63) 門前払いと暇潰しなのね。
目的地の領内へ入り、アールス一行は現在領主の館の門前に居る。
そして現在、途方に暮れている。
「ロクジョウ領主にお目通りを願いたく、アールス・アッシュ・アーキス・アクアマリナが参りました。」
「領主は忙しい為、“明後日にせよ。”との事だ、明後日に参られよ。」
門番は確認をするまでもなく、即答だった。
まだ、日は沈んでいない。寧ろ夕飯の準備をしても間に合うと思える時間だ。ちょっと晩餐を期待してたのに残念だ。
領主不在か?
「さって、今日は解散?」
「そ、そうだね。ちょっと早いけど解散しようか。」
約2時間後の18鐘に宿屋に集合ということで、自由時間となった。
オイラとミューは冒険者ギルドに立ち寄り、“訪問クエスト”の手続きを済ませ、微妙な残り時間を持て余していた。
カウンターで受付嬢と楽しそうな会話を済ませたミューが戻ってくる。
「ねぇ、ナナシノ?」
「どした?トイレか?」
「うっわ、子供扱いされちゃったよ!?」
「冗談だよ。んで、どしたの?」
「あ、うん。この街にもね、初心者向けの迷宮があるんだって。」
「ほうほう、初心者向けですか……」
「出現する魔物のレベルが低くて、迷う事が無い構造なんだってさ。」
「迷わない迷宮ってなんだよ……」
以前に潜った迷宮の事を思い出した。入口から放射状に通路が伸びて、先に部屋があるタイプだった。
あれも迷う事がありえない構造だったよなぁ。あそこも初心者向けだったのかも知れない。
「えっと、明日に何もすることが無かったら……一緒に潜ってみない?」
「そだね、時間はありそうだし行ってみるか。」
よし!と、ミューは気合充分にガッツポーズをとる。そんなに迷宮が楽しみなのかね?
「そんな事より、ココに演習場ってあるのかね?」
「そんな事って……まぁ、演習場はあるみたいよ?」
カウンターで確認すると、確かに演習場はあるようだ。しかし、今まで見てきた河川敷ではなく地下に設営されていた。
不思議に思って聞くと、さっきの初心者ダンジョンの1階層を無理矢理拡張して作ったらしい。
ココの迷宮の壁は魔法を吸収する構造で、大きな魔法を撃っても大丈夫なんだとか。
魔法の演習場の上には武道場があって、武術の練習もできるようだ。
「なんだかよく解らないけど、後で行ってみるか。」
「ナナシノって、やっぱり変だよね。パーティメンバーの募集とか勧誘待ちでも無いのに演習場行くとか。」
「“やっぱり”ってナニ?変か?単純にスキルや魔力容量の底上げに勤しんでいるだけなんだが?」
「魔法の無駄撃ちするくらいなら、迷宮で魔物に向かって撃ったほうがマシじゃない?」
「そんなに魔物居ないじゃん?1時間に10体居るか居ないかじゃない?」
「遠慮無しの最大火力で10発も撃てば魔力も尽きるでしょ?」
ミューは何か勘違いでもしているのだろうか……迷宮の通路で最大火力の魔法を撃ったら、オイラ自身にも被害が出るんだぞ?それを撃てと?
「ムリムリムリ、最大火力で撃ったらオイラが危険だってば。制限して回数稼がないと駄目だって。」
「そなの?魔力量そんなに少ないの?それは危ないねぇ。なるほど~。」
魔力全部を注ぎ込んだら魔方陣が壊れちゃうってば。それは何度か経験済みだから。うん。
「まぁ、コッソリと隅の方で練習するから大丈夫だ。」
「うんうん、頑張って!」
ムズ痒い視線を受けて集合場所の宿屋へと向かう。ちょっと早かったがアールス達は既に居た。
宿屋の食堂に入り、夕食を摂る。肉が迷宮産の魔物と聞いてビックリした。迷宮で死んだ場合は迷宮に取込まれると思ったら、なんと持ち帰ることが可能らしい。
そして、初心者迷宮と言われるだけあって狩りは簡単との事。
恐る恐る食べてみたが、至って普通の肉だった。言われなければ解らないレベルだ。味も淡白で特筆する点も無し。
食事中に明日の方針が決まった。
5人で迷宮探索ツアーだ。
とは言っても、E~Dランクのアールス達は深層へ向かい、オイラたち初心者は低階層ということで、2パーティにて別々に探索を行う事になった。
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そして、オイラ達は演習場へ来ている。
何故かミューが横に居る。
「ミューさんや?」
「なーに?」
「貴女は修練場で訓練するのでは無いでしょうか?」
「ナナシノの魔法を見学しに来ました~」
「披露する程のモノじゃないんだけどなぁ……」
「でも、パーティメンバーの技能って知っておく必要があるんじゃないかな?」
「まぁ、そうだけどね。」
オイラの合図と共に、キューが土壁で1メートル四方の箱を形成する。
続いて、☆導きの書☆とキュー&シーが適当に箱内に魔法を連発する。
オイラも☆導きの書☆を通して魔法を使う。箱の中で何が起こっているかは解らないが、色んな魔法が混濁しているんだと思う。
「イッチー、適当に魔法を箱の中に撃って良いよ。」
『適当とは如何に?魔力の残量が解らないと不味いのでは?』
『大丈夫、ナナシノは魔力バカだから、止める合図が出るまでバンバン撃っちゃえ!』
「イッチー、魔力残量はオイラがカウントダウンするから大丈夫。気にしないで使って頂戴な。」
『承知、では……参る。』
眼鏡の視界の隅に表示される魔力量のゲージを見ながら、魔法を使う。
魔力使用者が増えた事もあって、総量の1割が約1分程度で減っていく。
「7割……6割……」
土魔法で形成された箱から、ゴモゴモと音がするが壊れることは無かった。壊さない程度に威力の調整がされているのか、キューが頑張って押さえているのか。
まぁ、毎日やってりゃ要領も解ってくるわな。イッチーも加減してくれているようだし。
「2割……1割……よし、終了だ。」
終了の合図と共に土の箱が崩れる。キューとイッチーはオイラの袖に入って行った。
オイラの後ろではミューが唖然としていた。そういえば10分近くの間、黙っていたなんて珍しいな。
「えっと、ナナシノ?何してたのよ?」




