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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第四幕:拾ったモノが、全てトラブルだった件について。
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89) 定番の***なのね。

 さて、内政的な打ち合わせに参加する事を辞退して、オイラとミューは冒険者ギルドにやってきた。

 あの帳簿は金銭感覚に乏しいオイラより、普通のミューにとっては毒にしかならないと思って外に出ることにした。


「なんじゃこりゃ?何このボッタクリ課税。」


 冒険者ギルドで“訪問クエスト”の処理を行った際に、ここの迷宮の課税金額を見て驚いた。金銭感覚がオカシイのはオイラなのか?

 その馬鹿高いと思える金額にも関わらず、意外と混んでいる。


「ナナシノ、この値段で稼ぎがあるのかな?でも、あの受付は人が多いよね。」

「それにしては、雰囲気が暗いぞ?」


「そりゃそうよ、あっちは納税者ですからね。税金が払えないので仕方なく迷宮に潜ってるのよ。」


 訪問クエストの処理を対応していた受付嬢が答えてくれた。


 納税者は迷宮内で魔物より壁に埋まっている鉱物を採掘するのがメインだという。通路や部屋で採掘し、魔物が出現すれば全力退避するらしい。

 逆に冒険者は鉱石に対する課税が高いので、魔物を狩るだけという話だった。鉱石は重い上に利益が少ないので仕方が無いと思う。

 その鉱石は領主代行の管理する施設で精製されて市場に出るのだが、普通に鉱石として領地外に持ち出すにはコストが掛かるし関税も厳しいと。

 さらに、この領土の鉱石精製所は一か所しかない。つまり、領主代行による“買い叩き”が発生している状況だ。


「あれだな、完全に囲ってるな。独占しとるわな。」

「独占?囲ってる?」


 意外だった……

 ミューや受付嬢に聞いたところ、“独占”は他の領地でも普通にやってる事だったようだ。

 資源を集中させて流通させるとコストが下がる方法は取っているが、独占した上に追徴課税とか……誰も反抗とかしないのかね。

 まぁ、貴族や封建制度が主流な気がするので仕方が無いのかも知れないな。


「ガキが、何も知らねぇ癖に解ったような講釈垂れてんじゃねぇぞ。」


 後ろから不意に声を掛けられた。声がする方を見ると、結構大きなオヤジがツルハシを肩に掛けてオイラを睨んでいた。

 スイっと立ち位置を横に移動すると、オヤジはオイラに向き直る。さらに2メートルほど移動すると、やっぱりオヤジはオイラを見てる。

 不思議に思ったので、オイラは後ろを振り返る。その先には受付嬢が呆れた顔でオイラを見ていた。

 あぁ、なるほど……オヤジが見ていたのは受付嬢だな。オイラが視線の邪魔をしているというワケだ。失敬失敬。


「ちげぇよ!お前に言ってんだよ!」


 あら?講釈っていうか説明をしてくれていたのは受付嬢なんですけど……?っていうか、オイラ何も言ってないのに指を指されて突っ込まれたよ?


「えっと、すみません。長々と受付を独占していましたね。ささ、どうぞ。お邪魔しました、お通り下さいませ。」

「あ、あぁ……そりゃ済まねぇな。」


 オイラは列を離れてオヤジに場所を譲った。


「って、違うわ!馬鹿にしてるのか!?」

「すみません!ゴメンナサイ!お怒りはごもっともです!しかし、オイラには何がお気に召さなかったかが解りません!申し訳無いのですが、どこがイケなかったのか御教授下さい!!」


 オイラはツラツラと謝辞の言葉を並べてペコペコと平謝りを繰り返す。

 ホントに何が駄目だったのかが解らない。鉱石の受付を見て何か言った訳でも無いし、笑ったとも思わない。


「ふざけるな!Dランクの駆け出しの癖にその態度が気に入らねぇ!ちょっと指導してやる。コッチ来い!」

「うお?指導?」


 何の事だか全く解らないまま、話が進み出した……



~~~~~~~~



 オイラは今、ギルドの演習場の中央に立っている。

 目の前にはさっきのオッサン、名前はガバートというらしくCランクの冒険者だという。

 一応、受付嬢に説明は受けた。このギルドでは鬱憤晴らしの為に“指導”或いは“決闘”等の所謂ガス抜きが容認されている。

 とりあえず、怪我はギルド専属の治療師が完治させる事を保障している。因みに「ココの治療師に就くとスキルアップが早いんですよ」と要らない薀蓄を頂いた。

 “即死”という事象はコレまでに無く、そこまで発展したケースは無いというのだが……オイラが初ケースになったりしないのだろうか?


「はぁ……それでは、始めて下さい。」


 ため息交じりに合図を出した受付嬢が下がると、ツルハシを大きなハンマーに持ち替えていたガバートのオッサンがニヤニヤしながら歩み寄ってくる。


「まぁ、数発程大人しく殴らせろや。それで勘弁してやるよ。」

「痛いのは苦手ッス。あと、この意味が解らないッス。」


「指導だ。」

「あぁ、礼儀を教えて頂ける訳っすね?」


「おう、解ってるじゃねぇか。Dランク程度で生意気なのが気に入らねぇ。すこし凹んで反省しろや。」

「凹むってアナタ、物理的に精神的にも凹んでしまえって事ですか?」


「おう、うめぇこと言うじゃねぇか。」

「いや……言ったのはオッサンじゃないか。」


 あぁ、なんだか外野が騒がしいと思ったら倒れるまでの時間と勝敗が賭けの対象になっている。

 えっと、ミューさんや?その手に握っている札は何でしょうか?賭けたのか?嬉しそうに手を振っているぞ……勘弁してよ。

 あれ?キューとシーちゃんがミューの傍にいる……手伝ってくれないのね?放置プレイなのね?殴られて来いと?


「余所見すんじゃねぇ。」


 大きめのハンマーなのに、ブンブンと軽く振り回すオッサン。まともに当たったらイロイロ砕けそうで怖いので避けて逃げ回る。

 逃げながらオイラは背負った☆導きの書☆に手を回して考える。魔法を撃てと言ったら☆導きの書☆は容赦無しなので危険な気がする。まぁ、どうやって逃げようか。


「ええい、チョコチョコと小賢しい!」

「オッサン、それフラグ……」


 オッサンが後ろに下がって闘気の“溜め”に入ったので警戒を行う。オイラも間合いの外へ下がる。


「撃!」


 オッサンが体を回転させながら縦にハンマーを振り下ろす。完全にアレが届く距離じゃないけど、伸びたり突進が加わるのかも知れないので、振られた先の射線を避ける。


どかん!


 あ、しまった……撃ちつけられた地面が揺れる。オイラの足元も漏れなく振動の範囲内だった。怯んで動けない、ヤバい。


どがすっ!


 オッサンの横回転から振り出されるンマーがオイラを襲う。逃げられないオイラは背中を強打されて2メートル程吹っ飛んで転がる。

 あれ?そんなに痛くない、手加減でもされたのかしら?


ぼとん。


 ☆導きの書☆が地面に落ちた。

 なるほど、☆導きの書☆が間に入ってクッションになっていたのか。

 ただ、2つの栞とリボンが怒髪天状態で光っている……怒っている様だ。

 オイラはフラフラとしながらも☆導きの書☆を拾う。


「撃!」


 直後に2度目の激震が放たれる。連打かよ!?クールタイムとか無いのか!?


ごっ!


 そして勝負はこの一瞬でついた。

 結論、勝った。勝っていたようだ。というか勝たされた?


「アナタ、魔導書でしょうが!?魔法で勝負しなさいよ!?」

すっぴょこ!すっぴょこ!


 魔導書を両手で持って揺すりながらツッコミを入れているオイラは、外野からは“勝利アピール”をとっていると見られて大盛況であった……大荒れだ。

 ☆導きの書☆は、まだ抗議の行動として栞を激しく上下させている。殴られた事に対する怒りの表現のようだ。


 この勝負の決定打はオッサンが振り下ろしたハンマーをオイラが華麗に捻り躱して、手に持った魔導書の背を片手上段から頭に撃ち下ろした事による。

 もちろん、一連の動作は完全にオイラではなく……☆導きの書☆がオイラの手を誘導するように動き、躱し、殴った。


 こうして定番である“新人イビリ”のようなシチュエーションは、オイラの意思と関係無く幕を閉じた。

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