46) クエスト受け損ねたのね。
オイラは小柄ちゃんに返信を書いたあと、クエスト掲示板を確認した。
やっぱり採取や支援等の依頼が多く、討伐や護衛などの依頼は無かった。
(よく間違えるから、採取系は苦手なんだよなぁ……)
「先生、質問です。採取系が苦手で支援も通り名で受け付けてもらえないので、他にランクを上げる手段ってあります?」
「あ、ハイ。ありますよ?例えば倒した魔物等の確認部位の納品や素材等の取引で上げられます。」
なるほど、魔物を倒せるだけの実力を認めてもらえば良いのね。
「でも、素材の取引でランクが上がるってのは買ってきて納品しても上がるよね?」
「えぇ、上がりますね。そういう手段で上がったとしても、身に合わないランクになって自滅しますからね……大丈夫です。」
自滅って……サラッと恐ろしい事言うよな。まぁ自業自得なんだから仕方ないな。
「んじゃ、討伐部位でランクを上げる事にします。どうすれば良いですか?」
「それでは、納品のカウンターへ行きましょう。こちらです~」
初めての迷宮で手に入れた“カニダンゴムシ”の討伐部位を提出する。
討伐部位とは魔物単体が複数持っていない器官であり、役に立たない部分が設定されている事が多い。
カニダンゴムシの討伐部位は第5脚の対にある右側部位で、食べられもしないし使えない形なので貰っておいた。
「えっと、討伐部位なんですけど……これでどうでしょうか?」
「あっ、凄いですね……偶然倒せたとしても、すぐにランクが上がりますよ。」
「んじゃ、取り敢えず持ってても仕方ないので、全部出しますね。」
「えっ!?一本じゃないんですか!?」
日が経っているので、赤くなった脚もあるが、そのまんま色の変わっていない青や黒の脚を全部出してみた。
「どんなモノでしょうか?ランク2個ほど上がります?」
「ぜ……全部で16本ですか?しかも上位種や変異種も含んでいますね……」
ランクが2つほど上がれば、低ランク迷宮への単独探索が許可される。つまり稼げるというわけだ。
またもや、受付嬢の表情が強張っている。何かしたかね?
「申し訳無いのですが、一応確認を取らせて頂けないでしょうか?少々お待ちくださいませ。」
受付嬢は部屋の奥へ行き、ステータスプレートと上司?を連れてきた。
「すいません、見合ったランク以上の部位をお持ちの場合ですので、確認させて頂いております。」
あら……あの変色カニダンゴムシは高ランクの魔物だったんだ?全部出したのは、失敗だったか。
「ステータスオープン」
ぱシん。
「申し訳ありませんでした、伝達は受けております。当方の確認不足で御迷惑をお掛けしてしまいました。」
プレートを確認した上司サンは深々と頭を下げた。
「いやいやいや、何してるんですか!?そんな事しないで良いから!」
閑散期だから、周囲の目は気にならないけど。目立つのからやめて!
とりあえずということで、奥の部屋に通された。受付嬢も涙目になっている。
「すいません、全然雰囲気が違ったので別人と勘違いしてましたぁ!」
受付嬢も部屋に入るなり頭を下げた。オイラが何をした??
「えっと、全く話が解らないんだが説明してもらっても?」
「あ、ハイ!ナナシノ様の接客に対して中央から伝達が入ってはいたんですが、名前が被るケースが多くて別人だと思ってました……」
またもや涙目になっている。ここは穏便に話を済ませたいんだが。
「別に気に障る事は全く無いんだから、気にしないで欲しいんですけど……?」
「いえ、ダメです。中央からの指示ですので、意向には逆らえません。」
上司サンが戻ってきた。手には冊子を持っていて、中から指示書を抜き出した。それを受け取り読んでみると、オイラの処遇に対して細かく書き込んである。
要するに“丁重に扱え”というモノだ。
「あの緑のオッサンめ……なにしやがる、目立つじゃねぇか。」
「宿と食事の御用意をさせて頂いております。今晩はこちらでお泊りくださいませ。」
「そんな特別扱いはイヤですよ……普通にしたいのに。宿はキャンセルして放置してもらえないかな?」
「いいえ、それはできません。蔑ろにしたとなっては私共の沽券に関わります。どうかお願いします!」
なんだか無視すると可哀想な事になりそうなので、とりあえず今晩の宿が決まったね。
「あと、意見書を書きたいんだけど、いい?」
「ひっ!?」
上司サン、ものすごく落ち込んだ表情になった。受付嬢もついにブワッと泣き出した……
「違う!ココの扱いに対しての意見じゃねぇっす!中央の緑のオッサンに意見するんだってば!」
慌てる二人が落ち着くまで待って、それから中央ギルドマスターである緑のオッサンへの伝言には「ほっといてくれ。」と書いた。
……というわけで、中断していた冒険者ランクの裁定の続きが行われた。
「なんでCランク?三階級特進って上げすぎじゃないの!?」
「本来ならばAランクですよ?昇級ルールが無ければAランクの実績ですよっ!?」
何故か“Aランク”を強調されたので、これ以上言わないことにした。危険臭が漂っている気がする。
「気にすんな、オイラも気にしないから。大丈夫。」
「えっ!?冒険者にとってランクは非常に重要じゃないですか!?それを“気にするな”って!?」
「目立ちたくないんですよ、目立つと色々問題が発生するからソコソコのランクで良いんですよ。」
「えー、そこは気にしないとダメでしょう?」
「オイラはダメ冒険者で良いんですよ?それこそ“お荷物破砕”で生きて行きたいくらいですわ。」
「そこまで落ちぶれなくても良いんじゃないでしょうか……」
なんだかんだで、夕刻を回っていた。日が落ちて暗くなりかけている。
「やっぱりギルド斡旋の宿じゃないとダメ?」
「ダメです。ちゃんと泊まって下さい。そうじゃないと……むぅ。」
「わ、解ったから!泊まるから泣かないで!」
チラホラと帰還してきた冒険者達の視線が痛いので、仕方なく承諾した。
ギルド斡旋の宿屋はいかにも上級者御用達の風体で、オイラは3度ほどギルドの案内地図と宿屋の位置を確認して中に入った。
「えっと……何故にベッド二つの大部屋なのでしょうか?」
「空き部屋の都合で、そうなっております。」
ギルド側の手違いだと思ったが、1人用の大部屋が無かったので仕方なく2人部屋になったらしい。
その確認のために再度ギルドと宿屋の間を往復してしまった……今日は暇なんだ、時間は余ってるんだよっ!決して小心者なんかじゃない!
別の宿に泊まろうかと考えたが、キャンセルしたとなれば面倒事になりそうなので我慢して泊まるしかなさそうだ。
既に森の生活にドップリ浸かって居るオイラには、こんな高級宿でも落ち着かないや。目がチカチカするし。
「お久しぶりですね?」
カウンターで手続きを済ましていると、急に後ろから声を掛けられた。
オイラの事か?




