80) 再び商都なのね。
「今の“小柄ちゃん”の発言は内緒でオネガイシマス!」
「「「!!」」」
「に……二度も!?」
「あちゃ。参ったな……そんな事より、伝言の内容は何でしょう?」
「え、あ!はい。どうぞ。」
手渡された伝言の内容は「新しい装備品の準備が整いました、受け渡しの時間と場所を指定してください。(ニジーナ・ナイロ)」と書いてあった。
「お姉さん、伝言の発信地と発信時刻は解りますか?」
「はい、商都より先程発信されたようです。」
「それと……今は何時頃でしょうか?」
「17鐘を少し過ぎたところです。」
オイラは“今晩そちらに向かいます”と返信文を書いて受付嬢に渡した。
「装備品の選定は決まった?」
「ええ、僕たちの分は決まりました。」
「私も決まったよー。でも、ちゃんと私も売値で買うからね?」
「っていうか、ミューの分は前の“刎兎”の報酬でまだ十分賄えるから代金は要らないよ?」
「えぁ……ウサギの件は内緒って言ったじゃん?」
先程ミュー自身が“内緒”をバラした件を思い出して反論は止まったので良し、そのまま持ってけ。
「んじゃ、撤収でッス!」
「そうですね。」
残った装備品をイソイソと回収してギルドの一室を出る。
「それでは、18鐘にみんなで食事して解散にしましょう。」
「はいなー!」
「オイラはちょっと用事があるので、出掛けてきます。」
「えっ?どこ行くの?」
「ちょっと精霊の我儘に付き合わないといけないんですよ。」
「あぁ、なるほど。“精霊使いの儀式”ですか。」
「まぁ、そんなところです。」
よっし!でかしたアールス君!何の事だか解らないけど、良い方向に解釈してくれたっ!
「戻って来るのは夜半になると思うから、食事は無しで寝る場所だけ取っておいてくれますか?」
「了解、大変だねぇ。」
「それじゃ、いってきます。」
「ナナシノ、気を付けてね~」
そのまま街の外に出て、薄暗くなってきた森に入り無属性魔法の“跳躍”を行った。
行先は商都だ。
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『ナナシノ、“精霊の儀式”はしないの?』
「あははは、ゴメン。言い訳に使わせて貰いました。」
商都を目前とした森にオイラは着地して、街道を歩いている。
人通りも少ない時間なので、周りを気にせずに精霊と会話を始める。
「ところでさ、精霊の儀式ってナニ?」
『はぁ?ナニ言ってんのナナシノ?そんな事も知らないの?一般常識じゃないのさ。そんn!』
どびしっ
「っていうか、何故に浮いてる?」
『クラスアップのおかげ。』
「あ、成程ね。そんな事も可能なワケだ?凄いな。」
歩いているオイラと一定の距離で浮遊して悶絶しているキューを一瞥した黒猫状態のシーちゃんが答えた。
「だったら、何故にシーちゃんはオイラの肩にズッシリと乗っているのさ?」
『気分。』
「あぁ、成程ね。」
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「やっぱり凄い眺めだよなぁ。」
「ようこそ、商都へ。」
ちゃんと外門で商都へ入る手続きを済ませて、冒険者ギルドへと向かう。
日が完全に沈んだといっても、流石は首都。道は明るく人通りも多いし、露店もまだ営業中のようだ。
冒険者ギルドも結構な賑わいを見せている。殆どは冒険者ではなく商人風なのは、恐らく明日の依頼を取り付けているんだろう。
「よう来たな。」
「うお?どちら様ですか?」
灰色とも白とも言えない微妙なローブとトンガリ帽子の魔法使いっぽい爺さんが話しかけてきた。
あ、ナーツ市冒険者ギルドの緑のオッサンが白になっただけか。やっぱ各町にはクローンが在中しているんじゃないのか?
「ロクジョウ領からの報告は受けておる。しかし今しがた連絡が入った筈じゃが、昨日の話だったのかね?」
「いいえ、今日ですよ。ここには飛んできました。」
「ほほう、“ゲート”持ちか?」
「いいえ、実際に飛んできましたよ。」
「ほっほ、面白いことを言う。今度是非にその手段を見てみたいものじゃ。さ、此方へ。」
オイラは白のオッサンに奥の一室へと招かれた。
「勇者様、お久しぶりです。」
「あ、こ……ニジーナさん。こんばんは。」
中では、チョコンと小柄ちゃんがテーブルの向こう側で座っていた。




