すモノは抑えられそうに無い。そうだ、抑えられなければ、一方向へ流せばいい。
ソレを3人に向ける。ただ、魔法は発動しない。
「おい!コッチもヤバイって!なんなのアイツ!?」
「サンカ!処理は魔物に任せて逃げるぞ!」
剣士が回収した魔石を床に投げ捨てると、数メートルの範囲で霧が立ち込める。魔石による再召喚だ。
「ははは!色々惜しいけど魔物に殺されてくれ。俺にPKフラグが立つと後々面倒だからな!」
バタンと出口が閉められた。
同時に視界を塞ぐ程の黒い感情が掻き消え、生き残る為のクリアな思考回路が動き始める。
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「キュー!ミューの傷口を塞げ!」
『で、でもナナシノの方が酷「無駄口叩くな!早くしろ!」』
「シーちゃんはミューの痛みを麻痺で止めてあげて!」
『了解。』
「ミッチー!全力でアレを潰すぞ!」
すっぴょこ☆
出現しそうな巨大亀にアーススパイクを放……てない。
発動しないのは、魔術師が仕掛けた魔法無効が効いたまま……だからなのか?
『ナナシノ!魔法が!魔法が使えない!』
キューが何度も詠唱を繰り返すが、魔法陣が霧散している。
考えろ、考えろ!
手に取った☆導きの書☆に目をやる。脱落防止用に左手に繋がっていたベルトの効果を思い出す。
しかし、これは周囲の魔法効果を打ち消すが、同時に魔力も奪ってしまう。
キューが気を失ったらミューの回復が出来ない。
そうだ!魔力を奪う以上に精霊ズと☆導きの書☆に魔力を供給できるか?
ベルトに手を添えて……もう片方の手が無いので身体から放出?
「キュー!シー!魔力をオイラの肌から直接吸え!」
☆導きの書☆を左腕の残った二の腕部分で小脇に抱え、口で切られた左手のベルトを咥え、そして精霊ズが触れたのを確認してから気を失ったミューの左胸に手を置いた。
「ふんっ!」
ベルトの効果がちゃんと発動した。同時に魔力の無散と吸収の流れを交互に受けて目が回りそうになる。
精霊ズも☆導きの書☆もブルっと震えたが、気を失わずになんとか堪えてくれている。
流す魔力を徐々に上げていく。
ミシリ……
ギシ……
ぱんっ!
範囲魔法が弾ける音がした。
「よし!全力でやってくれ!」
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結果、オイラの魔力が底を尽いた。亀の再起が怖くてオーバーキルさせたのと、使用必要量が解らず精霊ズに魔力を供給した所為だ。
ボス亀は周辺の魔物ごと原型を留めないレベルで数百の岩の槍に“刺し刻まれ”、☆導きの書☆は端っこからプスプスと煙を出していた。
慌てて叩き消火する。
ミューは?
『ナナシノ!猫娘の傷は塞いだよ!次はナナシノだから!』
『飲んで。』
キューは魔法陣を展開しながら、シーちゃんは背負袋から魔力回復薬を出し持って駆け寄ってくる。
『ナナシノ、ダメ!気を失ったら魔法が!ナナシノ!?』
安心と魔力の枯渇による作用でオイラの視界は暗転した。




