92) 納品はチャンとしないと駄目なのね。
「ところで、何故にこの階層が封印されてたか解らないんだよなぁ。」
「ナナシノ……ギルドで説明を聞いてなかったでしょ?難易度や趣旨が他の階層と全く違うから間違って入らないようにって言ってたよ。」
「あ、あぁ。そういえばそんな事を言ってた気がするよ、うん。」
この階層のボスと思われる大きな亀を手順通りに倒して、骸を精霊のシーちゃんに“収納”してもらう。
亀の巨体が小さな背負袋に吸い込まれる図は、ちょっとシュールだ。四次元ナントカにデカい道具を出し入れするのを、リアルで見たら違和感しか無いぞ。
「食べられそうな部分は、また中の精霊さん達に分けてあげてね。」
『ん、承知。』
黒猫姿のシーちゃんをひと撫ですると、収納の魔方陣の中に飛び込んでいった。
「キュー、そういえば亀の甲羅って2個目だよね。袋の収納スペースは大丈夫なのか?」
『全然問題ないよ?あと20匹分くらい並べられるんじゃないかな?』
「凄いな……ランクアップの効果か?」
『うん。』
5メートル四方の甲羅が20個入るって、小さな体育館並みか?
ゲームで言うところの“アイテムインベントリ”の容量が気にならなくなったのは良い感じだ。シーちゃんに感謝だな。
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迷宮から帰還したオイラ達は亀の階層の鍵を受付嬢に渡すと、昼間使っていた会議室に呼び出された。
「えっと、要約すると……最奥の部屋にいた亀の魔物の素材を売れと?」
「いやいやいや、そんな強制的な態度ではありませんよ!?もし、甲羅1枚でもお持ちであれば譲って頂きたい訳です。」
「持ってるけど、すごく大きいよ?」
「えぇ、構いません。あの魔物の甲羅は市場で出回る事の少ない素材でして、装備の充実を図る意味合いで必要なのです。」
「なるほど、供給不足ってワケね。解りました、条件付きで引き取って頂けますか?」
「じょ、条件ですか……?値段なら相応の取引額でお願いしたいのですが……」
「あ、いや……値段じゃなくて、高そうな素材って渡すと冒険者としてランクが上がったりするでしょ?それが嫌。」
「え?あ、ハイ。承知致しました。冒険者ランクには計算致しません。」
そうだそうだ!下手に素材を渡して以前の様にランクアップされたら目立ってしまう。それは避けるべきだ!
「んじゃ、どこで渡せばいい?」
「この場で出して頂いて構いませんよ?」
「は?出したら潰れるよ?」
「甲羅が潰れたりする事はありませんが?もしかすると幼生状態の亀の甲羅なのですか?」
「幼生って何!?アレで幼生なのっ!?成体はどんだけデカくなるのっ!?」
「成体はこの部屋より少し大きい程度です。」
「ほら、やっぱり入らないじゃん……」
「ナナシノ、たぶん会話がかみ合ってない。」
オイラと職員の間にミューが入って交渉が進む。進ったら進むんだヨ!?
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「「「「………」」」」
ギルドの素材置き場の片隅で、シーちゃんに出してもらった亀の亡骸を見て納品課の職員が呆然としてる。
「うわぁ、改めて見ると凄いな。まるで骨格標本みたいだな。」
「ナナシノ……職員さんへのフォローは無いのね。」
「あ、もうひとつあるんだ。出して良い?」
「「「「………!?」」」」
ミューに指摘されて、残りの甲羅を横に並べる。面白半分で縦に積んだら、崩れて怖い目に遭いそうだ。
亀の骨は甲羅の中へ丁寧に納められているし、魔石もちゃんと入っていた。上手にお肉を処理してくれた精霊さん達に感謝しないとな。
「しょ、少々お待ちくださいぃぃっ!」
さっきの職員さんが凄い勢いで出て行った。
そしてギルド長のタダノさんを連れて戻って来た。
「ナナシノさん、お見事です。このサイズで持ち帰られるとは……」
「いえ、精霊付きの背負袋のお蔭ですよ。オイラの能力ではありません。」
いやいやいや、入れて出しただけで評価されては困るのだよ?全部シーちゃんの功績じゃん。
「いえいえ、中の魔石も無傷で持ち帰られるとは流石としか言えませんよ。」
「まぁ、良く解らないけどランク評価に加算しない約束は守って下さいよ?」
「えぇ、これ程の素材取引で評価しないのは勿体無いですが、仕方がありませんね。」
タダノさんが来た事で、納品課の職員は気を取り直して甲羅の分解に取りかかっている。あれ?人数も増えてる、いつの間に?
その職員の1人がメモ紙を持ってタダノさんに手渡す。タダノさんはメモを見て頷いている。
「取り敢えず、甲羅1匹あたり金貨50枚で2匹だと100枚ですね。白貨で払いますか?」
「あ、1匹目はアールスとのパーティだったので5人で分配して下さい。2匹目はミューと半分でお願いします。」
「解りました、そのように手配しておきますね。」
「ナナシノ……断っても無駄だと思うけど、ナナシノ1人で倒したのに良いの?」
「あのね、ボス部屋行くのにオイラ単独で行けないでしょ?ミューも働いたんだから受け取ってよ。」
何だかアタッカーだけが花形の様に扱われているが、支援職が居ないと舞台に立てない事を自覚して欲しいな。
オイラが攻撃出来ているのは☆導きの書☆や精霊ズのお蔭なので、寧ろソッチへお金を使うべきだ。うん、使い道を相談しないとな。
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さて、宿屋に戻ったのだが……宿のランクは指定した通り真ん中クラスで問題は無いと思う。
しかし、またミューと相部屋だった。大丈夫かこの世界?生殖可能な男女2人を同じ部屋に押し込むなよ……間違いがあったらどうするんだ。
酔った勢いが怖いので飲酒はしないし、ミューにも飲ませない。囃し立てたキューは、既にデコピン&背負袋内へ強制送還済だ。
「取り敢えず、明後日の商都行きの駅馬車に予約を入れないとね。」
「そうか、その後はどうする?装備新調の為に買い物?」
「うんうん、掘り出し物探そうよ。」
というわけで、明日は買い物に付き合うで決定。




