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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第四幕:拾ったモノが、全てトラブルだった件について。
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65) 対ウサギ戦なのね。

 眼鏡越しに見える“魔力残量”のバー表示の隅に、僅かながら空白があるのが解る。

 寝ると完全回復ではない事は解っていた。夜中に目が覚めた時に確認したからね。

 しかし、ここまで魔力を使ったり回復したりを繰り返しているのに“スキル”が開花しないのは何故だろうか?

 属性魔法や行使、書写などは気が付いたら取得していたのに基準が解らん。


 まぁ、それよりも……だ。魔力の回復をどうすれば良いのやら。

 スキルとして無いのなら、魔力吸収の腕輪のように魔導具などに頼らないとダメなのかも知れない。

 魔力を有効に使えてると思てはいないが、やはり鍛えて最大値が上がるのは面白い。

 これ以上休息しても回復しないのなら、最大値を増やしても無駄なのか?無駄でも上げてみるべきか……悩みどころですな。


「ナ、ナナシノ……起きてる?」

「ん?起きてるよ、おはようさん。」


 考えても良い案が出るはずも無く、横になりながら唸っているとミューが声を掛けてきた。


「どしたの?調子悪い?大丈夫?」

「あ、ゴメン。心配させちゃったね。」


「今日の迷宮は止めとく?」

「いやいやいや、大丈夫だって。ちょっと考え事をしてただけだよ。」


 オイラは元気よく起き上がって伸びをした後、洗浄の小部屋に入って浄化と着替えを済ませた。

 既にアールス達とミューは支度を済ませていて、皆で食堂へ向かう。


「さて、明日に領主と会うとして、今日は迷宮へ潜る事になりました。」


 珍しく、アールスが率先して喋りだした。


「全員で入ると効率が悪いので、ナナシノ殿とミューさんには申し訳無いですけど……分かれて潜る事にしますね。」

「了解。」

「うん、解ってるよ~」



~~~~~~~~



 食事を終え、冒険者ギルドに立ち寄って迷宮へ入る許可を取る。迷宮の管理費用としてお金が掛かるようだ。

 とりあえず、料金の銀貨1枚を払う。頑張れば元は取れるらしい。

 あと、素材になるモノはギルドで売る事も可能だとか。また、素材売却時に事後承認型のクエストも達成できる。

 受付嬢から、低階層で対象となる魔物と得られる素材のリストを手渡された……


 翻訳機能の解釈では、兎や兎、更に兎……


「ウサギしか居ねぇのかよ!?」

「低階層だもん、仕方ないよ。」


 あ、牛が居る。

 いや待て、牛じゃねぇ「件」ってなってる……妖怪かよ。



~~~~~~~~



「ナナシノ、危なくなったら合図するから逃げるのよ?」

「お、おう。」


 冒険者ギルド裏から迷宮1層目である演習場を抜け、2層目の階段を降りる。


「えっと、ココから先は、素材リストの裏に書いてある地図の通りに進むのよ。」

「あ、ホントだ。地図になってるや。」


「ナナシノ……緊張感ゼロね。」

「そうか?そういや、前の迷宮の時もそんな感じの事を言われたな。」


 しかし、地図といっても一本筋の通路の両側に扉があって、小部屋の中の魔物の名前が書いてあるだけだった。


「あ、ココ空いてるよ~」

「そこにする?」


 地図には“兎:F以下”とだけ書いてある部屋だ。恐らく冒険者ランクFでも倒せるレベルの魔物なんだろうな。


「ナナシノは避ける事だけに集中してね!」

「おう、任せろ!」


 ミューは背中から左腕に盾を持ち替え、ショートソードを右手に構える。

 オイラはミューと自分に汎用タイプの身体強化魔法を掛ける。


「う……わっと!ナナシノの強化魔法って凄いね!私頑張るからね!」

「おう、シッカリ稼いでくるんだぞー」


 こちらの準備を待っていたかの如く、部屋の中央に黒い靄が渦巻き、黒ウサギ型の魔物が形成される。

 エンカウントではなく、部屋に入ることで湧き出すタイプの迷宮なのかも知れないな。


 戦闘開始。

 ミューはウサギに向かって剣を振るうが、ウサギはバックステップで身を躱して突進をする。

 ウサギの突進をミューは盾で受け止めて、再度剣を振るう。しかしバックステップで躱され……

 3~5回は同じ事を繰り返し、衝突のダメージで動きが鈍くなったウサギを仕留める。


「ナナシノ、やったよー!」

「お、おう。凄いな!」


 ミューは徐に倒したウサギに解体用ナイフを突き刺し、体内から魔石を取り出す。

 倒したウサギを部屋の隅に置くと、魔石を部屋の中央付近に投げ捨てる。


「おお?魔石は回収しないのか?」

「ナニ言ってるのよ……次が出てこないじゃないのさ?」


 捨てられた魔石は床で砕けると、また黒い靄が発生する。そしてウサギが出現した。

 再び戦闘開始。

 ウサギはミューの剣戟を躱して突撃する事を繰り返し、最終的に疲労で動けなくなった所で倒される。

 そういった作業を5度ほど繰り返したところで小休憩になった。

 魔物から魔石を取り出さないで放置すると次は湧かないようだ。


「どう?ナナシノ、結構戦えてるでしょ?」

「うん、あまり接近戦は見たことが無いけど、凄いと思うよ。」


 まともな接近戦と言えば、召喚された後に模擬戦と称するイジメにあった時以来だな。


「ミューさんや。」

「なに?ナナシノさんや?」


「ウサギの突進を受ける時、盾を上に傾けてごらん。」

「上に?どうして?」


「少し効率が上がるハズだから。」

「うん、やってみる。」


 こうやってオイラはミューにウサギの突進を上方中空に受け流し、着地を狙う方法を提案した。

 いわゆる“カチ上げ”からのコンボってヤツだ。格闘ゲームでやってたのを思い出した。

 結果、3倍ほど効率が上がりましたとさ。


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