94) 膝枕と新しい依頼なのね。
沈黙が続く……
迷宮から出て、冒険者ギルドで納品を済ませて会議室に戻ってからも、オイラとミューの間に会話が無い。
「んじゃ、俺は退散するから後のデートは楽しんで来いよ!」
あ、アイロさん……逃げた。
「み、ミューさんや?」
「……」
思い切って話しかけてみたが、沈黙で返された。
「あ、あの……騙す積りは無かったんだ。面倒な事に巻き込むと悪いと思って……」
「ば……」
「ば?」
「ばか!」
ばかっ!
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気が付くとソファーで寝ていた……柔らかい膝枕と毛布もセットで。
「あ、ナナシノ……」
「あだだだ。」
顎が痛い、殴られたようだ。
「ナナシノ、ゴメン。」
「あ、大丈夫。痛いだけで怪我じゃない、気にすんな。」
「「………」」
また沈黙が続く。オイラは起きたままの状態、つまり膝枕に頭を乗せたままミューを見上げる。
視線が合う、逸らされる事を何度か繰り返す。
「ミューさんや?」
「何?」
「巻き込みたくなかったんだ。ミューもアイロさんも。」
「何故?」
「見つかると捕まるから。たぶん一緒に……」
「で?」
「その……ごめん。」
「別に謝らなくても良いじゃない、言えなかったんでしょ?」
「うん。」
「私も聞かないって言ったでしょ?」
「うん。」
「私も殴っちゃったし、ごめんね。」
気まずい……非常に気まずい。言わなかったことに対する話は済んだかも知れないけど気まずい事には変わらない。
コンコン……
不意にドアが開かれる。ノックがあったので不意じゃないな。でも返事無く開けるのは不意か?あぁ、まだ混乱している気がする。
「あ、すみません。お邪魔でしたか?」
「いや!大丈夫!丁度今、目が、覚めた所です!」
「にゃ!うんうん!そうそう!ま、何もないよっ!?」
慌てて跳ね飛ぶように座り直したのを、生暖かい目で職員さんは続ける。
「お取込み中で申し訳ないのですが、ひとつ依頼を御願いしても宜しいでしょうか?」
「依頼?指名ってヤツですか?」
「はい、亀の階層に挑むパーティの付き添い要請がありまして。」
「ミュー、どうする?」
「え?私?」
「依頼を受ける?」
「あ、うん。私たちが戦わない条件なら。」
「依頼も道案内と荷物持ちなので、戦闘は無いと思いますが確認してみますね。」
職員さんが確認を取りに行っている間に準備を済ませる。
「ミューさんや?」
「なんでしょう、ナナシノさんや?」
「依頼達成の後、キチンと話すけど良い?」
「あはは、言いたくなったらで良いよ。」
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「お待たせしました。丁度居られましたので御案内致します。」
ギルド受付の前で依頼主の3人が居るようだ。
「お、ラッキー!直ぐに行けるのか!?」
「初めまして、荷物持ちのナナシノと言います。」
「わ、私はシーフのミューです。途中の罠を発見して解除できます。」
「俺は剣士でバツ、騎士のサンカ、魔術師のマルーだ。ヨロシクな!」
軽そうな男剣士が軽く紹介すると、早速迷宮へと入る事になった。
最奥の部屋までは、こちらもミューが軽く罠の解除を行い突き進んでいった。
途中でペラペラと剣士が内容の薄い会話をミューにしていたが、ミューは軽く受け流していた。
その間に何度か魔術師に睨まれてチリチリとした感じがあったが、恨まれるような事はしていないので気にしない。
「よし、部屋には俺達が入るから、ココで待ってて貰えるか?」
「了解、済んだら荷物を回収するというワケですね。」
3人が部屋に入る。扉一枚なのに中の様子が伺えない。音も聞こえない。仕組みが解らないけど凄い気がする。流石迷宮って感じか?
入ってから10分程経ってからゆっくりと扉が開いた。
「よう、終ったぜ。回収ヨロシク。」




