73) 囲まれたら危険なのね。
「あ、また……」
ミューが床と壁を指す。
これ見よがしに壁には色の変わった部分があり、避けた方向に床スイッチが設置されていた。
「おおう、段々と巧妙になってきましたな。そのうち見えない罠がありそうっすねぇ。」
なーんてフラグを立てていたら、その“隠された罠”も発見されたようです。
「ここ、絶対怪しい!触っちゃダメだからね!?特にナナシノ!」
「ミュー先生……何故にオイラだけ名指しなんスか?」
触れたら発動するという魅力的な仕掛けがオイラを誘っている。ほら、仕掛けた人(?)に対して失礼じゃないか。
どうしても発動させたくて、遠くから魔法で押そうとしていたら容赦無く殴られた。しっかり気付かれたようだ。
怪しいといえば、魔物が全く出ないってところかも知れない。
まぁ、魔物が罠に掛かっている、或いは掛からないように出現しないのか。
2時間くらい掛けて、やっと奥の部屋に辿り着いた。っていうか、ココまで一本道ってどうなのよ?
一本って言っても、クネクネと蛇行していて歩き回された感が強いんだが……
恐らく、グルグルと回って最後の詰まりの場所に部屋があるようだ。
「結構、広いですね……あそこに見える台が祭壇ですかね?」
部屋の扉を抜け、中に入ると大きな部屋になっていた。そして中央には台座のような祭壇がある。
部屋というよりホールという感じの、高さ5メートル縦横50メートルはありそうだ。
「では、置きますよ~」
アールスは祭壇へドサッと革袋を置き、走って戻って来る。
「なぁ、ミューさんや。」
「どしたの?」
「あれって、大きなスイッチって事は無いよね?革袋に砂とか詰まってて、重さで作動するような仕掛けとか?」
「うーん、違う気がするよ?罠っぽくない感じがする。」
「怪しいなら、離れましょう。」
アールスがオイラ達の会話を聞いて、革袋を置いた祭壇から離れるように提案した。そして皆で壁まで撤退。
「おおう、袋が膨れてないか?」
「あ、うん。爆発しそうね?」
ずっぱーん!
案の定、袋の中に砂が入っていたようで撒き散らしながら破裂した。
「っていうか、石とか入ってるじゃん。あぶねぇな……」
「え?石!?」
祭壇を中心に10メートルほど離れたところに小石が転がっている。近くに居たら当たって怪我をするところだった、離れて正解だったな。
「みなさん!戦闘準備です!あれは小石じゃなくて魔石のようです!!」
アールスが叫び、シュウとミトクが背負い袋を置き、戦闘態勢に入る。
慌てて、オイラ達も準備に入る。
「あ~、ウサギの部屋で見た様な霧だねぇ。」
「えぇえ~!?どうして中に魔石が?」
「罠で知力を、魔物で戦闘力……実力が無いと領内での活動は難しいという事でしょうか?」
アールスがなんだか良い方向に現状を読み取り、自分に言い聞かせるように呟いた。
「キュー、シーちゃん。勝手に動いて良い、絶対にミューを守って。」
「解った。」
「ミューちゃんだけで良いの?他の人は放置なの?」
「あぁ、余裕があればよろしく。無ければミューだけで良い。」
「任せて~!」
オイラは前に出ながら呟く様に精霊へ向けて指示を出す。
祭壇の周りでは、白や黒、赤や青い霧が渦巻いており中から魔物が出現し始めている。
ウサギ、鶏、馬、牛、鹿、猪、カラス。
「あ、件だ!すげぇ!って……あの馬、首が無いじゃん!何アレ!?馬の首だけ落ちてる!しかも動いてるよ!なんじゃありゃ!?」
「ナナシノ!変な事言ってないで支援魔法!」
後ろから殴りそうな勢いで指示を飛ばすミューに言われるがまま、身体強化の魔法を皆に掛ける。
獣の妖怪シリーズを揃えたような魔物たちに少し感動したけれど、近くでは見たくないな。
早速、出現した魔物がこちらへ向かってくる。
「岩壁、端から端まで。」
すっぴょこ☆
魔物の眼前に壁が左右と天井まで突出し、部屋を完全に分断した……が、一部が崩れる。恐らく“刎兎”と呼ばれた白角ウサギだと思う。前にも壁を破壊してたもんな。
「やっぱり、白角ウサギか。」
「ナ、ナナシノ?」
「え?壁?何?何かの罠ですか?」
「柔らかい土壁、取込んだら石で囲って水没。」
「わかった!」
すっぴょこ☆
すっ飛んでくる白角ウサギを土壁で包み込んで捕獲し、石の壁で覆って箱を作る。あとは中を水で満たすだけ。
その間にも白角ウサギが開けた穴から他の魔物がワラワラと出てくる。
「ゴメン、適当にやっちゃって。手段は任せる。」
「うん。」「了解。」
すっぴょこ☆
ずどん、バシン、ふごぉ。
視界の隅に見えるオイラの魔力ゲージを確認しながら、袖の中でミトンを装着する。
さらに中からミトンで砂利を一握り。
もがぁあぁあ!
☆導きの書☆と精霊ズが放っている多様な魔法攻撃を抜けて、1体の魔物が火だるまになりながら飛び出してきた。魔物はナニか……解らん。
「うらあぁっ!」
魔物に向かってオイラは砂利を投げる。
砂利は魔導具のミトンにより質量と速度を増して魔物へ襲い掛かる。
ガシャン。
魔物の突進はオイラに届くことなく粉砕された。
次の魔物が飛び出す前に、再度砂利を握りしめる。
ずもっ、びたん、ぶち。
次の魔物は突き出た地面により天井へと打ち上げられる。そして、天井から飛び出た岩により挟まれて動けなくなった。
「ナナシノ、守る意味無いじゃないのさ?全然来ないし!」
キューがオイラの前に出て、踏ん反り返っていた。




