79) 在庫一斉処分なのね。
詰まるところ、領主のヒトマ・ロクジョウは本邸に軟禁されていた。
部屋から出られないように、幾重にも分厚い壁と魔方陣で封鎖され、完全に外出できない状況になっていたという。
助けだされた時の領主の容体に大きな問題は無く、十分な食事は摂らされていて暇潰しに室内で運動をしていた事によって以前より健康状態は良好であり、明日からでも領主として勤めを果たせる状態らしい。
一方、捕えた護衛パーティ(その1)の証言によると、迷宮に連れ込んだこれまでの冒険者たちは殆ど戻って来る事は無く、戻ってきたとしても扉が閉まるまで追い返して自滅させていたとの事。
また、皮袋に詰められていた魔石は迷宮内の魔物から回収されたモノや、冒険者ギルドから買い取ったモノだった。
亀の魔物はあの階のボスであるが攻略法が既に確立されていて、追い返して自滅させた冒険者の装備品等が吸収され魔道具化しドロップするので、それを着服する算段だったようだ。
「さってと、どうしたもんだろうね……これ。」
「もう、殆どナナシノさん所有の品ですよ?」
さっきの迷宮で出てきたアイテムや宝箱、魔物の討伐部位や素材などがテーブルの上に置かれている。
宝箱については、今もミューが云々言いながら罠を解除したり開錠の作業を行っている。
そしてココは冒険者ギルドの一室である。
迷宮で得られたアイテムの鑑定や査定の真っ最中なのだ。
「討伐部位は、もう要らない。捨てる!」
「ナナシノさん、それ……既にカウントされてますよ。」
「え!?」
「ほら、そこで集計や選別を手伝って頂いてる職員の方が記帳されてましたよ。」
「待って!そこのお姉さん!その討伐部位はオイラのじゃありません!」
「もう受領致しました~。お疲れ様です~。」
討伐部位はオイラ“だけ”が納入したことになっていて、しっかり登録されてしまったようだ……分配しようよ!
ただ、希望しなければ冒険者ランクがAより上に上がる事は無いと言っていたのを信じたい。
これ以上の面倒事は避けたいものだ。変に名前が知れ渡って“36番”が生きていることが公になるのは絶対に避けたい。ホント切実に。
「やっぱり、仮面の方が良いかも知れないなぁ……」
「ナナシノ、どしたの?」
「目立たない方法は無いかなぁ?と思ってさ。」
「ふうん、無理じゃない?」
「ミュー先生、厳しいッス!」
「そんな事より、魔導具の選別しようよ?全部開けたよ。」
机の上にザッと並べられている魔導具にはメモがついており、効果と売却時の値段が書いてあった。
まず、武器系は……使用スキルを持ってないからパス。たぶん使っても怪我する。
続いて防具、恐らくオイラの防具は小柄ちゃんが用意してくれているモノで十分な気がするので、こっちもパス。
「装飾品が多すぎる……」
「選び放題ですねぇ、羨ましい限りです。」
「一番高い売値から見てみるか。」
高いのは装備するとスキルが使用可能になるタイプで、次はルーンの効果が入ってるモノやルーン石そのもの、その次は強度が上がっているモノの順のようだ。
武器、防具とも同じような扱いになっている。
「ミューさんや~?」
「はーい?」
隅の方でステータスプレートを嬉しそうな怪しいような顔で見ていたミューを呼ぶ。
「はい、こっちの武器防具でミューが必要なものを選んでください。それ以外は売り払うから。」
「うぇっ!?ナナシノは使わないの!?」
「あ、そうだね。アールス達にも持って行ってもらうかな。」
「いやいやいや、ナナシノさん?」
「なにかな?ミューさん。」
「確かに、殆どが使えなかったりするモノだけど……売っちゃうの?」
「うん、価値が全然解らない。見た限り、武器防具の装備品は今ので十分だし。」
「そっか、それじゃあアールスさん達を呼んでくるね。」
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「戴けません。さっきも言った様に、僕たちは何も倒していませんから。」
「それじゃ、この売却時の値段で買わない?」
「え?この値段じゃナナシノさんの儲けが減ってしまいますよ?」
「何故に?売った時の値段でしょ?儲けも何も無いでしょ?」
「いえいえいえ、こちら側の品物はオークションに出せばもっと高値で売却できると思いますよ?」
「やだ、面倒臭い。」
「えっ?」
「だから、面倒臭い。オークションに出すのも、アールスの“遠慮も”。貰えるものは笑顔で受け取ってよ?ね?」
「でも、しかし……」
「アールス様、ナナシノ殿の言う通りです。遠慮は度が過ぎると失礼に当たると思われます。」
シュウが助け舟を出してくれた。オイラの言葉だと上手に説得できると思わないからね。
「ナナシノには必要なものは無いの?」
「あるよ?この指輪とか。」
指輪数点から、オイラは有用だと思う効果があるのを見つけて自分の取り分とした。
「え~?それって“魔力回復”の指輪でしょ?しかも効果が凄く薄いやつ……」
「何を仰る、ミューさんや?これって、回復量が凄いことになってるんだよ?」
「ナナシノさんや、それならソッチの指輪の効果の方が大きいじゃない。だから値段が何倍もの高値が付いてるんだよ?」
「解って無いッス!そっちは“固定”でコレは“割合”なんですぞ?」
指輪の効果として“魔力回復”の効果は同じでも、回復量が違う。
一方は単位時間当たり“何点”となっており、もう片方は“何割”となっている。
何故“5点”の方が値段が高いかは解らないけど、“5厘”の方が断然お得なハズなのに。
「んじゃ、両方使ってみるから、どっちもキープするッス!」
「うんうん、使ってみてからの方が良いと思うよ。」
コンコン!
ドアがノックされて、受付嬢が入ってきた。
「ナナシノ様、ギルド通信で伝言が入ってます。」
「あら?誰から?」
「え?宜しいですか?」
「あれ?問題無いと思うんだけど?」
「で、では……ニジーナ・ナイロ様からです。」
「「「!?」」」
アールス達3人が、何故か直立不動の“気を付け!”の状態になっている。ナニそれ?
「あ、あぁ……小柄ちゃんか。」
「「「「!?」」」」
今度は受付嬢も完全に硬直した。パラリと手に持っていた書面を落としたし。
うん、変な呪文でも言ったかな?あ、“小柄ちゃん”は禁句だったなぁ……まずい。




