66) 回避は重要なのね。
「ナナシノ!この方法凄いよ!?」
「うんうん、オイラもココまで効率が上がるとは思わなかったよ。凄いね!」
用意した袋一杯に倒したウサギを詰め込み、迷宮を後にして冒険者ギルドへ向かう。
大きな袋は、重力魔法で軽くしてあるので問題は無い。ちょっと視線が痛いだけだ。
自分の体以上の大きな袋を持ち運んでいるからね……これが風船なら飛んで行けそうな対比だし。
「買い取り、お願いしまーす!」
ミューが元気良く納品用のカウンターで受付嬢を呼ぶ。
「今回はウサギ35体になりますね、銀貨3枚と銅貨50枚になります。」
受付嬢は“今回は”と言った。
そう、既に今日の納品は4度目になる。
狩り作業も受け流しからのコンボに加え、ミューに掛ける身体強化魔法を体質向上に切り替えた。
それによって1体に掛かる時間はさらに減り、半日で銀貨15枚の稼ぎになった。最初の使用料を引けば12枚だな。
「次で終わりにするねー」
「おう、ラスト頑張ってな!」
そうして、また迷宮に戻り小部屋でウサギを乱獲していく。
袋も一杯になろうかとした時、イベントが発生したようだ。
「ナナシノ、逃げよう!」
「お?どうした?」
ミューはダッシュで扉を開け……ようとしている。
「あっ!やっぱり扉が開かない!」
「ヤバいのか?」
部屋の中心では、赤い靄が渦巻いている。
「時間が経てば扉は開くから、開いたら私に合図して通路へ逃げて!」
「ミューはどうするんだ?」
「大丈夫!私は時間を稼いだあと、隙を見て逃げるから大丈夫!」
現れたのは、角の生えた1メートル程の真っ赤なウサギだった。黒ウサギの3倍くらいのサイズか?
赤角ウサギは黒ウサギ同様に真っ直ぐ突進を仕掛けてきた。
ミューは盾を眼前にシッカリ構えて突進を受け、1~2歩後ろに下がりながらも耐えた。
これはマズイ。このまま何度も耐え続けられる様には見えない。
「ミュー!まともに受けるな!盾を横に傾けて受け流せ!」
次の突進はちゃんと受け流した。受け流しつつ剣で赤角ウサギに攻撃するが、毛皮は相当固いのかダメージは入っていないようだ。
3度ほど突進と受け流しを繰り返したあたりで、ドアが開くのを確認できた。
「ミュー!開いたぞ!」
「わかった!」
オイラが叫ぶと、ミューが返答する。しかし、オイラの声に反応したのはミューだけではなかった。
合図を送ったからか、ドアを開けて無防備になっていた所為か解らないが、赤角ウサギのターゲットがオイラに変わった。
「ナナシノ!避けて!」
慌ててドアから離れると、開いていたドアが赤角ウサギの突撃により閉じられた。
「あぶねー!殺す気か!?」
「何言ってんの!?逃げて!」
赤角ウサギはオイラへ向かって再度突進をしてきたが、ダッシュで躱す。
「単純な直進って、芸が無いぞ?」
☆導きの書☆を背中から取り出し手を添えて魔力を流し込みながら、突っ込んできたウサギへ反撃を試みる。
「土壁で打ち上げ、叩き落とす。」
ずどん、がばん。
土属性の魔法で地面を突出させ、それを斥力魔法で加速し、突進中のウサギを叩き上げる。
続いて天井を盛り下げて、これも斥力魔法で加速。宙に舞っているウサギを叩き落とす。
「ぶっ飛べ。」
さらに壁を突出させて、バウンド中のウサギをドアの反対側の壁まで突き飛ばした。これで扉から逃げる時間は稼げたな。
「ミュー!逃げるぞ!」
「え?えっ?」
ドアを引くと、あっさりと開いた。ウサギの突進で壊れたか?ラッキー!
「ミュー!開いたぞ!何してんの!?」
ミューは呆然と立ち竦んでいる。慌ててオイラは引き返して彼女の腕を掴む。
「ほら!逃げるんだろ!?行くぞ!」
「ナ、ナナシノ……」
崩れるように座り込み、呟く様に名前を呼ばれる……
これは……もしかして実は重傷を負っていて最後の気力で持ちこたえていたってアレか!?
「ミ、ミュー!?大丈夫か怪我は浅いぞ!?ほら行くぞ!」
オイラは重力魔法でミューを軽くして持ち上げ、ドアへダッシュした。
「ちょっ!?ナニ!?ええっ?ま、待ってナナシノ!」
「大丈夫!すぐに治療院へ運ぶからな!シッカリ意識を保て!」
「違うから!ナナシノ!怪我なんてしてないから!」
「おうふ!」
殴られた。腕の中で元気に暴れるミューに殴られた。ビックリした。
「大丈夫だから、降ろして!」
「わ、解ったから暴れるなって!?」
重力魔法を解きながらミューを降ろす。
もちろん、突き飛ばした赤角ウサギへの警戒は解いていない。
「ナナシノ?アレ……もう死んでるよ?」
「おお?体当たり専門の魔物がアレくらいの衝撃で死なないでしょ?」
赤角ウサギへ視線を戻すと、ピクリとも動いていないのが解る。しかし、死んだ振りかも知れないぞ?
ミューがドアを開ける。さっきと同じく簡単に開いた。
「ね?」
「はい?」
ね?ってナニ?誰か説明をお願いします。




