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勇者36番  作者: ハムリンゴ
第三幕:捨てられても、頑張ろうと思う件について。
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47) 共同作業なのね。

「お久しぶりですね?」

「えっと……」


 見た目は10代後半で、修道女のような格好、懐かしい電波チックな声、やたらと疑問符で締める言葉遣い……


 小柄ちゃんだった。

 捕縛されるかも知れないという不安と、久しぶりに会えたという安心感がグルグルとオイラの思考を乱す。


「悠古の森への探索で、キミだけが戻ってこなくて……心配してたのよ?」

「うん、龍達の目的はオイラだけだったんだ。」


「念の為に隷属の腕輪に仕込んでおいたキミの追跡施術が消えた時には、死んだと思ったのよ?」

「うん、悠古の森で外してもらったんだよ。」


「森でキミを確認するまでは、気が気で無かったのよ?」

「ほんと、ごめん。心配かけちゃったね。」


「ナーツに戻ってきた時に、どうして連絡をくれなかったの?」

「また、隷属の腕輪を付けられるかと思ったんだよ。」


「そっ!そんなことする訳ないじゃないのよさ!?」

「でも……生きていることが発覚した場合、連れ戻される可能性を考えたんだよ。」


「連れ戻すワケないじゃない。キミの伝言を見て、飛んできたんだよ?」

「え?飛んできた?何の為に??」


「何の為にですって!?それは、その……ほら、アレよ?」

「オイラにくれた魔道具の様子とか修理?」


「そっ!そうよっ?私がキミに渡した道具の調子がどうだったかも聞きたいわね?」

「あぁ、すごく役に立ったよ。いくら感謝しても足りないくらいに。」


 なんとなく、話を逸らしてみたが小柄ちゃんが心配してくれたのが目に見えて判る。

 本当に魔道具の調子を確認しにきただけの可能性もあるかもしれないけどね。


「ありがとね。」

「え?うん、無事なら問題ないのよ?」


「えっと、何か食べながら話す?」

「そうね、食事しながら話を聞かせて頂戴な?」


 宿屋の食堂……小奇麗なレストランっぽい雰囲気の中で食事を摂る。流石に高級というだけあって、飯の味が淡白だと思った。手持ちのお金で問題は無さそうだ。

 その食事の間、オイラは悠古の森へ拉致されて追い出されたところから、変な格闘家に付きまとわれたり逃げたり、ついでにココまで来たことなど話をした。

 一方的に話しているが、小柄ちゃんはウンウンとただ頷いて聞き手に徹していた。


 会話中心だったので、あまり食事の内容は覚えていなかった……少し興奮気味だったようだ。勿体無い気もするが……

 これまでの経緯を喋って振り返ると、何かに追われて焦っていた感じがした。

 ただ、小柄ちゃんに愚痴混じりに説明することで安堵感が得られたと思う。


 小柄ちゃんの方はオイラの“追跡”が切れたので、森の調査を行って生きている事を確認して引き返したそうだ。

 ただ、連れて帰っても同じ仕打ちが待っている事は想像できるので、事態が収まるまで放置しようと考えたのだと。


「そういうことなのよ?」

「あ、うん……大体理解できた。ホントにありがとね。」


「え、あ……気にする必要は無いのよさ?ホラ、魔道具の様子も見たかったし?」

「そうだね。んで、どうする?オイラの部屋で道具の確認する?」


 オイラ達は宿屋の2階へ向かった。なんだか下の階と違う上品な趣向が凝らされていた。

 廊下からの扉の中には12畳くらいのリビングがあり、その隣に同じく12畳くらいの鍵付き寝室が2つあった。


「な……勇者様、同行者でも居られるのですか?」

「居ないよ?この部屋は冒険者ギルドの手配ミスだってさ。」


 豪華な装飾と無駄に広いベッドやソファー、トイレや浄化の魔法陣用の小部屋まである。


「あ、そうだった。魔道具を見るんだったね。」


 装備を外し、背負袋から魔道具をゴトゴトと取り出して床に並べていく。


「ゆ、勇者様?それはなんですの?」

「あ、これ?精霊と契約したら刻まれちゃった。」


 小柄ちゃんはオイラの右腕に刻まれた2人の精霊契約の証を見るなり飛びついた。


「ほえぇぇ……魔導師なのに精霊と契約結んでどうするのよさ?」

「何故に?異なる魔法が使えて良いかな?と思ったんだけど、ダメなの?」


「精霊魔法に頼らなくても、普通に魔法が使えるじゃない?それに精霊魔法使いは卑屈になるって言われているのよ?」

「ナニソレ?性格が悪くなるの??」


 久しぶりの小柄ちゃん講座が始まった。

 精霊魔法は魔法陣を使用する魔法と同じで、精霊を介して魔法を具現化する。そして魔法の発現レベルは精霊のレベルと機嫌によって変化する。

 殆ど精霊の御機嫌による要素が強い為に、精霊を褒め上げる方法が一般的で、精霊使いは慇懃な態度を取る性格になるらしい。

 或いは、精神的に“折った”精霊を使役する者も居るが、それでは一定以上の威力は見込めない。ただし、逆に効果がブレないのも特徴だとか。


 講座のあと、小柄ちゃんは魔道具を手に取り状態の確認をしている。

 確認の終わった装備品を受け取り、装着していると小柄ちゃんが訪ねてきた。


「あ、れ?外出するのですか?」

「うん、魔法の訓練は続けているからね。修練場に行くんだよ。」


 久しぶりに並んで小柄ちゃんと歩き、修練場に到着する。魔導都市の修練場だけに結界の魔法陣が壁一面に半端なく刻まれて輝いている。


「はーい、全員集合!今日の訓練内容を伝えます。」


 すごく怪しいとオイラ自身も思う。傍から見ると地面に本を置き、しゃがみこんだ仮面ローブの男が一人でキョロキョロブツブツ呟いている。


「とりあえず、さっきの手順で行くよ……はいっ!」


 まず、☆導きの書☆に土壁を発生させて周囲を囲んでもらう。

 土壁の中ではシーちゃんに暗闇で光を遮断し、キューちゃんによって菌などの成長促進を加速させる。

 最後にオイラが土壁を加重の魔法で全て押しつぶす単純なコンボだった。


ぎちっ!しゅぼっ!


 一応成功だ。この作業を何度か繰り返して、出力をドンドン上げていく。

 この魔法は、基本的に死体処理に使用するつもりだ。魔物の死体が他の魔物を呼び寄せる可能性のある場合、腐敗を促進させて埋めるだけ。臭いとグロさは囲って隠す。


「キミって相変わらず、突拍子もない組み合わせを考えつくよね?」

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