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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第四幕:拾ったモノが、全てトラブルだった件について。
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71) 仲間の訓練も大事なのね。

 無言のまま宿屋に到着し、アールス達と食堂で合流する。

 夕食を皆で摂り、その日の報告をお互いにしていた。

 少々イッチーとの別れで落ち込んでいたオイラを気遣う様に、ミューが彼是と説明をしてくれていた。


「そうですか、部屋の片隅で“刎兎”がミイラ化していたのですか……ツイていましたね!」


 アールスは羨ましいですねと嬉しそうにミューの話を聞いている。

 今回の白角ウサギ、“刎兎”と呼ばれているらしく、触れたモノを破壊する特性が厄介な魔物だという。

 ただ、オイラ達で魔物を倒したことは内諸にする事にした。

 ミューが言うには、あのクラスの魔物をFランク2人で倒すとは考えられず、逆に盗んだ等の疑いが掛けられそうだと……

 と、いうわけで“何故か落ちていた”という事にした。勿論、冒険者ギルドで確認すると、魔物に所有権は無いので大丈夫なのだそうだ。

 一応、“強奪してきた”の疑いを解消するために、ステータスプレートによる“冒険者の魂の吸収”の有無の検査も受けた。

 初心者講習で受けた“経験値”の説明では倒したモノの魂を吸収すると聞いたので、冒険者の魂のパターンの確認をしたのだと思う。


「僕たちの探索も、良い稼ぎになりましたよ。出てきた物も思ったより高値で引き取ってもらえたので、ココの滞在費は浮きました。」


 アールス一行の迷宮探索も、成果は上々だったようだ。

 食事を済ませた後は成り行きで解散する事になり、各々の部屋へ戻り始める。

 オイラはいつもの様に演習場に向かうのだが、今回もミューがついてきた。


「えっと、今日ね何度も受け流しをしたからスキルが出たの!」

「凄いな、それで盾を買って喜んでたのか。」


「うん!ナナシノ、受け流しのスキル上げに付き合ってくれない?」

「うお?オイラに武術スキルなんて無いぞ?」


「そこは大丈夫!水系魔法の“水弾”を受けると受け流しのコツを掴めるらしいの。」

「なるほど、何かしらの攻撃を盾で受けるという練習か。」


「うんうん、水系の魔法を使う事でナナシノのスキル上げにもなるでしょ?」


 演習場に到着し、道場に移動する。

 道場と言っても、大広間を煉瓦の様な壁で仕切り、複数の部屋に分けられているだけだ。

 やっぱり、この時間帯は利用者が殆ど居ない。食後の運動という習慣が無いのかも知れないな……


「んじゃ、お願いしまーす!」

「おう!」


 ☆導きの書☆を片手に“水弾”を指示した。


「水弾、握りこぶし大、目で追える速度。」

すっぴょこ☆


 ☆導きの書☆に魔力を通しながら、ふと思った……使った事の無い魔法だと。

 思わず射出先を盾を構えているミューではなく、壁に向けた。


 どびしぃっ!


「あ、あぶねぇ!」

「う……わ?」


 壁が半分ほど崩れた……積んだだけの煉瓦の仕切り壁といえども威力が強すぎだ。ミューを盾ごとぶっ飛ばす気か?


「うをぃ!誰の目だったら追える速度なんだよ!?」

すすすっ☆


 オイラの両手にガッチリ掴まれた☆導きの書☆は、挟んだ栞を隠すように答えた。「失敗しちゃった!」って感じ、か……?


「ミュー、ごめん!ちょっと待って!威力の調整するから!」

「了解~」


 “水弾”を30発ほど撃ち試して、射出速度を調整した。感覚的には“水玉風船”を射出している様に思える。


「んじゃ、撃つぞ!」

「はいな、こーい!」


 最初はシッカリ受けられるように単発で撃ち込む。

 

 タン、タン……パシュ!パシュッ!


 単調な作業に見えるが、ミューには受け流しの訓練、オイラには的中精度の訓練になる感じがしている。


「2連射だ。」

すっぴょこ☆


 タタン……パシュビシ!


「にゃっ!?」


 1~2分くらいで慣れてきたので、2連発撃ってみた。案の定、姿勢を崩されて驚いている。

 オイラの方向に死角ができるように撃ったあと、その死角から更に撃ち込んだだけだ。


「うん、受け流した後の“残身”がなってない。連撃に対応できるように死角を意識して動くと良いよ。」

「死角……?」


「そう、水玉を受け流した後、盾で見えないとこが死角。盾で相手や魔法陣が視界から消えないような動きをすればいい。」

「相手や魔法陣が見える位置……うん、解った!やってみるね!」


 なんて言ってみたが、オイラも簡単にそういう事が出来るわけじゃないだろうな……

 試しに単発で撃ってみると、何と無くミューの動きが変わってる気がする。

 続けて2連発撃ってみる。何度か撃ってみるとコツが掴めたようで、体勢が崩れなくなってきた。


 タタン、タタン……パシパシュ!パシュシュ!


「ほほう、なんだか楽しくなってきたぞ。」

「ナ、ナナシノ……顔が怖いよっ!?」


 オイラは死角を探しながら、的確に撃ち込んでいく。

 ミューは死角に注意しながら魔方陣を見極めて、受け流していく。

 なんて、10分ほど繰り返すとミューが音を上げた。


「ナナシノ!ごめん、疲れたよっ!ストップ!!」

「あ、あぁ……オイラの方こそゴメンな。つい楽しくなってな……」


 休憩中はミューへの盾と回避と、カウンター攻撃の講義となった。

 特にカウンター攻撃については、格闘ゲーム等のモーションを懐かしく思い出しながら熱く語った。


 休憩の後は再度受け流しの訓練、続いていつもの魔力消費訓練を行って、本日は終了。


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