67) 中で何が起こっているのか、解らないのね。
「このタイプの迷宮はハイクラスの魔物が出現すると、扉が一定時間は開かなくなるの。」
「何故に?」
「知らないわよ。そういう仕組みなんだもん。」
「なるほど、そういうものなんだな。」
「あ、宝箱が出てる!」
「マジか!?」
部屋の中央に宝箱が出現していた。
縦横15センチ、幅30センチくらいの大きさだ。
「ねぇ、ナナシノ!開錠スキル使って開けてみるね!?」
「いや、そこは罠の確認じゃないのか?」
「あ、そうだった。」
「危ないなぁ、額に矢が刺さってからじゃ遅いぞ?」
「うんうん、ゴメンね?それじゃ、ナナシノは倒した魔物の解体をお願いね?」
「軽いな?まぁ、了解。」
ミューは宝箱を楽しそうに眺めて?云々唸っている。
オイラは赤角ウサギを解体して魔石を取り出し投げ捨てた。肉のほうは部屋の隅に置いてミューの作業を眺める。
なにやらミューの周辺で、白い煙が湧き出している。罠の解除に失敗したのか?
「なっ!ナナシノ!?魔石っ!魔石はどうしたの!?」
「お?捨てたけど?ウサギの魔石は捨てるんじゃなかったのか?」
「バカッ!ハイクラスの魔石は回収しないとダメじゃない!」
「何故に?」
ミューは宝箱を部屋の隅に投げ捨て、戦闘態勢に入ったようだ。
「魔石を投げ捨てると、連闘になるのよ……うっわ、あの色はちょっとヤバいかも。」
「ご、ごめん……次はオイラも戦闘に参加する。」
白い靄が渦巻き、その中央に真っ白いウサギが現れた。ちなみに角も真っ白だ。
大きさは赤角ウサギの半分くらいで、黒ウサギ同様の大きさだ。
出現した白角ウサギはプルプルと首を振ると、ミューに一直線に向かって飛んだ。飛び跳ねたのでは無く“飛んだ”のだ。
「にゃっ!?」
物理法則を無視した様な行動に驚きつつも、ミューは白角ウサギの攻撃を上方へ受け流した。
「おお!?」
白角ウサギは落下する事もなく直線的に飛んでいき、天井を蹴って地面へ着地した。そして再度跳躍。
びしっ
ミューは白角ウサギの攻撃を盾で受け流すことができなかったようだ……うおっ!盾が割れている!?
「ミュー!」
「大丈夫!腕は飛んでない!」
壊れたのは盾だけだったようだ。転進する白角ウサギに対して、盾を捨て両手で剣を構える。
「土壁。」
ミューに向かった白角ウサギの突進をオイラの土壁で受ける。土壁は崩れたが、突破されずに済んだ。
「土壁。」
再度土壁で跳躍突進を受ける。白角ウサギの方も正面から当たらずに微妙に逸れて行く。恐らく、衝撃によるダメージは白角ウサギに無い様に見える。
さらに、土壁はまたもや見事に崩れている。
数回、土壁で突進を受けていたが白角ウサギの行動に変化が発生した。
少々のタメを作って、土壁突破後に連続で突進をしてきた。だが、土壁の連発はオイラも可能なので何とか往なせている。
白角ウサギが“タメ”を作る時間を狙って投石や魔法を撃ってみるが、“タメ”をキャンセルしてあっさりと躱される。ミューの斬撃も距離を取って避けられている。
「あら?」
白角ウサギは奥の壁際まで引き下がった。たぶん、タメの時間を稼ぐのだろう。
「ミュー!こっちへ!」
「わかった!」
白角ウサギは長時間のタメと闘気らしきものを纏った。視界の片隅に赤文字で“警告”という表示が出ている。ここにきて、眼鏡の機能を新発見っすか……
こちらも単に待つことは無く、対応を考える。☆導きの書☆に手を添えて精霊達に指示を行う。
「柔らかい土壁、分厚く。受けたら演習場の訓練と同じ要領でアレを圧殺する。」
すっぴょこ☆
「はいな~!」
「承知。」
「御意。」
直感で土壁を発生させた。
「土壁。」
ぼすっ。
タイミングはバッチリだったようで、跳躍してきた白角ウサギを柔らかい土壁で取込んだ。
続いて、キューが固い土壁で柔らかい土壁を囲む。
あとは演習場でやるように、各々が好き勝手に土壁の箱内に魔法を放つ。
「カウントダウン開始、9割……あら?キュー以外は魔法止めて。」
何故かレーダーの警告が既に消えていた。白角ウサギの危険度レベルが下がったのか?
「ミュー、ドアが開くか確認して。」
「解った。」
ドアは簡単に開いた。ということは、白角ウサギはダウンしたかもしれない。
オイラ達とミューは開いたドアまで下がり、逃げる準備をしてから土壁箱を解除した。
「あ……」
「おおう。」
中から骨と皮だけになった白角ウサギのミイラが、コロンと転げ落ちた。
「ゾンビアタックとか……ないよな?」
「なにそれ?」
また、部屋の中央に宝箱が出現していた。
その宝箱の出現で、オイラは白角ウサギを倒したことを確信しましたとさ。




