64) やっぱり鍛錬は大事なのね。
「えっと、ナナシノ……何してたのよ?」
「なにかな?ミューさんや。」
「あの土で出来た箱みたいなモノがナナシノの魔法なの?」
「あぁ、あの箱の中に他の魔法を展開してた。」
「それじゃ、ナナシノが何の魔法を使うか解らないじゃないのよ。」
「あら?そういえばそうだよね。ゴメンゴメン。」
「他には何系の魔法が使えるの?」
「えっとね、得意なのは無属性の力場関係と身体強化の魔法。あとは魔導書任せになるけど、全属性。」
「え?変な事言ってるよ?一冊の魔導書で全属性が使えるの?」
「あら?変なのか?今まで普通に使ってたんだけど?」
「お爺さんの形見って言ってたわよね?それって、レア系統の魔導書?」
「あ、そういえばそんな事を言った気がするけど、たぶんそのレア系の魔導書だと思うよ。そう言われたし。」
「そっか、納得。でも、見たかったなぁナナシノの魔法。」
「んじゃ、見る?」
「良いの?魔力切れになる寸前じゃないの?大丈夫?」
「うん、大丈夫。」
そっと☆導きの書☆に手を置き、使用魔法の注文を行う。
「炎の魔法、規模は小さく射出速度は速く、威力と効果時間は適当でお願い。」
すっぴょこ☆
☆導きの書☆の栞が軽く頷くと小さな魔方陣が宙に描かれ、蝋燭の灯ぐらいの青白い炎が出現する。
「ファイア」
オイラが壁を指差し呟くと、ポンと瞬間的に30メートル先の壁にその炎が貼り付いた。魔力残量は……数%程度しか無い、使いすぎだろ?危ないじゃないか。
「こんな感じです、如何でしょうか?」
「あ、うん……ちっちゃいね?一応全属性使えるって言ったけど、あんな感じ?」
「どうだろね?そうじゃないかな。実は、土壁以外まともに使った事無いのよ。」
「そっか、うん。戦闘で使うものじゃ無いかもしれないね……でも、身体強化魔法は凄かったよ!?あれは自慢できるよ!」
妙な感じの励ましを受け、演習場を後にした。次は修練場だ。
「ねぇ、ナナシノの得意な武器ってナニ?」
「投石。」
「へ?」
「投石だってば。」
「い……石を投げるっていう投石?」
「うん。」
「えっと、武器だよ?ナナシノが使う武器。」
「刃物なら、解体用のナイフとか包丁とか使えるけど?」
「あぁ……どうしよ?そだ!それじゃ、石を投げてみてよ?」
「了解。」
オイラ達は弓やダーツなどの練習場に向かい、中で的らしきものを確認する。
的は丸太を横にして同心円状に円が描かれ、徐々に離れた位置に置いてある。
オイラは軽く重力魔法を絡ませた小石を投げて次々と的に当てていく。
「それじゃあ。」
すこーん。すこーん。
「凄い、全部当てたね。」
「うん、無属性魔法と投擲スキルのお蔭かな。」
「そっか、ナナシノは精霊魔法主体なんだね?」
「うお?何故にそうなる?」
「だって、小石が武器って変だもの。」
「変かな?結構良い感じで使ってたんだけどなぁ。」
「明日は私が前衛でナナシノが後方支援で行こうね?ちゃんと護るからね。」
「了解、身体強化魔法をシッカリ掛けるよ。」
そのあと、オイラは小石や砂利を投げ続け、ミューはショートソードを使うと言って別の場所に向かった。
~~~~~~~~
「ナナシノ……ずっと投げてたの?」
「お?あ、あぁ。あれ?そんなに時間経ってた?」
つい、投擲スキルが上がるのが面白くて熱中し過ぎたようだ。お蔭で思った所に魔法無しでも当てられる様になった。
また、軽く魔法を連動させて投げても当たるので、良い感じになってきた。
ただ、調子に乗って魔力を込め、強めに投げたら的が壊れたのには驚いた。次に加減して投げた隣の的は石がめり込んでしまったし。
誰も見ていないので修理代を請求されることは無いと思いたい。
だいぶ遅くなってきたので、武道場から出て宿屋へと向かう。
「明日は頑張るからね。」
「あぁ、よろしくお願いします。」
宿では、昨日と同じ様な大部屋だったが、アールスは一区画分を用意していてくれた。寝返りを気にしないで良い広さだった。
まぁ、大部屋の場合は身の危険は無く荷物の心配があるが、シッカリしていれば盗まれることは無い。
そして今回は突発イベントも無く十分に睡眠をとる事ができた。
~~~~~~~~
朝、目を覚ましたオイラは自分の魔力残量に異変が起きている事に気付いた。
寝ている最中に誰かにオイラの魔力を吸ったり使われた事が無い確認をとった上での判断だ。
「あぁ……とうとう来たか。」
それは、一晩寝ても魔力量が全回復していない事であった。




