77) 頼られたので頑張るのね。
「遅かったでは無い……か?は?オイ、何故に貴様らが戻って来るのだ?」
「えっと、戻って参りましたので領内の活動を認めて頂けますか?」
アールスが試練を乗り切ったと報告……っていうか、無理難題を押し付けてきた張本人に対して報告するとか何言ってるの?
小太りオッサンだってホラ、かなり間抜けな顔でコッチ見てるよ?
「あ?そんな勝手なことが認められるワケが無かろう?ヒトマ様の了承も無いのに、な。」
「では、エドマー様は領主様の了承も無く、領内活動の許可を出そうとしていたのですか?」
アールスに代わって冒険者ギルド長が小太りオッサンと対話を始めた。
「はっ!そんな事はどうでも良い。ワシが遣わせたヤツらはどうした?何故戻って来ぬ?」
「その方々は、現在冒険者ギルドで拘束されております。それについて少し事情を御説明頂いても宜しいでしょうか?」
「あぁ?誰だ貴様?拘束だ?何の権限があって領主様の護衛を束縛できると思っておる?すぐさま解放しろ。」
「申し遅れました、ロクジョウ領都の冒険者ギルド長のタダノと申します。以後、お見知りおきをば。」
「では、話が早いな。領主代行の権限を持って命令する。ワシの使い遣った5人を解放しろ。即座に、だ!」
「申し訳ありませんが、その命令は受けられません。」
「ふざけるな!ワシの命令が聞けぬだと!?もう良い!直接話をつける!そこを退けぃ!」
奥から護衛と思わしき数人が飛び出してくる。
「仕方ありませんね。実力行使と行きますか。それでは、ナナシノ様……宜しくお願いします。」
「む、無茶振りしないでよっ!?」
指名されたオイラは、ガックリと膝をつく。アレだ“orz”の格好になった。何故にそこでオイラなんだよ!?
「ナナシノ~!頑張って~!」
「下がった方が良いと思います!皆さん壁際まで退避しましょう!」
「待てい!オイラ一人置いていくの!?」
「はっ!一人で何が出来ると思っておる!?皆の者、小僧共々切り殺してしまえ!」
「あぁ?」
“殺せ”という言葉と、護衛達から発せられる殺気に瞬間的にムカついた。何だか気持ち悪く、逃げ出したい。凄く嫌だ。
「アーススパイク」
『はいな!』
キュッ☆
キューと☆導きの書☆が反応して床から膝下までの石の槍を突出させる。
護衛達は難無く後退して躱す。詰め寄る者と後退する者で丁度良い密集状態になってくれた。
「フィアー、掛かるまで連続。」
『了解。』
シーちゃんには、抵抗されようが掛かるまで何度も魔法を続けてもらう。
状態異常の抵抗に抵抗しても、早々何度もクラスアップした精霊の魔法を避けられるものではないようだ。
「うわぁあぅあえ……」
「ふぎぃあ!」
「……!?」
何故か“当たるまで連続射出”されたアーススパイクに足を砕かれ、フィアーで恐慌状態に陥った護衛パーティ(その2)は戦闘から離脱してもらった。
「殺す?オイラをか?」
「おお!素晴らしい!凄い魔術師だな!どうだ?ワシの配下にならんか!?地位も金も思いのままだぞ!」
「地位?そんな目立つモノなんて要らん。金は生活出来るだけで十分。っていうかオマエから貰っても、嬉しくは無い。」
「だったら、女はどうだ?思いのまま蹂躙できるぞ?どうだ?望むなら何でも出来るぞ!?」
「うるさい。気持ち悪い。ムカつく。黙れ。水弾。」
すっぴょこ☆
小太りのオッサンに強めの水弾を当てた。殺しに来た相手に対して甘いとは思ったが、コイツも捕縛しようと思った。
「ひ、ひぃぃぃ!殺さないでっ!待て!これをっ!」
小太りオッサンは喚きながら懐から何かを取り出している。買収するつもりか?要らんと言ったのに。
ジャラリとネックレスを引き出した。そこからリング状のモノを抜いて指にイソイソと装着する。
「ふ、ふはははは!これで貴様もお終いだ!召喚……降臨……魔を統べる者よ!」
『あ、駄目。』
シーちゃんが珍しく呟いた。何が駄目なんだろうか?
「出てこい、そして抹殺せよ!」
「うお?なんだありゃ?」
指輪から黒い霧……瘴気か?迷宮で魔物が発生する感じの霧が渦巻いている。
黒い霧は小太りオッサンを包み込む。そして悲鳴。
「うぎゃあぁぁあ!ワシじゃない!アイツだ!あの小僧を殺せ!うがぁあわ!」
小太りオッサンが仰け反り、項垂れる。カックンと力が抜けたように崩れ落ちる。
みしみしっ。
小太りオッサンの背中から何か生えた。翼だ、コウモリの様な。
びくん、と大きく一度痙攣してからゆっくりと立ち上がる。
「ワシじゃ無いといっておおおおるうを、ぐああ。ちょよっとま、まてててと……」
小太りオッサンはオイラに向かってドス黒くなった手を翳す。ヤバい感じがしたので、その射線からオイラは避けるように動く。
同時にオリハルコン粘土を盾として死角を作り、且つ放たれるであろう魔法を受け流すように。
ごばっ!
『ほう、オリハルコンか。厄介なモノを。』
「おお?誰?」
小太りオッサンが呟く様に声を発する。しかし、小太りオッサンの声では無い。
翼の生えた小太りオッサンは、近くに倒れている護衛パーティ(その2)に近づいて手を添える。治療か?
『ドレイン』
「っ!?水弾!」
ぼっ
シーちゃんの発言で意図を得たオイラは水弾で止めようとしたが、片手で防がれた。ギルドの壁より硬いってワケか。
2人目に手を翳し終わったところで、オイラへを視線を向けてくる。
『やっと解放されたと思えば、目の前に“勇者”とは、な……面倒な事だ。』
「人違いだ。あと、それ以上“吸うな”。」
『そうだな、もう良い。十分動ける。それよりも、貴様を頂くとしよう。』
「あらやだ、土壁。」
変な翼の生えた小太りオッサン改め、小太りオッサン(改)はオイラへ手を向けて物騒な発言と衝撃波を放ってきた。まぁ、なんとか土壁で躱すことができたのは幸いだ。




