90) 山賊はカボチャなのね。
「はぁ……」
「ナナシノ、凄いねっ!魔術師なのに魔術無しの格闘で勝ったよ!?」
ガバートと名乗っていたオッサンが担架で治療室へと運ばれて行くのを横目に、オイラ達はギルドの一室へと通された。
「はぁ、おうちにかえりたい。」
「にょ?どしたの?っていうか、帰る家あるんだ?」
ミューの言葉で現実へ引き戻された。面倒事に関わって自棄になるところだった。
今回は長居する拠点では無いし、気に病む必要も無いだろう。うん、元気出てきた。
「あぁ、そういえば帰るのは無理だったなぁ。」
「あれ?出身は悠古の森の近くじゃなかった?」
おおう、そういえばそんな設定だったな……忘れてたわ。
召喚されてから約2か月が過ぎ、誤魔化しの為の色んな設定を適当に並べたのが裏目に出たようだ。
「そうなんだけどね、戻るに戻れない理由があるんだよ。」
「うんうん、私もよく似た理由だから解るよ。」
他愛もない話をしていると、受付嬢と上司っぽい人が今回の対戦結果について説明をしてくれた。
今回の騒動について以降、ガバートからの悪い意味での接触があれば報告する事や逆に挑発行為は控える等の注意も受けた。
また、冒険者ランクを知っていたミューに対して“賭け”は今回に限って有効となっていた。ランクで言えば、インサイダー取引っぽい事になってるんだけどなぁ。
対戦時にランクの確認をしなかった“挑戦者側”に問題があると認定されたようだ。
まぁ、解放された後にそのまま演習場でミューの受け流し訓練とオイラの魔法訓練を18鐘まで行った。
「と、いうワケで……明日は一旦ロクジョウ領に戻ります。」
「現地視察は終わったというワケね?それとも、残り8日で何度か往復するの?」
「そうですねぇ、ロクジョウ領からハルゥ市までの2日を除いて2~3度は往復すると思います。」
「そうかそうか、忙しくなるねぇ。」
少し豪華さの消えた夕食をアールス一行とオイラ達、執事長のノタニさんとで頂いた。
アールスの言うところでは、真っ先に財政改革をしっかりやっていく方針だという。
冒険者ギルドでの納税者の一件を話すと、更に真剣な顔になり云々唸りながら食べていた。
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「何故に……」
「にょ?パーティ組んでるからでしょ?」
さて、ここは寝所となる部屋で御座います。
またもや相部屋となっていた件に対して呟くと、ミューは前回同様の答えを出してきた。
この建物にたくさん部屋があるのなら、別々だって良かったじゃないか?
まぁ、取り敢えずオイラとミューのベッドの間に小テーブルを置き、その上に☆導きの書☆を置く。
「ナナシノ?何かのおまじない?」
「あぁ、何かあった時の対策だ。それに、精霊達も居るからね。安全だよ。」
『ボクたちの事は気にしないで!見てないからドーンとやっちゃ*うわぶっ*』
オイラは余計な事を言いかけたキューの頭を鷲掴みにして、その勢いで背負い袋に突っ込んだ。
全然安全じゃない。寧ろイベントの火付け役に回っているじゃねぇか。
シーちゃんは興味無さげにベッドの足元の方で丸くなって目を瞑っている。
いや、瞑っていない。薄目を開けてコチラを見ているのがバレバレだ。なにやってんだか……
「にょ?精霊さん?何か言ってたの?」
「あぁ、問題無い。いつもの事だ。」
ミューとは交代で浄化室に入って体の汚れを落とす。本当に汚れを落とすだけで風呂などの様に疲れを癒すような効果は無い。
また、湯上りなどの色気溢れる状況も無い。サッパリ感だけはかなりあるんだけどなぁ、残念だ。
浄化室で使ったフード付きの貫頭衣を据え付けの籠に放り込み、ベッドへとダイブする。
「ナナシノさぁ……」
「どした?」
「ううん、何でも無い。」
「そうか。」
ミューは何か言いたいような、そうでないような微妙な表情をしながら毛布に潜り込んでしまった。
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さて、現在はロクジョウ領へ向かっております。
はい、仮面レーダーの警戒網に引っ掛かった魔物は投石で狙撃して足止めもされず順調に邁進していまっす。
「おい!ココは俺様達の関所だ!通行料を払って行け。」
「通行料は金目のモノと、貞操を頂くがな!げはははっ!」
うっわ、早速“順調”と言ったフラグ回収イベントですか、そうですか……
駅馬車の前後に2人ずつ、両脇の林の中に2人ずつ隠れての合計8人。
まぁ、問答無用で襲撃されるよりマシなほうだな。
しかし、召喚前なら確実に“怯えて動けない”状況なのに平然としていられるのはレベルの所為なのか?
「外の8人……“封じる”方向で対応出来る?」
『もちろん!任せて!!』『了解。』(すっぴょこ☆)
キューに魔力を流し込むと、両手を振り上げクルクル回る。そして振り下ろしす直前に盗賊の足元にポッカリ穴が開く。
「うっお!?」
そして、山賊が立っていた場所には“首だけ草”が生えていた。
首から下は穴に嵌まり、首の周囲を蔓上の植物で搦められている。まるで自生したカボチャのようだ。
『完了!林の中も大丈夫!』(ぴょこぴょこ☆)
「おお、凄いじゃん!やるなぁ!」
得意気に胸を張るキューの頭をガシガシと撫でて周囲を見渡す。
よく見ると、林の中の連中も蔦で雁字搦めにされており、身動きが取れない状態になっている。
「あぁ……しまったぁ!」
「うにょ?ナナシノ?」
「装備と持ち物が奪えねぇ!」
「酷いっ!」
向こうさんは武装して強奪に来たんだぞ?逆に奪われてもも文句は言わないだろ?
「まぁ、行進再開しましょう。」
「え?あの山賊達の処分は……?」
オイラが御者に進むように言うと、少し不安そうに聞き返してきた。
「いいよ、どうせ別の盗賊か魔物に処分されるって。」
そうして駅馬車は進み出し、後方に離れて行く山賊?の罵声と悲鳴が聞こえなくなる。




